金融庁は、「2021事務年度金融行政方針 ~コロナを乗り越え、活力ある経済社会を実現する金融システムの構築へ~」を、2021年8月31日に公表しました。
(前年度の副題は「コロナと戦い、コロナ後の新しい社会を築く」でしたが、現在、「コロナ後」、「コロナを乗り越え」どころか、コロナにのみ込まれそうな状況です。)
コラムや資料も含めて180ページほどの報告書です。
以下の3つが重点課題だそうです。
「Ⅰ.コロナを乗り越え、力強い経済回復を後押しする
第一に、新型コロナウイルス感染症による深刻な影響を受けた経済社会を、金融機関が引き続き金融仲介機能を発揮して力強く支えぬくことができるよう、行政としても万全を期す。さらに、ポストコロナの活力ある経済を目指して、金融機関等による事業者の経営改善・事業再生・事業転換支援等を促していく。
Ⅱ.活力ある経済社会を実現する金融システムを構築する
第二に、国内外の経済社会・産業をめぐる変化を成長の好機と捉え、国内外の資金の好循環を実現するとともに、金融サービスの活発な創出を可能とする金融システムを構築することにより、活力ある経済・社会構造への転換を促していく。
Ⅲ.金融行政をさらに進化させる
第三に、「金融育成庁」として国内外の経済社会に貢献していくため、データ分析の高度化等を通じたモニタリング能力の向上や、専門人材の育成など、金融行政を担う組織としての力を高めていく。」
概要より、会計に関係しそうな項目をピックアップすると...
「金融機関に対して、事業者の資金繰り支援に万全を期すよう求めていくとともに、対応状況を確認する。企業決算・監査への対応についても、関係者間で適切な連携を図る。」
(企業決算・監査をいじくれば資金繰り支援になるというのは、考え方が相当古いのでは)
「サステナブルファイナンスを推進し、国際的な議論において主導的な役割を担う。国内外の成長資金が日本企業の脱炭素化への取組みに活用されるよう、企業開示の充実、グリーンボンド等の認証枠組みや情報プラットフォームの構築による「グリーン国際金融センター」の実現等を図る。」
「インベストメント・チェーン全体の機能向上に向け、投資家保護にも留意しつつ、成長資金の供給を含む、市場機能向上のための制度・市場慣行の点検・見直しを行う。あわせて、コーポレートガバナンス改革を推進するとともに、会計監査を巡る諸課題を総合的に検討する。」
さらに、本文から引用すると...
「2021 年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂を踏まえ、2022 年4月に発足する東京証券取引所プライム市場の上場企業に対して、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)又はそれと同等の国際的枠組みに基づく開示の質と量の充実を促す。くわえて、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおいて、国際的にも投資先として魅力ある市場となるよう、上場企業等によるサステナビリティに関する取組みの適切な開示のあり方を検討する。
国際会計基準(IFRS)財団における気候変動を含むサステナビリティについての比較可能で整合性の取れた開示の枠組みの策定の動きに、官民挙げて積極的に参画する。」
「市場における企業情報に対する信頼性向上の観点からは、証券取引等監視委員会やガバナンス改革等を通じた企業自身の取組みにくわえ、監査法人が、資本市場のゲートキーパーとして、外部監査の質の向上を一層進めることが求められる。そのため、2021 年中に監査法人等の品質管理基準を改訂するとともに、公認会計士・監査審査会において、監査法人等のガバナンス態勢、グループ監査及び監査上の主要な検討事項(KAM)等に係る検証を実施する。くわえて、今秋以降、「会計監査の在り方に関する懇談会」において、経済社会情勢の変化を踏まえ、上場企業の会計監査を担う監査事務所のあり方や公認会計士の一層の能力向上・力量発揮のための環境整備など、会計監査を巡る諸課題について総合的に検討する。」
これから、開示に関しては、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ、会計監査・監査事務所に関しては、会計監査の在り方に関する懇談会の動きを見ていく必要があるのでしょう。
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