工業会計のプロが図表入りで徹底解説
東芝の粉飾手口の中でも、工事進行基準、PC部品有償支給、経費計上先送り、在庫評価減先送りなどは、比較的理解しやすいのですが、半導体製造の原価計算のところで行われた操作については、よくわからないところがあります。この記事では、そこを取り上げています。
要するに、原価差額についておかしな配賦を行っていたということのようです。
問題の半導体製造工程は、前工程→中間品→後工程→製品、という流れですが、前工程は期中に標準原価の改訂を行って、原価差額配賦前の単価を上げていた(これにより中間品の単価も上がる)にもかかわらず、さらに、前工程・後工程の全体で発生した原価差額(借方)を、前工程の在庫(中間品在庫含む)にも配賦し、前工程の在庫金額を水増ししていたとのことです。
「今回の不正では、前工程の標準原価の改訂だけを期の途中に実施したことから起きている。標準原価改訂だけであれば会計上は問題ではないが、東芝は標準原価改訂をしていない後工程で発生した原価差額を前工程にまで配賦した。
この配賦によって、前工程の製品には後工程の原価差額まで追加配分されたことになり、前工程の製造原価は実際の原価よりも高くなった。前工程の製品はほとんどが中間品在庫になるので、結果的に期末在庫金額が過大計上されたことになる。経営者にすれば、前工程の標準原価改訂を行うだけで自動的に利益が増えるのだから、無理な益出し指示にこの処理を利用したいと考えてもおかしくない。」
詳しくは、この記事全体や、東芝の第三者委員会報告書を参照してください。(以上のまとめで正しいのか、100%の自信はありません。この説明の方法で、1期だけでなく、継続して水増しできるのかどうか・・・)
「第三者委員会の報告書では「誰が」「いつ」こうしたカラクリを「発案」し、誰が「このカラクリを積極的に使って益出しをしよう」と言い出したのかについて、書かれていない。東芝の不正会計がどういった背景で生まれ、拡大したのかを解明するためにもさらなる調査を期待したい。」
監査でも、多額の原価差額が発生した場合には、その原因を把握したり、原価差額の配賦が適切に行われているかをチェックしたりしているはずですが、東芝の場合はどうだったのでしょうか。
![]() | 週刊東洋経済 2015年 9/26号[雑誌] by G-Tools |
目次より
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