金融庁傘下の公認会計士・監査審査会が、今ごろになって「公認会計士・監査審査会の実施する検査に関する基本指針」なるものを公表しました(2007年6月29日付)。
つまり、これまで3年間、何らの方針もなく、行き当たりばったりの検査をしていたということになります。
それはともかく、基本方針に目を通した限りではごく当たり前のことが書いてあるようです。例えば、「立入検査は、検査対象先の就業時間内に実施することを原則とし、就業時間外に実施しようとする場合は、検査対象先の承諾を得るものとするが、合理的な理由なく恒常的に就業時間外に検査を行うことのないように配慮する。」、「検査官は、常に穏健、冷静な態度を保ち、相手方の説明及び答弁を慎重に聴取し、正確な実態を把握するように努めなければならない。」、「検査官は、提出を求める資料について、検査業務の優先順位や検査対象先への負担等を考慮するものとする。」といったことが書かれています。しかし、実際の検査では、こうした当たり前の原則に明らかに反するような行為が横行していたとも聞きます。基本方針の策定により少しは改善されるのでしょうか。
また、基本方針だけでなく、基本方針案へのパブリック・コメント(検査を受ける側のコメントがほとんど)とそれへの金融庁の考え方をまとめた資料もおもしろいとおもいました。検査を受ける側の不満があらわれています。
「公認会計士・監査審査会の実施する検査に関する基本指針(案)」に対してお寄せいただいたご意見の概要及びそれに対する考え方(PDFファイル)
「検査マニュアル」の公表を求めるコメントもありますが、それは今の審査会の体制では不可能でしょう。マニュアルを作るためには、監査基準・実務を網羅的に理解したうえで、そのうち重要な点を、体系的かつコンパクトにまとめあげる能力がなければなりませんが、審査会は、末端の検査官の一部に会計士がいるだけで、審査会事務局の上層部には、会計監査を理解している専門家(別に会計士でなくてもよい)が誰もいないからです。
今回の基本方針にも「検査官の専門的能力」という項目は見当たらないので、こうした状況は改善されそうにありません。せめて、国税専門官なみの試験と研修を受けなければ、審査会には配属されないというルールにすべきでしょう。無資格者ばかり(あるいは無資格者が上司で資格者が部下というチーム)で監査をやれば監査の品質が疑われるのと同じことです。
もっとも、そうした専門家による本質をついた検査よりも、「重箱の隅」的で形式的な検査の方が、受ける側は楽なのかもしれませんが・・・。
「公認会計士・監査審査会の実施する検査に関する基本方針(案)」に対する意見について
最近の「金融庁」カテゴリーもっと見る
株式会社ヤマウラにおける有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について(金融庁)
金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第5回)議事次第(2024年12月2日)(金融庁)
証券監督者国際機構による「フィンフルエンサー」、「オンライン模倣取引慣行:コピー取引、ミラー取引、ソーシャル取引」、「デジタルエンゲージメント・プラクティス」に関する市中協議文書の公表(金融庁)
金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第4回) 議事録(2024年10月10日)(金融庁)
監査法人の懲戒処分について(爽監査法人)(金融庁)
アスカ監査法人に対する検査結果に基づく勧告について(金融庁)
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事