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「監査基準の改訂について(公開草案)」の公表について(金融庁)

「監査基準の改訂について(公開草案)」の公表について

金融庁は、企業会計審議会監査部会による「監査基準の改訂について(公開草案)」を、2018年5月8日に公表しました。

「我が国の監査プロセスの透明性を向上させる観点から、監査報告書において「監査上の主要な検討事項」の記載を求める案」です。(先日の監査部会会議資料では「主要な監査上の検討事項」となっていましたが、さすがに口調が悪すぎたのでしょう。また、金融庁が以前使っていた「監査報告書の透明化」(監査報告書を透明にしたら誰も読めなくなってしまうのでは?)という言葉は、やめたようです。)

主な改正点は以下のとおり(基準前文に当たる「監査基準の改訂について(公開草案) 」より抜粋・要約)。

1. 「監査上の主要な検討事項」について

(1)位置づけ

○「監査上の主要な検討事項」の記載は、監査意見とは明確に区別しなければならない。

(2)「監査上の主要な検討事項」の決定

○監査人は、監査の過程で監査役等と協議した事項の中から、

・ 特別な検討を必要とするリスクが識別された事項、又は重要な虚偽表示のリスクが高いと評価された事項

・ 見積りの不確実性が高いと識別された事項を含め、経営者の重要な判断を伴う事項に対する監査人の判断の程度

・ 当年度において発生した重要な事象又は取引が監査に与える影響等

について考慮した上で特に注意を払った事項を決定し、当該決定を行った事項の中からさらに、当年度の財務諸表の監査において、職業的専門家として特に重要であると判断した事項を絞り込み、「監査上の主要な検討事項」として決定する。

(基準本文では、考慮すべき事項の例についてはふれていません。)

(今回の公開草案では「コミュニケーション」という言葉と「協議」という言葉の両方が使われていますが、国際監査基準(の翻訳)では前者のみしか使われていないようです。基準本文(案)では「協議」しか使われていません。非常に紛らわしい。J-SOXでは、たしか、「コミュニケーション」は「伝達」と訳されています。)

(3) 「監査上の主要な検討事項」の記載

○監査報告書に「監査上の主要な検討事項」の区分を設け、関連する財務諸表における開示がある場合には当該開示への参照を付した上で、

・ 「監査上の主要な検討事項」の内容

・ 監査人が、当年度の財務諸表の監査における特に重要な事項であると考え、「監査上の主要な検討事項」であると決定した理由

・ 監査における監査人の対応

を記載する

(4)監査意見が無限定適正意見以外の場合の取扱い

○不適正意見の場合には、当該意見に至った理由以外の事項を「監査上の主要な検討事項」として記載する場合には、根拠区分に記載すべき内容と明確に区別しなければならない。

意見不表明の場合には、「監査上の主要な検討事項」は記載しない

(5)「監査上の主要な検討事項」と企業による開示との関係

○監査人が「監査上の主要な検討事項」を記載するに当たり、企業に関する未公表の情報を含める必要があると判断した場合には、経営者に追加の情報開示を促すとともに、必要に応じて監査役等と協議を行うことが適切である。

○監査人が追加的な情報開示を促した場合において経営者が情報を開示しないときに、監査人が正当な注意を払って職業的専門家としての判断において当該情報を「監査上の主要な検討事項」に含めることは、監査基準に照らして守秘義務が解除される正当な理由に該当する。

○監査人は、「監査上の主要な検討事項」の記載により企業又は社会にもたらされる不利益が、当該事項を記載することによりもたらされる公共の利益を上回ると合理的に見込まれない限り、「監査上の主要な検討事項」として記載することが適切である。

2.報告基準に関わるその他の改訂事項

(1)監査報告書の記載区分等

監査人の意見を監査報告書の冒頭に記載することとし、記載順序を変更するとともに、新たに意見の根拠区分を設ける。

○経営者の責任を経営者及び監査役等の責任に変更し、監査役等の財務報告に関する責任を記載する。

(監査役等や監事などがいない法人の監査報告書はどうなるのでしょう。)

(2)継続企業の前提に関する事項

○継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合、独立した区分を設けて継続企業の前提に関する事項を記載する。

○経営者は継続企業の前提に関する評価及び開示を行う責任を有し、監査人はその検討を行う責任を有することを、経営者の責任、監査人の責任に関する記載内容にそれぞれ追加する。

適用時期は、以下のようになっています。

・「監査上の主要な検討事項」については、2021年(平成 33 年)3月決算に係る財務諸表の監査から(早期適用可)

・報告基準に関わるその他の改訂事項については、2020年(平成 32 年)3月決算に係る財務諸表の監査から

(3月20日決算という会社もあるようですから、会計基準と同じように3月末決算から適用にした方がよいのでは。)

また、「関係法令において、「監査上の主要な検討事項」の適用範囲その他の基準の改訂に伴う所要の整備を行うことが適当」とされています。

適用範囲については、こちらの資料もどうぞ。

「主要な監査上の検討事項」の適用に関する取扱いについて(金融庁)(PDFファイル)(4月24日の会議資料より)

以上が、前文部分の説明ですが、「監査上の主要な検討事項」について、基準本文(案)では、以下のようになっています(改訂部分の一部のみ)。

「七 監査上の主要な検討事項

1 監査人は、監査の過程で監査役等と協議した事項の中から特に注意を払った事項を決定した上で、その中からさらに、当年度の財務諸表の監査において、職業的専門家として特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項として決定しなければならない。

2 監査人は、監査上の主要な検討事項として決定した事項について、関連する財務諸表における開示がある場合には当該開示への参照を付した上で、監査上の主要な検討事項の内容、監査人が監査上の主要な検討事項であると決定した理由及び監査における監査人の対応を監査報告書に記載しなければならない。ただし、意見を表明しない場合には記載しないものとする。 」

当サイトの関連記事(公開草案ドラフトについて)

「監査報告書の透明化」について(金融庁)
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