上場企業の92.0%がインボイス登録完了、個人企業との登録率の差が鮮明
11月末現在で、上場企業の92%がインボイス発行事業者の登録を済ませたという記事。
「インボイス制度の登録は2023年3月末で期限を迎えるが、11月末の上場企業の登録率は92.0%に達したことがわかった。上場企業でも小規模や赤字企業は登録率が低く、一方、フリーランスなどの個人企業(個人事業者)の登録率は2割に満たず、資金力の差が登録にも影響しているようだ。」
ただし、市場によって、すこし違いがあるそうです。
「市場別の登録率は、東証プライムが95.0%、スタンダードが91.8%、グロースが82.7%で、時価総額が大きい企業ほど登録が進捗している。業種別では、最高は製造業の96.7%、最低は不動産業の81.0%だった。」
上場企業は、消費税の課税事業者でしょうから、当然、登録するでしょう。個人企業は、登録して課税事業者になるかどうかの判断が必要な免税事業者が多いでしょうから、登録率が低いのは不思議ではありません。資金力の差が原因とは、一概に言えないでしょう。
上場企業は、登録を済ませている企業が多いとはいえ、売上側としてのインボイス発行や、仕入れ側としてのインボイス制度にかかわるさまざまな処理について、システム対応などが完了しているかどうかは、別問題でしょう。現状、どういう進捗状況なのでしょうか。
これも、インボイス制度に関する調査の記事。
「インボイス制度」 免税事業者と「取引しない」が1割強に増加 ~ 第2回「インボイス制度に関するアンケート」調査 ~(東京商工リサーチ)
「2023年3月末が登録期限のインボイス制度(適格請求書等保存方式)で、個人企業の登録率が2割にとどまっている。そうしたなか、インボイス制度に登録しない免税事業者との取引について、「取引しない」と回答した企業が1割強(10.2%)に達することがわかった。8月の前回調査(9.8%)から0.4ポイント上昇した。
東京商工リサーチ(TSR)が12月上旬に実施したアンケート調査で、インボイス制度の事業者登録との取引について聞いた。免税事業者との取引は、企業側に免税事業者分の税負担や事務手続きが増える。一方、個人企業など免税事業者はインボイス制度を登録しない場合、取引できなくなる恐れもあり、インボイス登録を巡っては双方とも難しい判断を迫られている。」
「インボイス制度の登録をしない免税事業者との取引について、「これまで通り」は40.3%(4,410社中、1,779社)で、前回調査(41.2%)から0.9ポイント低下した。一方、「免税事業者とは取引しない」との回答は10.2%(450社、前回調査9.8%)、「取引価格を引き下げる」は2.7%(119社、同2.1%)で、取引停止や取引価格引き下げを免税事業者に求める意向の企業がジワリと増えてきた。
「検討中」は46.7%(2,062社、同46.7%)で、前回調査と変わらず、ほぼ半数の企業が取引方針を決めきれていない。」
こういう調査では、免税業者がインボイス発行事業者の登録をしさえすれば、解決というのが前提となっているように感じられますが、仕入れ先からすれば、インボイス発行事業者になるということは、消費税を納めるようになるということですから、今までの取引価格のままだと、採算が悪くなります。その分、値上げしてくれということになるでしょう。それを認めれば、コスト増になるでしょうし、認めなければ、仕入れ先がはなれてしまうかもしれません。インボイス導入の目的のひとつは益税つぶしの増税ですが、それを誰が負担するのかという問題になります。