東芝の監査人交代に関する記事。PwCあらた監査法人の後任として、「太陽有限責任監査法人」の名前が挙がっているそうです。
「東芝が、会計監査を担当するPwCあらた監査法人を変更する方向で調整に入った。原発子会社の会計処理をめぐって、あらたとの対立が解消できず、決算のお墨付きとなる「適正意見」が得られる見通しがたたないためだ。監査法人を変えれば、2017年3月期決算の発表は大幅に遅れる見通し。後任に、準大手の「太陽有限責任監査法人」の名前が挙がっている。」
「(東芝は)監査法人の変更で膠着(こうちゃく)状態を打開したいと考えている。」
本当に2017年3月期決算から、太陽が引き受けるのでしょうか。会社法計算書類承認や有報提出を1ヶ月程度遅らせるとしても、厳しいスケジュールです。教科書的には、引き受けるべきではないケースでしょう。
朝日記事の図では、東芝があらたを解任する場合と、あらたから辞任する場合に分けて、フローを示していますが、解任はたぶんないでしょう。解任ということは、あらたのやってきたことを全否定するのとほぼ同じですから、後任監査人はあらたがやった手続き結果を利用できないという理屈になります。本当に交代するのであれば、たぶん、双方合意して監査契約を解約するということになるのでしょう。
後任監査人は、契約前にあらたとの間で、重要事項について意見交換をしないといけません(引き継ぎは契約受嘱決定前にも必要)。特に会社ともめている事項について、会社だけでなく、あらたからも詳しい説明を受けて、無限定適正意見を出せそうなのか判断する必要があります。その段階で、引き受けないという結論になる可能性もあります。また、あらたは無限定の意見(結論)を一度も出していない(1Qと2Qの報告書は撤回した)わけですから、監査引き継ぎは、あらただけでなく、その前任者である新日本との間でも実施しないといけません。徹底的に引き継ぎ作業をするとなれば、それだけでもかなりの時間が必要でしょう。
無理に2017年3月期本決算から交代するのではなく、不表明を覚悟して、本決算まであらたにやってもらい、新年度から、任期満了で監査人交代が自然でしょう。そのときに、会計基準変更が必要なら、変更すればよいと思います。期首からの会計基準変更であれば、理屈は立ちます。
東芝がコメント:東芝、監査法人を変更か 決算発表めぐり対立(ITmedia)
「東芝はITmedia ビジネスオンラインの取材に対し、「さまざまな選択肢を検討していることは事実だが、監査法人を変更するという方針を固めたという事実はない」(広報部)とコメント。後任の監査法人選びについても、「着手していない」と述べた。
一方、PwCあらた有限責任監査法人は、「顧客との契約に関する事項のため、コメントできる立場にない」(広報担当者)と回答した。」
東芝 決算発表遅れ必至 監査法人を変更方針(毎日)(記事冒頭のみ)
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<東芝>決算発表遅れ必至 監査法人を変更方針(Yahoo)
「岩井コスモ証券の有沢正一投資調査部長は「どの監査法人が見ても納得できる決算を出すのが本来のあり方だ」とくぎを刺す。また、BNPパリバ証券の中空麻奈投資調査本部長は「新監査法人から適正意見を得られたとしても、東芝は(PwCあらたに)疑問視された点をどのように説明し、納得させたのか、公表する必要がある」と指摘する。東芝経営陣には異例の監査法人変更に至った説明責任が厳しく求められそうだ。」
後任監査人の方も、どういう根拠で監査を引き受けたのか、はっきりさせておく必要が当然あるでしょう。
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