日本公認会計士協会は、業種別委員会実務指針第33号「信用金庫等における監査報告書の文例」を改正する公開草案を、2020年2月28日に公表しました。
金融庁から信用金庫法施行規則等の改正案が公表されたことを受けて見直しを行ったものです。
「今般の信用金庫法施行規則等の改正により、剰余金処分案(損失処理案)に関しては、「法令又は定款に適合しているかどうかについての意見」を表明することが会計監査人に求められることとなりました。
これに対応して、信用金庫等における監査報告書の文例を改正し、剰余金処分案に対する意見について、監査基準委員会報告書700「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」における「法令等に基づくその他の報告」として整理し、「<剰余金処分案に対する意見>」の区分を設けて報告する形に変更いたしました。」
文例を見ると、利益処分案を除く計算書類と、利益処分案に区分分けして、報告することになっています。
追加された剰余金処分案に対する意見の部分は...
「<剰余金処分案(注7)に対する意見>
剰余金処分案(注7)に対する監査意見
当監査法人(注5)は、信用金庫法第38条の2第3項(注6)の規定に基づき、○○信用金庫の×年×月×日から×年×月×日までの第×期事業年度の剰余金処分案(注7)について監査を行った。
当監査法人(注5)は、上記の剰余金処分案(注7)が法令及び定款に適合しているものと認める。
剰余金処分案(注7)に対する経営者及び監事の責任
経営者の責任は、法令及び定款に適合した剰余金処分案(注7)を作成することにある。
監事の責任は、剰余金処分案(注7)作成における理事の職務の執行を監視することにある。
剰余金処分案(注7)に対する監査における監査人の責任
監査人の責任は、剰余金処分案(注7)が法令及び定款に適合して作成されているかについて意見を表明することにある。」
剰余金処分案は、実績財務数値ではないので、一般的な意味での監査の対象になり得るのかという問題がありそうですが、他によい案も思い浮かびません。そもそも、法律専門家でもない会計士が「法令や定款に適合している」かどうかを判断してよいものなのか...。以前の商法監査では、株式会社の利益処分案も会計士監査の監査対象だったので、なじみはあります。(昔から、剰余金処分案(利益処分案)の適法性を確かめるのは、会計士の守備範囲だった?)
「監査基準」を所管している金融庁が、剰余金処分案が会計士による監査の対象となりうると考えているわけですから、きっと「監査基準」にかなった何らかの理屈があるのでしょう。
関連していそうな監査基準委員会報告書700の規定。
「《その他の報告責任》(第 39 項から第 40 項参照)
A53.国によっては、監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に基づく財務諸表に対する監査人の報告責任に加え、財務諸表に関連するその他の事項について報告責任を有する場合がある。
例えば、監査人は、財務諸表監査の実施中に特定の事項(適切な会計記録を維持していない場合など)に気付いた場合、当該事項を報告することが求められている場合がある。また、監査人は、特定の事項(会計帳簿と会計記録、財務報告に係る内部統制、又はその他の記載内容に含まれる項目の適切性など)について追加的に特定の手続を実施し報告することが求められていたり、意見を表明することが求められていたりすることがある。
特定の国における特定の追加的な報告責任に関する監査人の責任については、通常、それぞれの国の監査の基準が指針を提供している。我が国においては、財務報告に係る内部統制の監査がこれに該当し、財務報告に係る内部統制の監査基準が指針を提供している。
A54.関連する法令等により、これらのその他の報告責任について、財務諸表に対する監査報告書の中で報告することを監査人に要求又は容認していることもあれば、別個の報告書で報告することを要求又は容認していることもある。 」
「銀行法施行規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等の公表について(金融庁)
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