日本公認会計士協会の社外役員候補紹介制度は、会計士業界の人余り対策だという記事。
紹介制度とは直接は関係のない話に飛んでいます。
「・・・「食えない会計士」は間違いなく水面下で増殖している。その象徴的事例は、問題企業ばかりを専門に監査する新興監査法人の存在である。大手監査法人に逃げられた企業の“駆け込み寺”というわけだ。有名なのは07年2月に設立された監査法人ウィングパートナーズ。・・・ずさんな監査は、すぐに発覚する。事務所のトップら所属会計士2人が金融庁から最長1年6カ月の業務停止処分を受けることとなったのである。その後、事務所は雲散霧消した。
問題が根深いのは、むしろそれからだ。新たな“駆け込み寺”が、すぐに続々と登場したのである。代表格は監査法人元和(09年7月設立)や監査法人ワールドリンクス(同年4月設立)、やよい監査法人(10年4月設立)など。ウィングパートナーズを頼れなくなった問題企業は相次ぎ、そうした新興監査法人と契約していった。やよいとワールドリンクスも11年6月にずさんな監査を指摘され、登録取消処分となる。
すると、今度は東京中央監査法人(11年4月設立)が現れ、クライアントはそちらに流れていった。その東京中央にも昨年5月、一部業務停止1年の行政処分が下っている。これら新興監査法人には、同じ会計士が関与している例が少なくない。まるでイタチごっこであり、業界の一部ではモラル低下が進んでいる。」
記事では、会計士が経営陣に入り込むことで、監査の独立性が損なわれることを心配しています。
「本来、会計士は独立した立場で企業の決算に目を光らせる役割のはず。それが社外役員の立場とはいえ企業経営に参画するのは、根源的な部分で矛盾がありはしないか。前述した新興監査法人では、監査先企業との距離があまりに近い例があったのも事実。例えば、“駆け込み寺”の元祖的存在だった旧国際第一監査法人では、ボス会計士が親族企業の名義で監査先の増資株を取得していた。それでは厳格な監査など期待できるはずもない。そこまで悪質なケースでなくとも、大量の会計士が企業の経営陣に入っていけば、利益相反リスクはおのずから高まらざるを得ない。」
役員が会計士というだけでは、利害関係があるとは言えず、監査の独立性が損なわれることはちょっと考えにくいと思います。もちろん、監査人である監査法人に役員候補の会計士の紹介を頼んだりする場合は、形式的には倫理規則に違反しないようにしたとしても、かなり問題でしょう。(協会で、注意喚起の文書を出すべきなのでは)
協会の紹介制度については、出会い系みたいでちょっと安易な感じがしますが、監査人とは別のルートなので、独立性の面ではあまり問題なさそうです(監査の独立性と社外役員としての独立性の両方考えなければなりませんが)。
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