金融庁は、株式会社ビックカメラ役員が所有する同社株券の売出しに係る目論見書の虚偽記載の検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告(課徴金額1億2073万円)を受けて実施してきた審判について、以下の決定を行いました(6月25日付)。
「被審人に対する本件審判事件について、金融商品取引法第178条第1項第2号に該当する事実を認めることはできない。」
要するに無罪ということです。
主な争点は、目論見書に虚偽の記載があると認められるかという点と、この役員が目論見書に虚偽の記載があることを知っていたと認められるかという点ですが、前者の争点については結論を出さずに、後者の論点について、「目論見書に虚偽の記載があることを認識していたと認めることはできない」としています。
会計士としては、前者の論点が興味があるところですが、詳細な公表資料を見ても、判断がつきません。不動産流動化に使われた特別目的会社に、役員のペーパー会社(豊島企画)が多額の出資を行っていたことが問題になっているわけですが、ビックカメラが資金提供したりして支配しているというより、役員が個人資産を担保提供するなどしており、あくまでビックカメラではなく役員がリスクを負っている会社のようにも見えます。ビックカメラがリスクを負う会社でないとすると、それは単に役員・大株主との取引ということになりますが、役員や大株主に対する資産売却が常に認められないということはないはずです。
(ただし、ビックカメラは豊島企画の借り入れについて金融機関に念書を提出しており、監視委の主張ではそれが信用補完だとされているようです。)
だれか流動化に詳しい専門家に、この事例を分析してもらって、どこに問題があるのかを明らかにしてもらいたいものです。
決定要旨(PDFファイル)(50ページ以上あります。)
当サイトの関連記事(監視委の勧告について)
ビックカメラ元会長への課徴金勧告を金融庁が覆す(朝日より)
「課徴金制度の2005年度の開始以来、監視委の勧告通り納付命令が出されないのは初めて。」
証券監視委の拙速調査疑問…金融庁「無罪」判断(読売より)
「審判では6回にわたり双方の主張を検討。監視委は、08年12月、新井氏を初めて聴取した際、虚偽記載を知っていたと認めたとする「供述」を、「違反行為」と認定した主な根拠として挙げた。しかし、審判の中で、聴取は監視委が新井氏に要請した当日に実施され、時間も20分間に過ぎなかったことや、新井氏がその後の聴取で虚偽記載の認識を否定していたことが判明。審判は「新井氏は弁護士と相談しようとしたが、面会できず問題を把握できないまま(最初の聴取に)臨んだ」と指摘し、「(虚偽記載を)認識していたと認定するのは相当ではない」と結論付けた。」
「監視委は「真摯に受け止めたい」とするが、ずさんな調査だったことは否めない。なぜ拙速に結論を出したのか、経緯を徹底検証することが求められる。」
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