会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

ソフトバンクグループ 3か月決算 3四半期連続の赤字(NHKより)

ソフトバンクグループ 3か月決算 3四半期連続の赤字

(とりあげるのがだいぶ遅れてしまいましたが)ソフトバンクグループの第1四半期決算(2023年4~6月)に関する記事。

「ソフトバンクグループのことし4月から6月まで3か月間の決算によりますと、傘下の投資ファンド事業「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」では610億円の黒字となり、投資先のスタートアップ企業の価値が上がったことを受けて、6四半期ぶりに黒字に転換しました。

しかし、円安の影響で保有するドル建ての負債が円で見た場合に膨らみ、4646億円の為替による損失が出ました。

この結果、最終的な損益は4776億円の赤字となりました。」

ソフトバンクグループのこれまでの赤字の原因はファンド事業であり、それが黒字になったのであれば、連結グループ全体でも黒字になりそうなものです。少し不思議に感じたので、セグメント情報を見てみました。

(同社四半期決算短信より)

たしかに、ファンド事業で610億円の利益になっていますが、調整額として、「投資損益」を1兆7281億円減額しています。

セグメント情報の注記では以下のように書いています。

「2023年6月30日に終了した3カ月間において、SVF1およびSVF2が保有する当社子会社(主にアーム、PayPay㈱)の株式に係る未実現評価益(純額)175,532百万円に関しては、上記セグメント利益において、SVF事業からの投資損益(投資の未実現評価損益の当期計上額)に含めていますが、連結上消去しています。」

アームはソフトバンクグループの子会社ですが、その株式の一部をファンド事業で保有しているようです。ファンド事業保有分は、株式を時価評価しているのでしょうが、連結では、時価評価による利益は消去され、連結子会社としての会計処理となります。

「調整」で消してしまうようなものをセグメント情報で利益として計上するというのは感覚的にはしっくりきませんが、セグメント間取引で生じた未実現利益を消去するのと同じでしょうから、正しい処理なのでしょう。

アームは、その後、ナスダックに上場しています。アーム株の時価は第1四半期末よりさらに上昇しているでしょうから、ファンド事業のセグメント利益(外部への売却分は実現益)もたぶん増加するのでしょう。しかし、連結では、時価評価による利益は消去され、また、外部売却による利益も、連結では資本取引となり、消去されます。

NHK記事によると、第1四半期のもう一つのポイントは、外貨建ての負債の巨額為替差損です。

これについては、なぜヘッジしていないのだろうかと疑問に感じますが、包括利益計算書を見ると、「在外営業活動体の為替換算差額」(日本基準でいえば為替換算調整勘定)が、大きなプラスの金額(1兆2千億円超)になっています。包括利益で見れば、ヘッジになっているのかもしれません。

(同社四半期決算短信より)

純利益では赤字でも、包括利益は9千億円もの黒字になっています。

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