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株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会(第1回)議事要旨及び資料(金融庁)

株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会(第1回)議事要旨及び資料

昨年12月17日に開催された株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会の会議資料や議事要旨が、金融庁のサイトで公開されています。

第1回ということで、金融庁、東京証券取引所、日本公認会計士協会より説明があり、その後、意見交換を行ったそうです。

資料によると、金融庁からは、以下の点を問題点としてあげたようです。

○IPO監査を担う監査法人のキャパシティが不足しているのではないか。

• 東芝事件後の監査手続厳格化、働き方改革等により、大手・準大手監査法人がIPO監査の新規引受を抑制

• IPOをしようとしている企業に対して、引受証券会社は、大手・準大手監査法人による監査を求める傾向

○ IPOをしようとしている企業にも監査を受けるための準備が不足しているとの声もある。

• そもそも内部管理部門が脆弱であるなど、監査を受ける準備ができていない企業もある。

• 監査法人とのネットワークを有するベンチャーキャピタルなどの支援がない企業にとっては、監査法人を見つけるハードルが高い


金融庁説明資料より)

東証からは、IPOの市場別・地域別の分布、資金調達額(「マザーズIPOの平均資⾦調達額(中央値)は、約5億円程度」)などが説明されたようです。

会計士協会からは、監査契約時の手続、IPOに関連する不適切な事例、上場会社監査事務所登録制度などを説明したようです。


(会計士協会資料より)

ほんの数年前には、IPO会社の監査契約は厳しくチェックしろということだったではないか、という趣旨でしょうか。

「主な発言ポイント」より、一部抜粋。

ベンチャー企業関係者

「足もとの好況によりIPOを目指す企業は増加傾向にある一方、4年程前から監査法人が監査を引き受けなくなっている印象。監査法人を見つけるために首都圏以外の地域の監査法人に相談に行く企業もある。また仮に企業が監査法人を見つけても証券会社が認めないケースもある。実感としては、半年から1年程度かけて監査法人を探し回らなければならないほど、厳しい状況にある。」

「特に大手監査法人において、監査契約のハードルが高くなっていると認識。足もとの業績、管理体制、成長性、資本政策の蓋然性などを企業側がきちんと説明できないと、監査契約は難しいという印象。要因としては、①2015年に問題となったIPO直後の不正会計事案を受けた監査手続の厳格化により、監査コストが高くなっていること、②働き方改革、スタートアップ企業による会計士の引き抜きなどにより、監査に必要な人員の確保が難しくなっていること、③金融庁や日本公認会計士協会による検査やレビューにおいて求められる監査品質の水準が上がっていること、などが考えられる。」

内部管理体制の整備のタイミングについて、IPOを目指す企業と監査法人との間に認識のズレがある。ベンチャー企業側には、内部管理体制を整備してから監査法人に相談するという感覚はない。もし、監査法人として、上場するタイミングの2期前までに内部管理体制の整備を終えてから相談に来て欲しいということであれば、監査法人の方針として示すべきではないか。」

証券会社

「証券会社としては、IPO支援に積極的に取り組んでおり、大手・準大手監査法人の監査を必要条件としている事実はない。他方、IPOを目指す企業の監査は、当該企業に資本市場への門戸を開くべきか否かを決める上で重要な役割を担う以上、上場企業の監査とは内容的にも異なるところがあると理解しており、こうした監査に求められる品質や組織体制を備えた監査法人であることが不可欠。近時、上場企業においても不適切会計の事案が散見されており、監査の品質確保の重要性は増している。」

「証券会社がベンチャー企業などとIPOに向けたアドバイザリー契約を締結する際には、監査法人が選定されていることが前提条件。IPOを目指す企業が監査法人を選定する際の参考となるよう、監査の品質を確認できるガイダンスがあればよいのではないか。証券会社としても、IPOを目指す企業の監査ができる監査法人のリストがあると紹介しやすい。」

監査法人関係者

「IPOを目指す企業の監査と上場企業の監査は、同一の監査の基準の下で実施されるので、大きな違いはなく、特殊なスキルが求められるものではない。他方、ベンチャー企業の先進的なビジネスモデルや固有のビジネスリスクの理解、経営者リスク、IPOに向けたタイムマネジメント管理などへの対応は必要。こうした観点から監査法人の経験やリソースなどを勘案する必要があるかもしれない。」

「監査法人としては、IPOを目指す企業において、内部管理体制の整備を進めた上で、監査契約の相談を持ち掛けて欲しいと考えている。」

「監査法人としては、既にIPO準備をサポートするコンサルタントとの連携も図りながら、IPOを目指す企業のニーズに応えている。」

内部管理体制ができていないと、お断りというのは、ちょっと冷たい対応ですが、それはコンサルの仕事という認識なのでしょうか。

なお、会議の参加者は、監査法人、日本ベンチャーキャピタル協会、ベンチャー企業関係者、証券会社などとしか、明らかにされておらず、実名は公表されないようです。
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