金融庁の公認会計士・監査審査会は、才和有限責任監査法人を検査した結果、「当該監査法人の運営が著しく不当なものと認められた」として、2014年10月24日付で、当該監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずることを勧告しました。
以下のような指摘がなされています。
「社員が監査の品質を向上させる必要性を感じておらず、被監査会社の主張や被監査会社が作成した資料を批判的な検討なく受け入れる傾向がある」
「全ての社員が兼業を行っており、法人代表者を除く4名については、法人の品質管理業務にほとんど関与しておらず、監査法人としての組織的監査を実施する態勢を構築できる状況になく、また、法人代表者がガバナンスを効かせにくい環境にある。」
「代表者自身において主要な監査業務の業務執行社員に加え、品質管理担当社員、日常的監視担当者といった多くの法人の役割を兼務するなど、品質管理担当社員として実施すべき品質管理システムの整備に十分な時間を確保できておらず、品質管理に係る各業務の運用において、深度ある検証ができない状況になっている。」
「業務執行社員は、監査補助者を非常勤職員中心に構成している状況において、指示・監督、査閲、研修の実施等、適切な監査を実施するための取組を十分に行っていない。」
「業務執行社員を含む監査チームにおいて、監査の基準の要求水準に関する理解・知識が不足しているため、監査意見形成に重要な影響を与える会計上の見積りなど、職業的専門家としての判断を伴う項目に対し、深度ある監査手続が実施できていない。」
「業務執行社員は、前年同様の監査を実施すればよいとの認識のもと、被監査会社の主張や被監査会社が作成した資料を批判的な検討なく受け入れる傾向がある。」
「監査の基準に準拠した監査手続が実施されていない監査業務が広範に認められる。」
(感想)以上引用した以外に「監査契約の解除等により業務収入が激減している厳しい環境にある」ことまで、処分勧告の根拠にしているのは、おかしな感じがします。監査法人も民間企業である以上、売上が急減することもあるでしょう。また、契約を維持しようとして無理をするより、解除の方がましという場合もあり得ます(この法人の場合はどうなのかわかりませんが)。いずれにしても、金融庁が、上場会社の監査はビッグ4といくつかの準大手・中堅だけでいいと考えているとしたら、基盤の弱い小さな事務所の運営はなかなか難しそうです。
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