企業会計基準委員会は、「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方(追補)」という文書を、2020年5月11日に公表しました。
同日開催された第432回企業会計基準委員会において行われた、新型コロナウイルス感染症の影響に関する開示についての審議の議事概要です。
4月10日公表の議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」では、会計上の見積りにおける仮定に関して、追加情報の開示の必要性を、以下のように述べていました。
「最善の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する一定の仮定は、企業間で異なることになることも想定され、同一条件下の見積りについて、見積もられる金額が異なることもあると考えられる。このような状況における会計上の見積りについては、どのような仮定を置いて会計上の見積りを行ったかについて、財務諸表の利用者が理解できるような情報を具体的に開示する必要があると考えられ、重要性がある場合は、追加情報としての開示が求められるものと考えられる。」
(「追加情報」については、財規第 8 条の 5を参照している。)
今回の文書では、この記述について、補充しています。
「上記の(4)の「重要性がある場合」については、当年度に会計上の見積りを行った結果、当年度の財務諸表の金額に対する影響の重要性が乏しい場合であっても、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に関する追加情報の開示を行うことが財務諸表の利用者に有用な情報を与えることになると思われ、開示を行うことが強く望まれる。」
このような追補文書を出すに至った背景は...
「これまでに公表された 2020 年 3 月期の開示情報を踏まえると、新型コロナウイルス感染症の影響が大きいと考えられる業種においても、今後の法定開示書類において追加情報の開示が十分に行われないのではないかとの意見が聞かれている。」
(4月10日の議事概要では「追加情報としての開示が求められるものと考えられる」だったのに対し、今回は「開示を行うことが強く望まれる」となっています。この違いには意味があるのでしょうか。いずれにしても、「追加情報」を規定している財規(連結財規なども含む)は、企業会計基準委員会の縄張りである会計基準そのものではないので、そもそも、企業会計基準委員会が、追加情報に書くべき事項の解釈を行う権限があるものなのでしょうか。有用な情報でしょうから、開示するのはよいことなのでしょうが、本来、財規を所管している金融庁が見解を示すべきでしょう。もちろん、会計基準で規定している場合は別です。3月に公表されたばかりの「会計上の見積りの開示に関する会計基準」(2020年3月期は未適用)との関係も気になります。)
5月11日の会議資料など。
↓
第432回企業会計基準委員会 Webcast
第432回企業会計基準委員会の概要
日経の短い記事では、収束時期に関する仮定を開示徹底すべきというふうになっています。
収束時期の開示徹底要請 企業会計基準委員会(日経)(記事冒頭のみ)
↓
「日本の会計基準をつくる企業会計基準委員会(ASBJ)は11日に会合を開き、企業が新型コロナウイルスの収束時期をいつと仮定するかについて、決算資料での開示徹底が必要との見解を示した。」
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