会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

(再掲)不適切会計、コロナ禍でも高水準 昨年は58社60件(朝日より)

(補足)

下記朝日記事のもとになっている東京商工リサーチのレポートが公表されました。

2020年 全上場企業 「不適切な会計・経理の開示企業」調査(東京商工リサーチ)

「監査法人は緊急事態宣言以降、リモートによる監査が加速している。だが、リモート監査は必要に迫られたものだが、安易な業務のリモート化は不正の機会を増やす懸念もある。コロナ禍で業種によっては経営環境が一段と悪化している企業もあり、2021年3月期は特に不適切会計に気を配る必要があるとの声も聞かれ始めている。

経済のグローバル化で、海外子会社との取引に伴う不適切会計も増加した。また、現場や状況を無視した売上目標の達成へのプレッシャーで、不正会計に走る担当者も後を絶たない。」

不適切会計、コロナ禍でも高水準 昨年は58社60件(記事前半のみ)

2020年に不適切な会計処理を公表した上場企業は、58社60件だったという記事。東京商工リサーチが調べた数字です。

「粉飾決算といった企業の不正行為が続発している。民間調査会社の東京商工リサーチによると、不適切な会計処理を公表した上場企業は、2020年に58社60件だった。過去最多だった19年(70社73件)に次ぐ高水準で、コロナ禍のなかでも高止まりしている。」

名前が挙がっているのは、ジャパンディスプレイ(JDI)、東芝や富士電機(子会社で循環取引)、ハイアス・アンド・カンパニーなどです。

そのほか、ジャスダック上場の5社が、課徴金納付命令や上場契約違約金の支払い要求を受けたとのことです。

「東京商工リサーチの担当者は「海外展開を加速する企業で、海外における子会社において不適切会計の発生がめだつ。経営陣による目標達成の圧力が強い企業でも起きやすい」と指摘する。監査法人などのチェックが厳しくなっていることも、不正の発覚が相次ぐ要因だとしている。」

裁判で責任追及する動きも紹介しています。

「不正会計が発覚したJDIでは、株価下落で損害を受けたとして、株主が会社や役員らを相手に約39億円の賠償を求める訴訟を20年7月に東京地裁に起こした。」

「株主が新たに責任を追及する動きもある。埼玉県上尾市の電子部品会社「ユー・エム・シー・エレクトロニクス(UMC)」の元株主が20年12月、大阪地裁堺支部に訴えた。会社とEY新日本監査法人、公募増資を担当したみずほ証券に損害賠償を求めている

UMCの外部調査委員会は19年10月、上場前から当時の副社長の主導で不適切会計が繰り返されていたことを公表した。原告側は、裏づけがない利益などは専門家なら見破ることができるはずだなどと主張する。」

そのほか、「エフオーアイ」の最高裁判決も取り上げています。

専門家のコメント。

「金融商品取引法などが専門で青山学院大名誉教授の土橋正弁護士は「投資家は上場前から粉飾しているとは考えない。監査法人などが見抜けなかった責任が問われる可能性はある」と指摘している。」

記事の見出しでは「コロナ禍でも高水準」とありますが、2020年に明らかになった不正会計は、多くの場合、2019年以前から(場合によっては数年にわたって)行われていて、ようやく2020年に発覚したものです。コロナ禍の影響で2020年に不正が行われた場合には、それが発覚するのは、2021年以降となる場合が多いでしょう。しかも、リモート監査などにより監査(外部、内部とも)が手薄になっている面もあるでしょうから、監査の網をすり抜けて、不正規模が徐々に大きくなり、数年後に爆発してしまうということもありうるでしょう。

当サイトの関連記事(「ユー・エム・シー・エレクトロニクス」の訴訟について)
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