PwCが、中国不動産大手、中国恒大集団の監査人を辞任したという記事。問題となっているのは2021年の監査です。
見出しでは「意見相違」とありますが、記事をよく読むと、PwC側は、(会計処理などに関する)意見相違というより、監査のための資料が得られなかったことを理由にしているようです。
「恒大の発表によると同社の取締役会がPwCに辞任を提案し、PwCが辞任書を提出した。恒大はグループの事業継続への評価や資産の減損査定などについて、PwCと「業務の範囲とタイムスケジュールで合意できなかった」としている。
PwCは辞任書で、21年の恒大グループの連結財務報告の監査に関して十分な資料を得られなかったと指摘した。恒大が明らかにした。例えば、恒大と傘下の電気自動車(EV)メーカー、中国恒大新能源汽車集団の間に存在する可能性がある簿外の負債情報が提供されなかった。
また不動産管理会社、恒大物業集団との間で発生した資金の流用問題について、最終的な独立調査報告をまだ受け取っていないという。」
「事業継続への評価」というのは、ゴーイングコンサーンの問題でしょう。
後任の監査人は見つかったそうです。
「PwCの辞任を受け、恒大は香港の上会栢誠会計師事務所を監査役とすることを決めた。臨時的な措置になるという。」
中国にも駆け込み寺的監査事務所があるのでしょう。PwCも、後任がいないままで、辞任するのは難しかったかもしれません。
中国恒大、PwCが監査役辞退-2021年財務諸表巡る意見相違で(ブルームバーグ)
「当局への届出書によると、両社は「資産減損の査定に必要な手続き」に加え、「継続企業ベースでの評価の作業スケジュールと範囲について合意」できなかったことから、中国恒大の取締役会がPwCの辞退を勧告した。」
「PwCは中国恒大の監査委員会と取締役会に宛てた16日付の辞退の書簡で、21年監査の「重要事項」に関していまだに情報を受け取っていないとし、それにはグループの連結財務諸表さえも含まれると説明。こうした情報の不足は、PwCとして追加の作業の範囲を確定できず、監査完了に必要な期間の合理的な推計を示す立場にもないことを意味すると指摘した。」
Evergrande Says PwC Resigns After 2021 Audit Disagreements(ブルームバーグ)(上記記事の原文)
Evergrande’s board recommended the resignation of PwC after the two firms couldn’t “agree on the timetable and the scope of work in respect of the assessment on the group’s going concern basis,” as well as the “procedures required for the assets impairment assessment,” according to a regulatory filing.
In its Jan. 16 resignation letter to Evergrande’s audit committee and board, PwC noted it still hadn’t received information relating to “significant matters” of the 2021 audit. That included cash flow forecasts, the net realizable value of the group’s properties under development and even the consolidated financial statements of the group, the filing said.
The lack of information meant PwC was “unable to determine the scope of any necessary additional audit work and is also not in a position to provide a reasonable estimate of the time required to complete the audit for the year 2021,” according to the auditor.
2021年の監査の資料が出てこない、監査スケジュールも決められないというのでは、辞任するしかないでしょう。
中国の不動産業界はどうなっているのか...
中国の10月不動産投資、20年序盤以来の落ち込み 政府支援策に期待も(2022年11月)(ロイター)
「中国国家統計局が15日発表したデータに基づきロイターが算出した10月の不動産投資は前年同月比16.0%減と、2020年1─2月以来の大幅な落ち込みとなった。新型コロナウイルス規制と不動産市況の低迷が響いた。ただ、当局は業界の流動性支援に動いている。」
焦点:中国の不動産業界、今年は需要が緩やかに回復へ(ロイター)
「中国経済の4分の1を占める不動産業界は昨年、手ひどい打撃を受けた。資金繰りが悪化した開発業者は建設を完了できず、買い手の一部が支払いを拒否。広範なロックダウン(封鎖措置)や人員解雇も買い手の心理を悪化させ、昨年11月の不動産投資は前年比19.9%減と2000年の統計開始以来となる大幅な落ち込みを示した。
しかしUBSの首席中国エコノミスト、タオ・ワン氏は「2023年については、不動産政策が引き続き緩和され、コロナ後の経済再開が経済活動と家計所得の回復につながるため、不動産は販売と新規着工の両方が順次回復する」と予想する。
早くも好転の兆しが出ている。中国指数研究院の最近の発表によると、今年は新年3連休の新築住宅販売が前年比で20%余りも増加した。ただ北京や上海など大都市と比べて、ほとんどの小都市は市場心理が低迷したままだという。」