だからもうやめて

息子が迎えに来てくれて
午後の2時間ばかり

心療内科に行って
母が食べる食パンを買いに寄って
送り届けられると

無人のキッチンで何か焼けるような香ばしい匂い
ＩＨヒーターでフライパンを空焼きしている

80歳要介護1認定の母が
ウインナーを炒めたフライパンを洗って
乾かしていたらしい
ＩＨヒーターが焦げついている

だからもうやめて！
自然乾燥でいいから

やはり2時間以上放置できない

それはやめて

80歳要介護１の母

洗った食器を水きりのため
乾いた台拭きの上に伏せるのは
やめてくれないかな

台拭きの上では洗った意味がない

綺麗に見えるのは
時々わたしがハイターにつけて
漂泊してるからで
台拭きは台拭き！

しかもその台拭き
わたしが自宅から食器拭き用に持ってきたのを
いつの間にか自分が台拭きにしたんじゃないの！

台拭きの上の食器
気付いたらすぐにもう一回ゆすいで
ざる籠の上に伏せ直す


食器洗い用のボールで
自分の下着を洗濯をするのは
息子が言ったらやめてれくれた

だってそのボールで
ほうれん草のおひたし
水にさらすんだもん

料理屋じゃないし
水にさらさなくてもいいから！
栄養分も流れるし

そんなおひたし食べたくないから
ほうれん草はわたしが冷蔵庫の中に隠している

日曜日の予定

日曜日　息子が母とわたしを連れて
夫の田舎に行くことになった

去年母が体調を崩したときに
夫の母と姉がお見舞いに来てくれたので
母がそれをずっと気にかけていた

だけどわたしは前髪が伸びて
年内にカットに行きたい
無理にとは言わないし

近くの美容室に行くという手も
あるにはあるが
知らないところに行きたくない

母は前回行ったときに
充分に短く切ってもらっていて
襟あしも気にならないようだ

母はデイサービスでしかお風呂に入らないので
シャンプーだけしてもらって
わたしもカットだけにして
日曜日の朝　田舎へ行く前に
美容室に連れて行ってくれることになった

白髪隠しのヘアマニキュアは
年が明けてから
また母がカットに行きたいと言ったときにしよう

美容室のあと田舎に行くのなら
お出かけ着とかじゃなく
とにかく重ね着して暖かくして行かないと
田舎は寒いぞ～

地面も雨でべちゃべちゃかもしれない
古いズックで行かないと

食べてくれない

朝から煮込んでいた
鶏牛蒡つくねと白菜の鍋

おかずができてるからねって言って
整骨院に行ったのに

言ったそばから忘れている
帰ってきたら食べた形跡がない
ほかには焼き魚とお漬物しかなかったのに

食べてもらえなかった・・・

80歳要介護1認定の母

老人ホーム

市内の特養老人ホーム
ざっと調べてみた

いろいろあって
入居時に５０万から１００万
月々が１５～２０万円

住むだけではなく
いろいろケアもついてるわけだから
家賃以上にそれなりにかかる

毎月そんな金額払えない
介護保険が適用になるのかもわからないし


日曜日　１日雨だったので
お散歩がてらの買い物も行ってなくて

食材が豆腐と卵と揚げぐらいしかなかった

揚げを１枚　一口大に切って煮ておいた
卵でとじてどんぶりにするつもりだった

会社のPCで仕事しているときに
デイサービスから帰ってきた母
帰るなり荷物を置いてキッチンで何か始めた

あわてて飛んでいくと
揚げを煮ていたはずの片手鍋で豆腐を煮ている

卵が３個出してあって
お箸と一緒に台拭きの上に乗せてある

揚げは！！？

また捨てられたのかと思って
思わず三角コーナーを見た

揚げはお皿に取ってあった
そのあとのだし汁に豆腐を入れて煮ていた

卵とじにならないので　豆腐と一緒にした

お箸を台拭きの上においたらだめじゃない！
卵入れたらわたし食べれないから！

薄味に卵入れると食べれないのだ
卵３個は卵焼きにしてもらった

わたしがそんな風に
つい強い口調でいらいらと言ってしまうから

当てつけみたいに
老人ホームの話なんか出てくるわけで

会社がなければいいんだけど　って言うけど
会社もなくて１日中顔つき合わせてる方がきついに決まってる

今のまま元気にデイサービスに行ってくれればいいんだ

自分で自分のことは出来てるし
朝もちゃんとデイサービスに行く支度をして
会社のポットのお湯まで入れてくれる

何もできなくなったら
老人ホームは考えるから

嘘つき

母は去年の夏以降認知症が進み始め
秋口からデイサービスに行けるようになった

それまで　
去年の始めごろから
昼食後は仕事そっちのけで
昔の話ばかりするようになった

何度も同じ話　しかも人の話は聞かない

女学校を卒業したら
東京で洋裁の勉強がしたかった

戦後の混乱期　進駐軍がいて
若い女性がレイプされたり
食べ物が不足して米が配給制だったり

もともと住んでいる人ならともかく
そんな危険なところに
田舎から娘を親が行かせないのは当たり前だ

そんなときにちょうどうまく
東京で洋裁をしていた先生が
家庭の事情で地元に帰ってきた

そこに習いに行き始めたと思ったら
親の縁故関係でどうしても農協で働かないといけなくなった

やりたかったこと
ことごとくやらせてもらえなかった　
それがずっと心残り

だから　あんたたち(私たちふたりの娘)には
何でもやりたいことをやりなさいと言っていたでしょ

嘘つき

運動の得意でないわたしが
クラブ紹介で見て　点訳奉仕部に入りたいと行ったら
そんな物は将来役に立たないと

じゃあ手芸ならできそうだから
そんなものは家でできると
(母は趣味でフランス刺しゅうをやっていた)

自分が女学校時代やりたかったからって
わたしの一番苦手な球技のテニス部を薦めた
（母は器械体操が上手だったため
先生から半ば強制的にやらされた）

わたしがやりたいこと
ことごとく反対したのは誰？

苦手なテニス部　しかも人数ばかり多くて
毎日毎日中腰で球拾いばかり
ちっとも面白くなかった

わたしも器械体操の方がまだ
よかったかもしれない

テニス部はつまらないので行かなくなった

もともと書くことが好きだったので
点訳奉仕部という珍しい部で
点字を習ってみたかった

ヘンケルのお鍋

土曜日　携帯が鳴った
兄嫁さんからでした

スーパー○○○でシールを集めて台紙に貼って



シール３０枚と２７００円で大きいフライパン　ゲット
シール３５枚と２９００円で大鍋　ゲット

長い間大切に(？)寝かせてあった
スーパー○○○の商品券で払いました

ところが　ヘンケルの高級お鍋は重たい

頚椎(首)椎間板ヘルニアのため
整形外科の先生から
重たい物持たないようにと言われているし

そのために月火木金と
仕事のあと整骨院に通っている

それに　そんな高級なお鍋は
わたしにはもったいない

で　兄嫁さんに贈ってあげました
不要だったらどなたかに差し上げて下さいと
手紙を入れて

お料理上手の兄嫁さんは
使わせてもらうよと　嬉しそうでした

寝かせてあった商品券で払ったから
お金は使ってないから気にしないでねって

思いがけなかったのでしょう
兄嫁さんはとても喜んでくれて

何かあったらすぐ言いなさいね
あんた　わたししかいないでしょう
とまで言ってくれました

思った以上に気持ちが伝わったみたいで
よかったです

紺のカーデガンがない

紺のカーデガンがいくら探してもない
軽くてあったかい　今着るのにちょうどいい
去年デイサービスに着て行ったカーデガンがない

そう言って母が探しまわっている

思いのほか古びていて処分したか
その時の判断で田舎に送ったのかも知れないでしょ

いやそんなはずはない
出したばっかりだったのになくなった

そんなもの誰も盗らないし
消えるわけもない

どこかの隙間にしまいこんでるのかも知れないし
わたしはそんなカーデガンを見た覚えがない
デイサービスにも着て行ってない

処分したか　田舎に送ったか
どこかにしまいこんでるか

何度言ってもなかなか納得しない
一度は納得してもまた時間が経つと
同じことを言い始める
わたしの語気もだんだんきつくなる

今年は脳神経外科の薬も飲んでいるし
去年よりはおちついていて
自分で服の整理をして
着るものはたくさんあると言っている

そして

もう今更服は買わなくてもいい

とまた大嘘を言う

もういらないと言っておいて
お店に行くと次から次から
７着も買う

小売りのお店だからお安くはない

もういらないなんて言わなければ
まだ腹も立たないのに

うそつき　もう連れて行かない
絶対連れて行かない
どうやって払うんだ！

おかあさん 死んじゃいやだ

たぶん幼稚園児だった頃の二男と
家庭の医学という辞典を見ていた時のこと

しわくちゃの顔のおばあさんの写真が載っていた

おそらく　
人は誰でもそんな風に年を取って
死んでいくんだよという意味で
なにげなく

おかあさんもいつかは
おばあさんになって死ぬんよ

人が死ぬなんて観念
まだないと思えた幼い子どもである

ふう～～～ん　

ぐらいの反応だと思っていたのに
ぽろぽろ涙を流し始め

おかあさん　死んじゃいやだ　わあ～～ん

と泣きだして面食らってしまった
今すぐ死ぬわけじゃないから！

そんなこと言うからだ！
夫に怒られたが　

そんな息子が愛おしかった

お粥

数年前
わたしの母がまだしっかりしていて
普通に生活し　現役で一緒に仕事をしていた頃のこと

日頃家事が滞っているわたしを
夫は無理には田舎の農業に連れて帰らなかった

しかし田舎の両親も相当高齢で
父は９０歳ぐらい
それより少しは年下の母も体調が悪く
台所仕事もままならなかった

そこでピンチヒッター
長男の嫁に代わり
わたしが二男の夫について
農繁期のおさんどんに帰った

とにかく何種類か昼食と夕食
おかずを並べねば

自慢じゃないが
料理は得意ではない

口も利かずに必死でおかずを作った
冷ご飯は食べにくいからお粥にした
実はわたしはお粥が大好きなのだ

夕食時　
熱いご飯も炊けてるけど
お粥もあるよ

そういうと
歯が悪くて硬い物が食べれない夫の母が

わしはお粥がええ

続いて夫の父も

わしもお粥くれ

ただの冷ご飯のお粥なのに
喜んで食べてくれたのが嬉しかった

お粥をしたことが
思いやりのように取ってくれた気がした

その後夫の姉から伝わってきた話

KEIちゃんが何にも言わずに
よくやってくれたと喜びの声

…。

余裕がなくてしゃべれなかっただけなんだけど

亡くなった人のこと

亡くなった人のことを悪く言うもんじゃない
と言いますが

いくら亡くなった人でも
その人からされたこと言われたことは
その人が亡くなったからといって
消えるものではない

思い出すと腹の立つことばかり
母も　わたしも　妹もそう

父の思い出と言えば腹の立つことばかり

晩年の　仏様により近づいてきた頃の父の
ほほえましいエピソードもなくはないですけど

短大の２年間
わたしは　夏冬の休暇ははデパ地下で
春秋のブライダルシーズンは
土日祝祭日　結婚式場でアルバイトをして
自分のお小使いを稼いでいた

春秋は月２～５回なので月１～２万
夏冬は毎日行くのでもう少しまとまった額
服やバッグなんかは自分で買えた

ところがちょっと裕福な友達が何人もいて

ある友達は
一緒にお店に下見に行って選んだ服を
おとうさんに買ってもらうと言う

別の友達は

そういうバッグなんか　
自分でアルバイトしたお金で買うの？と

驚いている

当たり前じゃん
母親はちゃんと学費と交通費を出してくれている

そうなんだ
おとうさんていうのはそういうものなのか

初めて気付いて
わたしも父に言ってみた

おとうさん　スカートが欲しい

そんなもの自分でアルバイトして買え

やっぱりだめか・・・

服や靴やバッグぐらいなら
高価なものでなければ自分で買える

でも
回りのクラスメートたちは
夏休み冬休み春休みのごとに
どんどん運転免許を取っていく

わたしはどんくさいし
運転免許はいいわ～と思っていたが
だれでもかれでも　どんくさそうな子も
次々運転免許取っていく

おとうさん　自動車学校行きたい

そんなもん　自分でアルバイトして行け

はあ！！？
スカートとは二桁違いまっせ～

当時で１２～３万の自動車学校の費用はアルバイトでは無理
経済観念のない　しかもけちな父親である

それだけだったらまだよかった
そんな金出してもらうもんか！
就職したら自分のお金で取ってやる
と思った

ところがである

何思ったのか　父が

同業者の誰それの娘は
車で配達の手伝いをしてくれるそうな

と不服そうに言う

はあ！！！？

それって　お父様が費用を出して
運転免許取らせてあげたからでしょ！
わたしは運転免許費用　断られたよ！

口に出しては言ってない
あきれてものが言えなかった

揚げだし豆腐

スーパーのお惣菜に
大好きな揚げだし豆腐があったので
買っておいた

８０歳要介護１認定の母を
土曜日の朝一番に連れて行って
散歩がてら歩いて帰ってきた

わたしは朝はあまり食べたくない
ヨーグルトでもめったに食べたくならない

１０時ころ帰ってきてやっとお腹が空いて
冷蔵庫から揚げだし豆腐を出して食べた

食べたいものがすぐに
準備もなしに食べられるありがたさ

昭和３０年代生まれの野郎どもは
(誰とは言わないでおく)
そんなこともわからないで

めしがおそいの　味が薄いの辛いの
文句ばっかり言う

貝 汁

朝から大雨の日曜日
なんと昼からからっと晴れたので
母と散歩がてら買い物に行った

母は要介護となるずっと以前に
よく貝の缶詰を買って来て
剥き身の貝を食べていた

わたしがうちで作った貝の味噌汁があまりそうなとき
持ってくると喜んで食べた

で　スーパーであさり1パック

貝の味噌汁しようか

わたしは貝の汁は
汁だけなら少しは飲むこともあるけど
身はめったに食べない

さっそく夕食に貝の味噌汁をして
母は喜んで食べた

夜　汁が冷めてから冷蔵庫に入れておいた

月曜夕方　わたしは整骨院に行くことになっていた
6時会社を閉めるとご飯も後にして
わたしは急いで整骨院に行った

1時間もして帰ると
貝の味噌汁は冷蔵庫にそのままだった

火曜日　夕方

貝の味噌汁食べる？

いや　いらない　あした食べる

ええ！？あした！？きのう作ったのに！
きょう食べないんだったら　もう捨てたほうがいいよ

じゃあ捨てよう

むかっ！！！！

もう貝なんか買わない！
貝の味噌汁なんか作ってやらない！

簡単携帯

超簡単な携帯がある

その都度番号を押してかけるタイプ
昔の家電話と同じ

ワンタッチでかけられるのは
登録した３件のボタンだけ

簡単なあまり
どこからかかってきたのかもわからない

もう　おととしのことである

休日になると
かけもしないのに　電話かけたの？と
何度も母から電話が入る

こっちは何事かとひやひやする

もうちょっとましな
簡単携帯に変えてもらった

今度はいくら教えても
着歴　送歴　電話帳の区別がつかない

画面にＫＥＩばっかり出ていると言って
たびたびかけてくる

無言電話の時もある
わけわからず携帯いじくっているのだ

携帯教えてもわかってもらえず
かっかしてくる

休日にかけてもないのに電話かけられていらいらする

もう　少しずつ認知症始まっていたんだね

出て行けと・・・？

夏の始め　
セシールで服の大量買いをして
置くところがなかった

押入れの戸を開けて
たくさん吊るしていたら

母がそんなに押し入れに洗濯物をかけたら
今から梅雨の季節
押入れの中の物が湿気る！と
すこぶる機嫌が悪かった

洗濯ものじゃないし
濡れたものはかけてないし

わたしの着る物を置くなって言うことは
わたしに出て行けってことになる

次の休日に
長男と押入れを片付けて
不用品を処分して
洋服掛けのパイプを渡してもらった

出ていかずに済んだ

母は　ときたまなにか機嫌の悪い時期があった