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この前の日曜日、北海道東川のフォトフェスタに行ってきた。
20歳台最後の夏の思い出ということで、フェスタのボランティアとして10日間あまり泊まり込みで展示の手伝いをしてからちょうど10年ぶり。すっかりごぶさたしてしまったが、あっという間だった。
朝、一人で18きっぷの汽車旅に行くかみさんを旭川駅まで送って、10時半頃東川文化ギャラリーへ。インディペンデンス展の合評が始まっていた。
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芸大の佐藤さんの進行で、数名の評論家や写真家といったプロたちがコメントしていく。プロといえども、コメントに困る作品はあるもので、もっと数を撮りましょうとかお茶を濁すような結末もみられたが、その中でも記憶に残ったのは、次のようなこと(誤解正解問わず、私の認識した表現)。
・(6×6モノクロ16枚組くらいの手慣れたスナップ作品に対して)単調さを避けるために、視線を上げたり下げたり振ってみているのだが、スナップはある程度の単調さは引き受けなくてはいけないもので、そこまでしなくてもいいのではないか
・(パリの観光地を舞台としたかっこいいモノクロ作品に対して)今、なんで、この風景を撮って、人に見せなければいけないのかが理解できない
・(町役場が作る迷い犬のポスター写真を拝借して額に入れて展示した作品に対して)ギミックとしてやるなら、その場で種明かしなどしないで、もっと後で気づかせるような大きな仕掛けにするか、あるいはだまし通すくらいの方がいい、危険な領域に踏み込んでいる以上、中途半端はよくない
・(幼少の自分の写真と、それと同じ年になった我が子の写真の組作品に対して)
私写真をこういう場で見るのは緊張する、唯一性のあるテーマだが、唯一性は人の数だけあるわけで、むしろ切ない、 などなど。
辛辣なコメントが多くて、進行の佐藤さんや読売新聞の前田さんがフォローする構図が目立った。一作品あたりわずか5分ほどだが、複数のピッグネームに批評される機会はきわめて贅沢で、自分なら何を出してみようかなんてことも考えたが、今のところこういう場に有意義な作品は思いつかない。
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午後からは東川賞受賞作家4人のギャラリートーク。
海外作家賞はブラジルのクラウス・ミッテルドルフさん。ファッション・広告写真家らしく、水中やルーペを通したディストーション、叫ぶモデルのアップなど、イラストっぽい雰囲気の作品。
北海道にゆかりのある作品に送られる特別賞は小幡雄嗣さん。田舎の雪景色、雪中を駆ける馬の群れ、ナイター照明に浮かび上がるスケーター、どうやって撮ったのか不思議な雪の結晶の写真。これらが「二月」というタイトルでまとめられていて好評。
新人作家賞は澤田知子さん。写真新世紀から瞬く間に伊兵衛賞の衝撃的な経歴に、今さら新人賞かとも思われるが、その後の意欲的な活動に対する今再び東川からの応援、なのだそうだ。セルフポートレートを始めたきっかけが聞け、そもそも写真というツールを選ぶ前から、アーティストになろうと思っていた、おばあちゃんになってもセルフポートレートを撮っていると思う、など、明快さが聞いていて気持ちいいが、まだまだ若い作家だけによい意味でいろんな展開があっていいと思う。都写美の笠原さん曰く、もっとも共感できる作品。正直、大道は、仕事として扱う範囲においては理解しているつもりだが、最後のところでわからなくなってしまった。どうして若い人たちがあれほどに熱狂するのか、との言には好感。
国内作家賞は楢橋朝子さん。昔から私にとっては難解なスナップ群。月に2度くらいのペースで撮影に出かけるのだそうだ。「半分起きて半分寝て水に浮かぶ」(畠山談)シリーズは、フリクリフニクラの中の1点からの派生作、都写美での展示を写美の笠原さんと二人で決めたときはまだ3点しかできていない危うい状況だったらしい。撮影のため胴長を履いて海に入っていたら、入水自殺と間違われて騒ぎになったこともあったとか。
午前午後とみっちり写真の話を聞いて、東川を後にした。東京にいたらギャラリートークの参加機会はごまんとあるのに全く行ったことがない。たまには行ってみたらいいかなと思った。
ギャラリーの前の公園で行われていたお祭はすっかり終わって、嘘のように賑わいが消えていた。臨時駐車場となった小学校の校庭は、朝来たときは車でぎっしりだったのに、私の車だけが雨の中ぽつんと取り残されていた。
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