紙芝居ボランティア(ページ8)(会の運営・学校や図書館の現場で)

12 会の運営

① 共通認識をもつ
紙の画面を抜くことで物語が展開されるほんとうの面白さを学び、知っていれば軸がぶれることはないでしょう。研究と実演の現場を大切にし、「紙芝居をする」という共通認識を持ち、合理的に会を運営し、時間や当番を守る努力をします。ただ、現実的には会員が自由になる時間や価値観がバラバラで意思の統一がしづらい様子で、もしかしたらそれが長所かもしれません。みんなで心をあわせることが行き過ぎて束縛になるなら、いっそ個性をつなぎ合わせるパッチワークのような会になるのも選択肢の一つのように思えます。
また、行政に市民参画が進み、お上をあてにしたりされたりでなく、自分たちが情報を集めて楽しみを見つけ社会に還元していく場合が多く、ボランティア感覚についての学びも必要です。
過去の経験者や講師が指導者になり、会員がそれに従うという構図になりやすいですが、時代は移り変わり、会員も聞き手もその講師の教え子ではなく、現代を共に生きる立場では講師と対等なので、講師にすがらず自分で感じたり考えたりする習慣をつけ、現場感覚に沿って知恵を出していきましょう。

② レクリエーションとしてやる
 「レクリエーション研究会」の立場で会を持つなら、福祉を目的にした会であることを自覚して紙芝居を全体の一つのプログラムに入れるのだと思えばよく、そのためには人一倍数多く作品を知る必要があるような気がします。
紙芝居の合間にレクが入ってもいいとの判断もありますが、手遊び少しのつもりが歌い出し、気がついたらレクを通り過ぎて大人の学芸会になってしまう可能性を常に視野に入れておきましょう。現代は目の肥えた人が多いのです。手遊びは、高齢者にとっては、未知の新しい動作を強要し園児のような遊戯をさせられると不快に思う方もあり、聞こえないふりをしてやってくれないので、そういうことをすべて受け止めての実演にすればいいわけです。

13 学校や園、図書館の現場で

① 公共の場で
公共の場は、無料貸しホールとしての場合もありますが、ともに学び、地域還元や貢献する役割もあります。教職などで得た人生経験は、それが閉じられた場所であり、自分の感覚が開かれた場所で通用するかどうか、既得権益と客観視できるか、考えてからのスタートラインだと思います。一方「他人に語るのは初めてだ」という方がとても魅力的に語られるのは、初心者だから「これでいいでしょうか」と客観性を気にして演じられるからです。カラオケハウスのように半分開かれた実演場所があり、そこで練習を兼ねて楽しめればいいのにと思います。
 
② おはなしの出前
 紙芝居ボランティアはまだ経験が浅く、学校での「おはなし会の出前」としてはまだ不適当だと思います。子どもに教育しようとか発表会とかの勘違いも多く、わざわざ地域の人が学校に入る意味がないのです。先生とは違う価値があると自覚をもち、紙芝居は「子ども文化」として子どもと同じ目線で交流するときに使えます。

③ 紙芝居を作る
どうしても立派なものを作るという感覚から抜け切れないのが現実なので、マンガ絵日記を描くような気持ちで入ったら良いでしょう。「子ども文化」は大人に評価されるものでなく、自分が楽しいだけのものです。紙芝居をはがきサイズで作ると比較的短時間で済みますが、みんなの前で実演する楽しみが少なくなります。おはなしを作れない子どもには「前の晩から朝までのことを4枚に描いてみる」とアドバイスするそうです。
子ども手作り紙芝居は貴重な「子ども文化」です。子どもはただ自分のことをがむしゃらに描いていきます。脚本は子どものつぶやき、画は子どもの息遣いで、それは子どもが自ら作った資料として公にすることができ、大人が子どもを理解する手助けになります。なにか無心にしゃべりながら絵に描いていくのは本当に誰にとっても価値あることで、ものの良し悪しは関係がないという気持ちになります。
 

参考資料
『紙芝居 選び方・生かし方』 上地ちづ子・児童図書館研究会(児童図書館研究会)
『紙芝居をつくろう!』坂本一房,堀田穣 (青弓社)
『紙芝居の歴史』 上地ちづ子   (久山社)
『街角の子ども文化』 畑中圭一  (久山社)
『紙芝居大系1~14』(大空社)
『紙芝居のはじまりはじまり』右手和子  (童心社)
『ストーリーテリングと図書館』竹内/編訳 (日本図書館協会)
『えほんのせかいこどものせかい』松岡享子 (日本エディタースクール出版部)
『児童文化』原昌、片岡輝 (建帛社)
『絵芝居』(月刊)(絵芝居研究会)
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