うまかたやまんばを再話してみた

馬方やまんばを語ってみようとあれこれ調べてみたら、長岡市の双書に「サバ売り」というのがありました。オチがおもしろく、これを土台にしてみようと書いてみました。昔話は「中身を抜く」と言われているけれど、サバ売りと鬼ばさの攻防が「代金を払う払わない」という面白さで展開されていて、聞いていても面白いと思いました。小沢俊夫の再話は端正だけど人間らしい揺らぎがないので、語り方や再話で膨らませて人に届けたいと思っています。
この本は『あったてんがのー水沢謙一の昔話の世界』市史双書№29 長岡市史編集委員会/編集、発行/長岡市です。語り手は小野塚タセ(92歳)です。

他に『越後・守門村馬場マスノ昔話集』民話と文学の会/編、発行/民話と文学の会・守門村役場、
『江戸川で聴いた中野ミツさんの昔語り』野村敬子/編、発行/瑞木書房 にもありました。どれも語り手は新潟県の中越地域の方々で、話は似ています。うまかたやまんばとの違いは、馬が足を取られる部分がなく、男が山の中の一軒家に入っていくところから始まるところ、サバの代金を鬼ばさが最後に「部屋の隅や庭にある」などと教えるところです。

サバ売り    

  あったてんがの長岡市史双書29ー水沢謙一の世界ー(長岡市)より石倉が書いてみました。

昔、あったと。一人のサバ売りの男が山道を通っているうちに、日が暮れたと。そうすると、山の向こうにチャカンチャカンと灯りが見えた。その灯りをたどっていったらば、カヤぶきの家が一軒あって、山のばさが一人で火を焚いていた。

「ばさ、ばさ、今夜一晩泊めてもらいたい」サバ売りが言うと、ばさは「おう、とまれとまれ。おまえサバ売りだか。さば一本よこせ」と、サバ売りからサバ一本とって、頭からむしゃむしゃと喰ってしまった。それから「もう一本よこせ」と言う。それもまたむしゃむしゃと食ってな、それからも もう一本もう一本といってサバを取って、みんな食ってしまった。

「ばさ、サバをみんな食ってしもて。銭よこせ」サバ売りがそういうと、ばさは

「なに、サバの銭だと。何言うてるや。サバがないならお前を食うぞ」それでサバ売りは驚いて外へ逃げ出して、山の池のそばの木の上に上がっていった。ばさはおっかない鬼ばさの形になってサバ売りを追っかけてくる。そうして池に映ったサバ売りの影を見て

「サバ売り、ここにいたかあ」と、ザブンと池の中へ飛び込んだ。そうしているうちに、サバ売りは木から降りて逃げて、またばさの家へきて、天井のはりに隠れたと。

そこへ鬼ばさがもどってきて、いろりに火をたき始めた。そうして「やれ、さぶさぶ。火の神様や、甘酒わかそか、辛酒わかそか」というたんで、サバ売りが上から

「甘酒、甘酒」と返事した。鬼ばさは「そうか、火の神様は甘酒をわかせってか」といろりに甘酒のなべをかけて、背中あぶりをしているうちに、コクンコクンと寝てしまった。その間にサバ売りは屋根の内側にあったカヤを一本とってな、甘酒がブクブクわくと、そのカヤををストローのようにして、つつーと飲んでしまった。さて、鬼ばさが目をさまして「はて、甘酒がわいたかな」と見れば、甘酒鍋がカラカラになってひとったれもなかった。

鬼ばさは「おう、火の神様があがらしたんじゃ仕方ねえ。そうせばこんだ、モチを焼いて食おう。白いモチ焼こうか、黒いモチ焼こうか」というと、またサバ売りは「白いモチ白いモチ」と返事した。鬼ばさは「そうか、火の神様は白いモチ焼けってか」と、白いモチをいろりにいっぱい並べて、また背中炙りしながら、コクンコクンとねてしまった。そうすっと、サバ売りはさっきのカヤの先をとんがらかして、ぷーと膨れて焼けたモチをぶすっと差しては引っ張り上げ引っ張り上げして、みんな食ってしまった。そのうち鬼ばさが目を覚まして、「はて、モチが焼けたかな」と見たらば、モチが一つもなかったと。「おお、火の神様がみんなあがらしたんじゃしかたねえ。さて、もうねよう。木のからとに寝ようか、石のからとに寝ようか」と言ったらば、サバ売りが「木のからと、木のからと」と返事した。

鬼ばさは「今夜はさぶいすけ、木のからとだか」と言って、木のからとに入ってねた。そうすると、サバ売りが天井のはりから降りてきて、木のからとにピチンと鍵をかけ、キリで、木のからとにキリキリと穴を開けた。すると鬼ばさは「おう明日は天気だか。キリキリ虫がないてらあ」と言う。

次に、サバ売りが、じんじん沸かしたあっついお湯をキリの穴からつぎ込んだらば、鬼ばさは「おう、ネズミがしょんべんしたか、あっついなあ」と言っていたが、そのうち気がついて騒ぎだした。

「おう、あっちっち、あっちっち、サバ売りゆるしてくれや、銭はなあ、ざしきのすみにあるぞ」そういって、死んでしまったと。これでいちがさけた

 

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