とりあえず、
【今日のラン稽古】スケジュール休です
でした。
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標記の件、そのような題名の記事がTraining Peaksのサイトに掲載されていたので、日本語化しました。原文はこちらです。
ご参考まで。
乳製品を摂取しない五輪メダリスト
by Dotsie Bausch on Training Peaks
Dotsie Bausch氏は、39歳で出場したロンドン五輪で銀メダル(自転車競技:チームパシュート)を獲得したが、それは野菜中心の食生活を営んだことにもよると考えている。本コラムは彼女自身の経験談、そして肉類及び乳製品を省いた食事が運動能力(の向上)に有益である理由を説いたものである。
私は特別な人間ではない。確かに、人生で特別で素晴らしい経験(=ロンドン五輪での銀メダル獲得&非営利団体(”Switch4Good”の代表就任)をさせてもらっているが、それらはあくまでも普通の生活を営む中で積み重ねた選択と行動の結果である。私はケンタッキー州出身で、子供の頃はフライドチキンが好物だった。馬/犬/ハムスター/兎/魚は好きだったが、その他の動物は食糧として摂取していた。それは当たり前のことだった。特定の動物の肉及び乳製品は健康状態の維持/運動能力の向上等に必要だとも信じていたし、私自身もプロ自転車選手であった期間の大半に於いて、その考えは正しいと信じていた。
控えめな始まり
他のプロアスリート達とは異なり、私が自転車競技を始めたのは26歳からである。20歳代の前半、私は重い摂食障害に苦しみ、その後主治医の勧めで自転車に乗り始めた。初めて自転車に乗った時、何かしら自由になった感を覚えた。そして、チャリティー活動として開催されたレースに出場するようになった。私には天賦の才能があったのだろう、向かい風や坂道や荒れた路面に遭っても、前進しようという意欲は衰えなかった。また、好奇心も尽きることが無かった。この自転車生活をどこまで突き詰められるかは私自身にも分からなかったが、逆に言えば突き詰められる迄続けられるという自信はあった。そして私は、ロスアンゼルスの下町でバイクメッセンジャーの仕事に就いた。その職場には男性が約30名所属していたが、女性は私一人だった。彼らは私に曲芸まがいの乗り方を教えてくれたが、私の興味は「自分の脚で何処迄走られるか?」ということであり、それを確かめるべく連日、ロスアンゼルスの周囲を約80km以上走った。その後、私はプロ自転車競技選手になり、10年間、米国ナショナルチームのメンバーとして世界中で戦った。
野菜中心の食生活への転向
ある夜私は、食品産業界における動物の酷い扱いぶりを取り上げたVTRを鑑賞し、その後肉類の摂取を止めることに決めた。その数週間後、今度は酪農業に於ける(動物の)非倫理的な扱いぶりを学習したので、乳製品の摂取も止めることにした。それらの際、私は、「人間として、もうこれ以上牛乳を飲み続けられるだろうか?」と自問自答したことを覚えている。私は現状に甘んじていられない性格である。私にとって現状維持とは、常識/恐怖/凡庸といった”悪の巣窟”そのものである。次に私は、何故アスリート達が、肉/乳類が身体の形成に必要と考えているかを問うた。そして、その問いに対する答えの殆ど全てが「他の人がそう考えているから」であるのに気が付いた。ここに至り私は、以前は私も信じていたその迷信と決別することにした。
五輪への憧れ
プロ自転車競技選手として10年を過ごした時点で、私は上述の考えに至った。そして私は、2012年のロンドン五輪に米国代表として出場することを新たな目標に設定した。トレーナーやコーチの一部は、肉類/乳製品を断つという私の選択に異議を唱えた。彼らは、食事内容を変更することは五輪代表になる機会を失わせかねないと主張した。あぁ、またもや現状維持だ。残念ながら、菜食主義に基づく食事によって、私が五輪代表になる機会が失われるという意見に科学的な根拠を与えた者は誰もいなかった。
私は菜食主義に基づく食事を摂りつつ、トレーニングを継続した。菜食主義に基づく食事に切り替えて以降私が経験したことは、まさに奇跡と言っていいことであり、大変革であった。そしてそれはコーチ達が言っていたことと真逆なことでもあった。私は身体にエネルギーが満ちる感を覚えた。疲労回復に要する時間は劇的に短くなった。ある一定の運動強度でトレーニングを遂行出来る頻度が増えた。私に比べ(かなり)若いチームメートと同じ(か場合によってはそれより速い)ペースで走られるようになり、結果としてトラック部門の米国代表に選ばれた。ロンドン五輪の自転車トラック競技では、英国とオーストラリアが首位を争う一方で、米国は(良くて)5位がいいとこと予想されていたが、結果は米国が銀メダル獲得と万々歳の結果に終わった。私はロンドン五輪で引退したが、メダル獲得者としては史上最年長(40歳の誕生日直前)だった。それまでの約3年間、私は肉類/乳製品を全く摂取していなかった。
もちろん、五輪でメダルを獲得するのには相当なトレーニングをこなしたし、他にも気概や忍耐力も要した。しかし、それらと同じ位、肉類/乳製品を摂らないという食生活も役に立ったと考える。そのような食生活を営まなかったら、トレーニングもこなせなかっただろうし、運動能力も高まらなかっただろう。確かに、ここで述べる話は個人的な体験談に過ぎないし、肉類/乳製品を断つに至った理由は偏った考えかも知れない。しかし、私が挙げた成績は間違いないものである。私は充分に考察もしたし、専門家の意見も聞いた。その結果として、肉類/乳製品を断ったからこそ運動能力が頂点に達したと確信している。決して偶然ではない。
肉類/乳製品を断つことが運動能力の向上に有益な理由
私が学習したことに因ると、乳製品は炎症を引き起こしやすい食品である(1,2,3)。炎症とは、酸化ストレスによって伴い発生する現象である。そして酸化ストレスとは、筋肉が断裂→修復される過程の一部として自然発生するものである。この酸化ストレスによって体内にフリーラジカルが発生し、そのフリーラジカルが筋肉の腫脹/痛みを引き起こす。トレーニングを成功裏に終わらせる鍵は、この酸化ストレス及び炎症を可能な限り減らす方法を知ることである。乳製品は炎症/酸化マーカーを増やすことが知られているので、結果として身体の回復を遅らせうると考えられる(8)。五輪トレーニングセンターでは乳製品の摂取が強く推奨されているが、上記の知識が有れば、アスリートが乳製品を摂取する理由が理解できなくなる。炎症や酸化ストレスを減らす唯一の方法は身体を回復させることであり、体内でより多くの炎症が発生すればそれだけ長い期間休養を余儀なくされる。私は、過剰な炎症に対処する必要が無かったので、より多くの時間をトレーニングに割くことが可能となり、それだけ運動能力は向上した。そしてその結果、私はロンドン五輪でメダルを獲得出来た。このことはトップアスリートのみならず、誰にでも当て嵌まることである。
肉類/乳製品を断つ食生活は、別の理由でも私の運動能力向上に役立ったと思う。植物由来の食品には抗酸化物質を多く含まれている。抗酸化物質はフリーラジカルを消滅させ、炎症を減少させる物質である。しかしながら、乳製品にはこの抗酸化物質が殆ど含まれていない(5)。食生活の中心を抗酸化物質を多く含む食品とすることで、私の身体は炎症にすばやく対応出来るようになり、その結果回復に要する時間は更に短くなった。大局的に見ると、精製度が低い&植物由来の食品中心の食生活では、動物性食品を主体とした典型的な西洋式の食事に比べ、抗酸化物質の量が64倍であるという報告もある(5)。
乳製品には他にも運動能力を抑制する要因が含まれている。例えば、乳製品を摂取すると粘液の生成が促進されるが、それによって呼吸が抑制される。また、乳製品に多く含まれる飽和脂肪酸/トランス脂肪酸は血流を抑制するので、その結果として運動能力を最大限発揮することが抑制される。私自身、アスリートとしては歳をとっている方なので、これらの効果は決して無視し得ないものである(6,7)。
2012年のロンドン五輪から既に約9年が経過したが、私は他のアスリートのように燃え尽きてはいない。私自身まだまだ活動的だと自負しているし、今でもMTBで走ることは大好きである。これは私のスポーツに対する愛情が薄れていないことと共に、身体がまだまだ動くことによると考えている。身体がまだまだ動くのは、肉類/乳製品を断って菜食主義に基づく食生活を営んでいることによるものであろう。
私は、乳製品を断つのは大きな変化(大袈裟に言えば博打に近い)だと考えるが、(それを肯定する)研究結果は動かしようがない事実である。食生活に於いて肉類/乳製品を絶ち、それを同じカロリーの植物性食品に置き換えることで、運動能力は向上すると共に、より長くスポーツを楽しめるようになれる。私が立ち上げたNPO(Switch4Good)では、乳製品を断つことに興味があるアスリートたちの為に様々な情報源を用意している(訳者注:英語です)。まずは Athlete Power Plate を参考に、運動能力を高める為に役立つ食事について学ぶことから始められることを推奨する。そして、普段の食事から乳製品を排除するのは段階的に進めるのが望ましい。最初は、牛乳を豆乳に置き換えるところから始めよう。その次は、ホエイプロテインを大豆プロテインに置き換えてみよう。乳製品を排除するのは、何かを喪失することを意味しない。性能が劣る燃料を最良のものと置き換えることである。
どんな普通の人でも、凄いことを成し遂げられる。それは自らがどのような決断を下すかにかかっている。
【引用文献】
1. Shek LP, Bardina L, Castro R, Sampson HA, Beyer K. Humoral and cellular responses to cow
milk proteins in patients with milk-induced IgE-mediated and non-IgE-mediated disorders. Allergy.
2005 Jul;60(7):912-9.
2. Samraj Annie, Läubli Heinz, Varki Nissi, Varki Ajit. Involvement of a Non-Human Sialic Acid in
Human Cancer. Frontiers in Oncology, 2014; 4:33
3. Dhar C, Sasmal A and Varki A (2019) From “Serum Sickness” to “Xenosialitis”: Past, Present,
and Future Significance of the Non-human Sialic Acid Neu5Gc. Front. Immunol. 10:807.
4. Mozaffarian D, Katan MB, Ascherio A, Stampfer MJ, Willett WC. Trans fatty acids and
cardiovascular disease. N Engl J Med. 2006; 354(15):1601-13. Review.
5. Carlsen MH, Halvorsen BL, Holte K, et al. The total antioxidant content of more than 3100
foods, beverages, spices, herbs and supplements used worldwide. Nutr J. 2010; 9:3
6. Frosh A, Cruz C, Wellsted D, Stephens J. Effect of a dairy diet on nasopharyngeal mucus
secretion. Laryngoscope. 2019 Jan;129(1):13-17.
7. USDA: Fat and Fatty Acid Content of Selected Foods Containing Trans-Fatty Acids’
8. Khor A, Grant R, Tung C, Guest J, Pope B, Morris M, Bilgin A. Postprandial oxidative stress is
increased after a phytonutrient-poor food but not after a kilojoule-matched phytonutrient-rich food.
Nutr Res. 2014 May;34(5):391-400.
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