KANTAROOO Blog

某てれび局のCGデザイナーを引退した かんたろの日々
心にわきおこる興味をお届けします。

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ひとひろSHOP
   『 ひとひろSHOP 』

かんたろオリジナル作品を並べるお店です。
時々開けております。
オリジナル作品や道具の販売をしています。

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おひさまをほしがったハヌマン

2005-05-22 | Book 
おひさまをほしがったハヌマン

作・絵/A・ラマチャンドラン
訳/松居 直
¥840

”おひさまをほしがったハヌマン”という本を知っていますか?
ハヌマンは風の神ワーユの子供。
愛嬌のあるいたずらっ子のハヌマンですがあるとき太陽がとてもほしくなってしまいます
どんどん空にのぼっていって太陽を捕まえようとしますが 太陽も逃げていきます。
大地は太陽によって焼けて地上はもう死滅しそうです
みるに見兼ねて 千の目を持つ象にのったインドラがハヌマンに一撃をくらわせ気絶させ地上を守ります。
風の神の両親はハヌマンが殺された悲しみにくれ 岩屋に隠れてしまいます。
今度は地上に風がなくなり人々は飢餓に苦しみます
これまた大変なことをしたと インドラがハヌマンを蘇らせ、ハヌマンは大人になったら立派な神になるだろうと予言する。
インドのラーマヤーナからのお話です。

ハヌマンとはインドの猿神様です。
現代インド芸術のラマチャンドランさんの色が 強烈で一撃くらいますが 
次第にあなたととって 心地よい衝撃の虜になるでしょう
マンダラなどの宗教画には キチンと色に意味があり 組み合わせもセオリーどおり。
そういう決め事ができる完成度に感心するけど おいらにはしっくりこない色合わせだったりして 時々しょんぼりすることがある
しかし このラマチャンドランさんの色合わせは好きだ。
絵柄はすべて複雑な模様のようで このお話のすべてのムード盛り上げる。
ハヌマンの表情がなんとも愛くるしく好きです。

悲しみのあまり岩屋に閉じこもる両親。
なんだか日本にもアマテラスが岩屋にお隠れになって
ウズメが足をふみならし踊って、アマテラスをひっぱりださせる話しがあるよね。
どこの国が原点なんだかよくわからないけれども どちらも好きだなぁ。

小さい頃よくおとうやんの本棚から インド芸術の本を引っぱり出して見てた(エジプト/ギリシャ/ローマなどの芸術本も見てました)
そのインドの本に壁画か?屏風だったかの写真が何枚も載ってて
クリシュナのお話がいくつも書かれてて見入ったー
超巨大化け物鳥に飲み込まれたクリシュナだったが
口をこじあけ くちばしを裂いて見事にたおしたりする絵をずーっと飽きずに見てたなぁ

お話の題材のラーマヤーナも インドの宗教に深く関わってくるけれど
小さなお話や教訓を絵本にしたら 宗教として敬遠してる人にも意外にたのしい読み物で びっくりするんだろうな
たのしいお話の宝庫なのだ。
きっとみんな食い付いてくるだろうに。

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BOOKLOG おひさまをほしがったハヌマン

クラバート

2005-05-16 | Book 
クラバート

作/オトフリート=プロイスラー
絵/ヘルベルト=ホルツィング
訳/中村 浩三
¥1,680

”クラバート”という本を知っていますか?
『クラバート!水車場に来い!お前の損にはならないから』
不思議なカラスと声の夢に導かれて 孤児クラバートは意を決して水車場へと向かいます
そこはただの水車場ではなく 恐ろしい親方のいる秘密の魔法学校だったのです
水車場にはほかにも11人の生徒がいて みんな働きながら魔法を教えてもらっていました。
最初のうちは自分の受けた幸運に満足したクラバートでしたが、魔法学校にはいろんな規則と過酷な労働、さらには当然のように最愛の仲間の死が待っているのでした。
ただの興味の他は水車場でなんの分別もなかったクラバートですが そのうち愛する者を守るために親方と戦う決心をする というお話です。

ドイツとポーランドに近い地域の古い言い伝えを物語の題材にしてプロイスラーが書いています。
ドイツの民話の最大の魅力は暗さにあるとおもう
文章の暗さではなく ぞくぞくするような次に何か暗がりから現れるような そんなイメージの明暗です その明暗がクラバートでは全開してると思います。
本来人間が持つ興味本意を主人公クラバートが本の中で発揮します
知っちゃまずい事 多くの興味が仇になったり 時には身をたすけたりする。
おいらがもしクラバートだったら
同じように知ろうとするのかしら?
同じようにピンチをきりぬけられるだろうか?
そして同じように 仲間を見つけだしたり 助けたりできるだろうか?
恐れ、おののき、びびりながらも勝ち目は無いとわかっていても
勇敢に立ち向かっていくクラバートをお手本にしたい。
宮崎アニメの”千と千尋の神隠し”でもクラバートからヒントを得たそうですが”ハウルの動く城”にもクラバートのお話が見えかくれすると思う。
どうせなら クラバートで宮崎アニメをつくってほしかったな。

”クラバート”はチェコのアニメ作家カレル・ゼマンによって映画化された作品でもあります
かんたろは このカレル・ゼマンがお気に入りで 原作になっているクラバートを読んでみたいなぁと思ってまして 手に入ってから一気に熟読したんです。
カレル・ゼマンのクラバートも原作にかなり忠実に映画化されています、色合いも暗さもぴか一に良いのですが…
カレル・ゼマンについては またの機会に…

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BOOKLOG クラバート

やっぱりおおかみ

2005-05-10 | Book 
やっぱりおおかみ

作・絵/佐々木マキ
¥840

”やっぱりおおかみ”という本を知っていますか?
1匹だけ残った最後のおおかみが町にやってきて 仲間をさがしますが
ぶたの町はぶたばかり。
うさぎの町はうさぎばかり。
庶民たちは おおかみが町にきたことで 逃げ回ります。軽いパニックです。
家にはカギをかけ おおかみをこわがります。
ただ仲間を探しにきただけなのに おおかみはかなしい気持ちになりますが
それをうけいれる というお話です。

ちいさいころ”こどものとも”で毎月絵本を定期購読していたんですが
この ”やっぱりおおかみ”だいすきでしたね
特に佐々木マキさんの絵がすきでした。
ヨーロッパ調の町並みに 色合いにでる人柄に 小さい頃でもすごく興味をもちましたね

今日たまたま調べものをしていて
佐々木マキさんの写真をみたら おじさんなんですね(びっくり)
30年間 女の方だとおもってました(だまされた!)
佐々木マキさんの本をチラッと調べたら このやっぱりおおかみの表紙が出てきて
もわん、もわんと話を思い出す 思い出す。
しかもまだ販売してるんですね。
今やってる仕事が終わったらぜったい注文して買おうとおもってる一冊です。オススメです。


シュールな”け”の1発絵が連続できます。
このテンポが子供心をぎゅっと握ってはなさない。
もちろん今でも このシュールな


”け”にぞっこんです。

佐々木マキさんの絵本は ほかにも
 ”ふしぎなバスケット”
 ”ムッシュムニエルをごぞんじですか?”
 ”くったのんだわらった” などがあります。
村上春樹とのコラボ本の
 ”羊男のクリスマス”

おいらは幾つになっても佐々木マキさんの絵の虜です。

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てぶくろ

2005-04-28 | Book 
てぶくろ

絵/エウゲーニ・M・ラチョフ
訳/うちだりさこ
¥840

”てぶくろ”という本を知っていますか?
もともとはウクライナの民話で おじいさんが森に入ってうっかり落とした手袋に ねずみ、かえる、うさぎ、きつね、おおかみ…と ぞくぞくとやってきて寒いのでいれてくれよ!と入りたがって てぶくろは徐々に大所帯になっていきます。最後にくままでは入れてくれとやってきて てぶくろは今にもはちきれそう!どうなるどうする動物達 というお話です。

絵は少しダーク調ですがどっしりしていて色合わせに安心感が持てます
表情ゆたかなユーモアたっぷりの動物達がいっぱいでてきます。
絵も細部にいたるまでとてもよく描かれています
またその動物の着ている服が民族衣装で とてもかわいい。
そんなに大きくないはずのてぶくろにどんどん動物がはいってきて はしごがかかったり 下部分に小枝でつくった1階ができたり どんどんカスタマイズされていくのがおもしろいです。
前のページと次ぎのページでどこがカスタマイズされてるか?を交互にみくらべたり。
てぶくろにぬくぬくとおさまっていく動物達のうれしそうなこと。

最後ののっそりぐまが
”入れてくれ”とやってくると
”とんでもない。まんいんです。”
”どうしてもはいるよ”
”しかたない。でも、ほんのはじっこにしてくださいよ”
の部分は 想像して笑ってしまう。
この状態で入りたいといってくる のっそりぐまの強引さがすごいし
でっかいくまをみて ほんのはじっこに…といって入れてしまう先住民もほんとは迷惑に思ってるくせになぁ と心情をくんでみたり
4匹目ぐらいから5匹、6匹、7匹と動物達がどうやってこのてぶくろに入ってるのか?
いったいどれぐらいの大きさのてぶくろなんだろう?とか 妄想&想像してしまう。
自分の想像力をたくましくかりたてるにはとても楽しい絵本です。

最後はあっけなく まるで夢のできごとだったかのような終わり方をするのだけれど
それは読んでのお楽しみ!

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モモ

2005-04-15 | Book 
モモ

作・挿絵/ミヒャエル・エンデ
訳/大島かおり
¥1,785

”モモ”という本を知っていますか?
もじゃもじゃ頭のみなしご少女モモが廃虚に暮らしていました。彼女は黙って話しを聞くだけで
話しをした相手の気持ちをすっきりさせたり、悩みを解消したりできる力をもっていました。
それが彼女の魅力であり、町のみんなは彼女を心の底から求めていました。
しかし”時間銀行”(無駄な時間を貯金できる銀行)ができて 町の人は時間を貯金しだすのです。
今までモモに悩みを聞いてもらっていた人たちは、時間に追いまくられて人が変わっていきます
それをしったモモは友達を助けるため 時間どろぼうと対決する というお話です。

みなさんも御存じの”はてしない物語”(ネバーエンディングストーリ)のミヒャエル・エンデの作品で
素朴な白黒挿絵もエンデ自身がかいてます。
小さい頃は時間がどんなに大切かが分からずに 過ごしてしまったけれど
大きくなってみると 忘れたくないのに忘れてきてしまった記憶や時間の大切さに気付く事があります。
ほんの小さな安堵が 自分にとってどんなに心地の良いものだったのか。
失われてはじめて分かる事もあります。
自分を切り詰めてまで 時間を貯金しようとする人たちはまさに 現代の私達の投影です。
しかし、ホントは 時間どろぼうのセールスマン”灰色の男たち”こそ 毎日電車に乗り、会社に行き 自ら忙しくせかせかと動く おいらたち自身ではないでしょうか?
モモのように黙って話しを聞くだけで相手の悩みを解消してあげられる人になれたら どんなにすばらしいだろう!

欲しいものも買えるし、時間さえあれば あれもできるし これもできる。
今は忙しくてできないだけなんだ。やりたいとは思ってる、やらなくちゃとも思ってる
でも 今は難しいんだ。
そうやって 毎日毎日と戦って ぼろぼろになって
がんばってるけど そんなにがんばってるってわけじゃない気もする。
ふと ひとりになったとき 悲しくて 寂しくて この虚無感はなんなんだろう?
なにが足りないんだろう? そんなかたに是非おすすめです。
ひとつひとつ心の疲れをモモにほぐしてもらいましょ。

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しろいうさぎとくろいうさぎ

2005-04-10 | Book 
しろいうさぎとくろいうさぎ

作・絵/ガース・ウイリアムズ
訳/まつおかきょうこ
¥1,155

”しろいうさぎとくろいうさぎ”という本を知ってますか?
いつも仲良し しろとくろのうさぎが、あるとき いままで考えた事もなかった 悲しい気持ちやおどろいた気持ちになり
自分達のほんとの気持ちに気付きあうというお話です。

ガース・ウイリアムズの絵がとても好きです。
うさぎの柔らかい毛の表現 びっくりした顔 しょんぼりと悲しい顔
頭にかざるたんぽぽのやさしいふんわり感
色数はあんまり使ってませんが 水墨画のようなやわらかな趣きのある手法描かれています

ガース・ウイリアムズといえば他にも
”大草原の小さな家”シリーズの大判本の挿し絵を書いています。
(もともとこの小さな家シリーズのさし絵が好きななんですが) 

ほんとうの気持ちっていったいどんなものなんでしょうかね。
会社や学校などにいるときの自分が ほんとの自分なんでしょうか?
ひとりの時に ほんとの自分になれているんでしょうか?
そんなふうに自分の気持ちに気付く事ってあるんでしょうか?
当たり前が当たり前ではなくなる瞬間は 人生のうちでも時々やってきますが
それは絶望だったり 苦しみだったり ほろ苦い思いでだったり、
しろいうさぎとくろいうさぎのように幸せに気付くばかりではない事も多いけど
人に合わせて、偽って、着飾って、気取って、醜くならずに できるだけシンプルでわかりやすく
喜びも悲しみも自分の気持ちに正直に ずっとずっともっていたいと思うのです。

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シュナの旅

2005-04-06 | Book 
シュナの旅

作・絵/宮崎駿
¥470


”シュナの旅”という本を知ってますか?
貧しい谷の国の王子シュナが、西の彼方に実るという黄金の穀物を手に入れるため旅に出て
いろんな困難や恐ろしい出来事に巻き込まれるお話です。

宮崎駿というと ナウシカ トトロや 千と千尋 ハウル なんかが表に出てきて
イイだのヨクナイだのいろんな批評があるでしょうが
このシュナの旅は すべての話しに共通した所をもっています
前にでてきたお話のように派手さは全然ありません。
人間の根本ってなにか?幸せってなにか?を鋭く突き刺さってくる話しになっています。
全編 宮崎駿の書き下ろし 水彩着色カラー本ですが 絵も暗く少し恐いの。
子供には分からないかもしれません。
ナウシカは ナウシカでお話が深くて好きだけど(アニメはとって付けたような終わり方ですきじゃないけど)
このシュナの旅を非常においらは好き。
お話の基礎はチベットの民話、「犬になった王子」だそうです
ショートストーリ-なので 夜に枕元においといてそっと読んでいます。
おいらとしては是非この話を アニメ化してほしい。
ストーリー良し バランス良し ビジュアル良しなので 爆発的にヒットすると思う。
こういう漫画を宮崎さんにはずっと書いていってもらいたいと願う

余談ですが もののけ姫のヤックルでてきます。
ナウシカにでてくる ドルクの乗り物 毛長牛もでてきます。

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BOOKLOG シュナの旅

やまなし

2005-04-02 | Book 
やまなし

作/宮沢賢治
絵/小林敏也
¥1,470


”やまなし”という本を知ってますか?
川底で暮らすの父と兄と弟のサワガニのお話です。

小学校が始まって他の子がどんどん文字を教え、読み方をちゃんと教わっている時期に
おいらは病気のため学校を欠席してたため 大切な文字の読み書きの授業を全然受けずに、まっさらの状態で小学校の4年ぐらいまできてしまいました。
それは小学校1.2年生の担任にも問題があったのですが
とにかくおいらは授業中ポカーンとしているだけの子でした。
教科書をひらき、そこにのっている文字という記号をノートに書き写す毎日でした。
口ではしゃべれますが じぶんが教科書から写した文字は実はぜんぜん読めなかったのです。
高学年に入っても字を読む事はおろかちゃんとかけさえしなかったので "このこはアホであろう"
と先生はおもっていらっしゃったのだと思います。
授業は先生や他の生徒の教科書朗読を一字一句耳で聞いて全部覚えてしまうので 本人としては別段苦労したという思いはありませんでした ほんとに危機感ゼロの子だったのです
字という概念がまったくないため おいらの耳コピはとても簡単でした。
音楽と同じで 音で全ておぼえるのです。 覚えた音はすべてハーモニーのように、自分の想像力とあいまって簡潔におぼえられたのです。
それだけ おいらがまっさらで幼かったということです

そのころ出会ったのがこの”やまなし”です
朗読をききながら あれやこれやと想像し、静かに場面が移っていく様を音楽のように覚えました。
キラキラした川底の石や 魚を下から見上げるサワガニの様子。
昼のうっとりするような穏やかな時間のなか 鳥がその静寂をやぶり 兄弟は最大の恐怖を味わったり。
夜の闇のなか 静かにサワガニ兄弟が泡の大きさを比べあったりするシーン
突然木から落ちてきたやまなしがしばらくすると川の底にゆっくりおちてきて
良い匂いを発したりする情景を いまも時々思い出します。

あれから 何年も時は流れて 本屋さんでたまたまこの絵本を見つけたとき
小学校の頃想像していた世界をこの絵がすべて表現していてびっくりしました。
おいらが あのとき耳にしていた文学のハーモニーが全てがここにありました。
それぐらい いい絵本です
どうか お子さまがいらっしゃる お父さん お母さん
子供に絵をみせながら読んであげてください。
その子の未来をすばらしいものにし 感性を輝かせる絵とお話だと かんたろは思います。

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ポーランド民話

2005-03-26 | Book 
前回お話した世界の民話の中から、おいらの好きなお話を原文を抜粋しつつ
御紹介しましょう。

世界の民話 -第五巻- 東欧2(ポーランド)より
”いかにしてスザンカは水の精の名付け親になったか”

物語りはオルサ川の近くではじまります…
オルサ川には水の精が昔から住んでいました。
水の精は ときどき、月の明るい晩に、草地の中まではい上がって、花から花へわたり歩いてにおいをかぎ、中をのぞいてくしゃみしたりするのですが。
姿はヒキガエルにそっくりで、頭と顔は小ざるに似ています
鼻はだんご鼻で、指と指のあいだに、あひるのような水かきがあり
着ているものは短い上衣 お腹が出っぱってる それが水の精です。

その川の近くに お百姓クルチェイカが住んでいました。
お百姓はとても金持ちでしたが、同時にまたとても欲ばりでした
お百姓には心がありませんでした 彼の胸にあるのは、心ではなくて、
まっ黒こげの焼けぼっくいでした。
それとは反対に 孤児のスザンカは 甘い蜜のたくさんつまった善い心をもっていて 辛抱ずよい人間でした。
スザンカはお百姓の家で雌牛とガチョウを追う仕事をしていました。
スザンカはお百姓の飼い犬のカロよりも粗末なモノを食べさせられ
粗末な藁袋の寝床しかあたえられませんでした。
それを水の精たちは知っていました。

あるとき 月のきれいな晩に水の精の王様が花から花へにおいをかぎ、いい気持ちでうとうとし、気がつくと もうとっくにお日さまが高い位置にあがっているところでした。
王様は川へ帰れずに泣き出してしまいます ちょうどそこへスザンカあらわれるのです

原文-抜粋---------------------------------------------
スザンカが近くで雌牛に草を食べさせていた。ごぼうの葉の下に、何やら悲しげな声がするので、近くに寄って身をかがめてみると、一匹のとても気味の悪いひきがえるが泣きながら、小さな前足で涙の目をふいていた。
 「どうして泣いているの、ひきがえるくん?」とスザンカがたずねた「おなかでも痛むの?」
 「いや、腹が痛いのではない。困った! ああ困った!」
 「じゃぁ頭痛? 頭が痛いの?」
 「いや、頭が痛いのではない。露がかわいてしまったのだ!」
 「そんなの、なんでもないじゃない?夜になったら、また露がかかるわ!」
 「たしかに。しかし、わしはかえるではない。わしは水の精の王なのだ。だから、川まで行くことができないのだ」
 「どうして? オルサ川はすぐそこよ!」
 「おお、わたしのスザンカ、おまえはまだ知らぬ。われわれ水の精は月の夜に、はげしい露を伝わってしか動けないのだ。露がなくてはおしまいなのだ! 困った、ああ困った!」とまたも悲しみ泣きむせぶ。
 スザンカはやさしくもろい心を持っていたので、あなたがそのようになき悲しむのをとても見ていられない、わたしが手にのせて川へつれてっていってあげるから、それでいいだろう、と言った。
 「ほんとうに手にのせるつもりなのか?」
 「そうよ! どうして?」
 「むかむかしないだろうか?」
 「どうして、むかむかする?」
 「わたしは気味の悪いひきに似ている!」
 スザンカは笑いだした。水の精の王さまをそっと両手にとり、オルサ川へはこんでいった。
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そのあと王様がお礼にダイヤや真珠、宝石なんかをどうか?といっきますが スザンカはこれを断り それよりも王様の国が見たいといいます。
雌牛とガチョウの番を家来にまかせて 水の精の王国に遊びにいくのです…

原文-抜粋---------------------------------------------
王城の中にはいくつもの豪華な広間があって、金やアラバスターや大理石、ダイヤ、銀、また壁かけでかざられていた。王座は金とダイヤで作り上げた精巧なものだった。八方から、静かな美しい音楽がひびき、その楽の音とともに、銀色の月の光が広間に流れこんだ。地上で鳥が飛ぶように、ここでは金色やいろとりどりの色に光る魚が、日光にきらめくように泳ぎまわった。赤むらさきのもいた。どの魚も金色の、広いおうぎ形のひれと尾をなびかせ、光のかげんでは、すばらしい花のように見えた。金色や赤むらさきのきくの花のように。スザンカはよろこびに胸をときめかした。
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王国で水の精の王子の名付け親を頼まれたスザンカはまたもやお礼をなにがいいか?ときかれ
困り果てます。
王様は”では、いじわるなお百姓を川に誘き寄せておぼれさせよう なによっぱらってるときにやれば…”ともちかけますが
スザンカは”ちっともよくない”と抗議します。
王様も困り果ててしまいます。
”主人を川でおぼれさせるのがよくないとならば、せめて、やさしい心のほうびがわりに、金なりダイヤモンドなり、ほしいだけ取るがよい”とまたいいますが
スザンカは”心には心でしか払えない。金もダイヤモンドもいただくわけにいかない”と
頑としてなにもうけとりません。
どうしてお礼を受け取らないのか分からない水の精は学者を呼んでスザンカの言っている意味を分析させます
学者は長い間調べて”心には、ということはつまり、やさしい行いには、やさしい心で、ということはつまりやさしい行いでしか、これに感謝し、むくいることができない、とこう申しましたわけで”と結論をだします。
それで納得した水の精の王様はスザンカとさよならをします
地上に帰るまえに スザンカはある事を思い出します

原文-抜粋---------------------------------------------
「そうそう、わたし、お願いしたいことをいま思いだした!」
 「それこそ言うがよい! 何がほしいかな?」あたりは、けし粒をまいたように静まりかえった。スザンカがどんなお願いをするかと、みんな耳をすましたのだ。スザンカは言った。
 「ねえ、王さま! このオルサ川は毎年岸からあふれて、気の毒な人たちの畑を流してしまうのよ。そういういたずらを、オルサ川がしないようにしてくださらない?これがわたしのお願い!」
 王さまは、そんなお願いを聞こうとは夢にも思わなかったので、またまた耳のうしろを王笏でかいた。この娘は、金やダイヤモンドや、悪いお百姓のこらしめなどは気にもかけず、人をいじめる川をなんとかしてほしい、と言うのである。
 「望むとおりにしよう」。
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地上に帰っていつもの水っぽいスープとからからのパンの夕食後
いつもの藁袋の上でねむります。
次の日の朝
いつもより寝床が固くてぐあいが悪いことに気付きしらべると
藁がすべて黄金になっていました。
これはすべて水の精の心の酬いであり お礼なのでした。
このあと スザンカは遠い国の王子のお妃にもらわれていきますが
お百姓は、スザンカのもらった幸福が自分の事でない事に非常にうらやましくねたましく
じぶんも同じものをもらいたいと願い続けそれから毎日水の精をさがしつづけます。
ある日 王様を発見します。
しかし あまり醜いヒキガエル同様の姿に 手にのせる事ができず ハンカチでつまんで川にほうりなげます。
それでも王様はお礼をあげようというと
お百姓は”スザンカを同じ風にしてほしい”といいます
その夜 お百姓はいつの寝ている長持ち(お百姓の全財産が隠してある入れ物)の上に藁袋をたんまりのせてワクワクして寝ますが あさになってみても 藁袋は藁のまま
長持ちの全財産も藁に変わってしまっていた
どうして藁に変わっていたかというと 心にむくいようにも お百姓はあいにく心を持っていなかった。胸にあるのは一本の焼けぼっくいにすぎなかったからというお話

全部は紹介できませんでしたが
原文には「けし粒をまいたように静まりかえった」ポーランド語風成句。や
『クウィアトゥラ(花もようさん)』も『スロクラ(まだらさん)』も『伯しゃく婦人』も『リャツィアタ(ぶちさん)』雌牛の名前。などポーランド独特の言い回しがふんだんにもりこまれ、非常におもいろい読み物になっています。
王国の中の魚が舞い踊る表現がすばらしいです。
目を閉じるとその情景が容易に想像できてしまうあたり この話のヤマ場ではないでしょうか?
スザンカの藁袋を水の精が心の酬いに黄金に変えてしまうのは それは寝心地わるいだろう 固いし、よけいな事を…と思うのはおいらだけではないはずだ(笑)
水の精の滑稽な姿も”王さまはまたもひどく不思議そうな顔をして、困って。耳のうしろをかきはじめた。”などは 憎めないかわいらしい姿を想像させられる。
こんな可愛いお話がうまれる ポーランドという国がどんなに平和ですばらしいく
人々の心がウイットに富んでいてセンスがいいのがよく分かる作品です。

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BOOKLOG 世界の民話 -第五巻- 東欧2

世界の民話

2005-03-20 | Book 
世界の民話
全25巻
¥1,500
第13回「日本翻訳出版文化賞」受賞



”世界の民話”という本をしっていますか?
おいらはお話が大好きで いろんな民話や神話、伝説なんかを好んで読んでます
ある日、図書館でぶらぶら本を見ていたら この”世界の民話”全25巻がならんで本棚におさまってるのを見つけました。
1巻目はドイツ・スイス 2巻目は南欧 3巻目は北欧… とつづきます
おいらは まだ7巻目までしか読めてないのですが
内容はいろんな例え話しをもじってあったり、教訓があったり、神様の話し、農民の毎日の楽しみ、食べてるモノの話し、その地域に生息している動物の話し、笑い話しなど多彩で
お話のなかに季節と時間がおりこまれた素朴な情景が思いうかぶ物語りがおおいのです。

ドイツやイギリスなんかの民話は結構有名ですが 知らない国の聞いた事もない話しには感銘をうけると同時に イマジネイションがどんどん広がっていきますよ
会社に出勤する電車の中で読んだり 寝る前に読んだりしながら 2週間に1冊のペースで読みすすめていますが、はたして いつになったら全巻よめるんでしょうか(笑)
このまま読み進んでいけば 中近東やアルバニア、コーカサス、エスキモーの民話など たぶん聞いた事もないお話群が おいらが読むのを今か今かと図書館で待ってる(笑)
読み終わって毎回返しにいくときは 次のお話をとてもたのしみにしているのです。

そのなかでもとっても好きなお話があるのですが
その話はあまりにも好きな話だったので もう一回図書館から借りてきてTEXTに起こしてとっとこうとおもうぐらい好き。
このお気に入りの話しは後日、みなさんにお聞かせしますね!