これは言わずと知れた乗鞍の畳平で、標高は2716m。その高さが作る雄大な景観で自転車乗りの聖地と呼ばれます。
この標高日本一の称号もいろいろで、たとえば渋峠は国道の中で日本一。
そして今日行ってきた大弛峠(おおだるみとうげ)は「通り抜け可能な峠道で自家用車が通行可能な舗装道路」という無理やり感のある条件での日本一で、その標高は2360m。渋峠を上回る高さを誇ります。甲州街道の東京・神奈川県境にある大垂水峠(おおたるみとうげ)と名前が似ているので「ヤバいほうのおおだるみ」などとも呼ばれています。
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大弛峠へのアクセスは中央線の塩山駅が便利で、峠まで30km程度しかありません。ただし標高差は2000mに達し、これは3ヤビツに匹敵するプロフィールです。
いつも血を吐く思いで登るヤビツ峠3回分。やべ、帰りたくなってきた。
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コンビニでの補給を終えてしばらくは緩い登りが続きましたが、ぼちぼちと斜度が上がってきました。まだ街中で日差しが強く、オーバーヒートしないように緩々と登っていくしかありません。
塩山は多少標高が高いこともあってか、今の所気温は30度程度。まだ何とかなる範囲です。
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クリスタル感が全くないことに定評のあるクリスタルラインですが、案の定このさき峠に至るまでクリスタルっぽさは微塵もありませんでした。
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山梨は果物の国。斜面で栽培される桃やブドウが名産で、果樹園の中を進んでいきます。
一見平坦に見えますが、既に山裾に差し掛かっており6~7%ほどの登りが続いており、強い日差しの中でのヒルクライムはかなり堪えます。
そろそろ森の中に入りたいのですが。
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塩山駅から10kmほどでようやく森林の中に入り、暑さもだいぶ和らぎました。
このルートは斜度の変化に乏しいのが特徴です。10%オーバーの激坂はほとんどない代わりに平坦や下りも少なく、ただひたすら6%~8%くらいの坂が続くといった印象。
気合を入れないと前に進まないような場所はあまりありませんが、一息入れられるような場所も少ない。延々とそれなりに頑張り続ける必要があり、なかなかメンタルを削られる峠です。
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道中で視界が開けるところはあまりないのですが、中間地点の乙女湖が近くなって見通しのいい場所がぽつぽつありました。奥に見えるのが乙女湖の琴川ダムです。
ここまでかなり長いこと登ってきた気がするのですが、ここでようやく折り返し地点。たった30kmだというのにとにかく長く感じます。
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乙女湖を少し過ぎたところに廃校になった小学校があり、すぐ近くに自販機もあるのでちょっと休憩・・・と行きたかったのですがやたらとアブが多く、ちょっと立ち止まるとすぐに襲い掛かってきます。それも1匹2匹ではないので追い払うのに手いっぱいで、この写真を撮って水を買ったら早々に退散する羽目になりました。
この先、頂上手前までずーっとアブがやたらと多く、登りなのでスピードを出して振り切るのも難しいのでアブを追い払うので手いっぱい。常時10匹くらいにかこまれ、隙を見ては脚に食いつこうとしてくるのだから油断できません。
おかげで登りに集中できず、写真もロクに撮れませんでした。
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峠が近づき樹木が低くなってくるあたりから、ようやくアブが少なくなってきました。おかげでどうにか写真が撮れます。
標高が上がったことで気温やら植生やらアブの生息に不適になってきたのでしょうか。
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峠手前になってくると道路が半ば駐車場のようになっています。2300mまで車で登れるのですから、登山の出発地点として最適なのでしょう。
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延々と続く車列を眺めながら、ようやく峠の駐車場にゴール。いや長かった、苦しかった。
でも一番印象に残ったのはアブだというのはどういうことか。
さてこの峠は駐車場になっており景観は全く無いのですが、ここから登山道を数百m歩くと「夢の庭園」という展望台的なものがあるそうです。せっかくなのでそこまで行ってみましょう。
そのためにSPDシューズで来たんだし!
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夢の庭園までの道は見事なまでの山道。ここは階段が整備されていますが、岩が露出しているところもあってお世辞にも歩きやすいとは言えません。SPD-SLではちょっと厳しそう。
そして15分ほどで夢の庭園に到着しました。
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ヒャッハー!
これは予想以上の眺め。手前にはヒルクライムしてきた道が、はるか彼方に甲府盆地が見えます。
これまでの道中は景観の面では全然ダメと言わざるを得ません。しかし最後の最後でSSR級の絶景が待っていました。
ここで石の上に座ってしばし休憩。登山者ぽい人も何人かいて、この景色をオカズにして弁当を食べる夫婦もいました。
自転車だから弁当と言うわけにもいかないけど、補給食くらい持ってきてここで食べてもよかったかも。きっと一味違ったことでしょう。
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右の方にある白っぽい所が峠の駐車場で、こうしてみるとずいぶん登ってきました。
ここ大弛峠は日本一の峠を名乗っています。とはいえ激坂と言えるような急坂は無いし、高低差では乗鞍に、景色の良さでは渋峠に及ばない。そんな微妙な日本一ですが、それでもスケール感において引けは取りません。
あとはアブさえいなけりゃねぇ。
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