なでしこは自転車でかなりの長距離を走ったり、初キャンプで重い荷物をもって平然と歩いたり、恵まれたフィジカルの持ち主であることが作中で描かれていました。
が、この数字は尋常ではありません。
以前は読み飛ばしていましたが、ちょっと分析してみることにしました。
ゆるキャン△ 13巻 (まんがタイムKRコミックス)
まず目につくのは最高出力43PSです。
PSというのは馬力(正確には仏馬力)の単位で、日本の計量法で
と定められています。
ということは、なでしこの最大パワーは
ということになり・・・ちょっとまて。なんだこの数字は。
これは最高出力ですからスプリント時の瞬間的なパワーでしょうけれど、それにしたって人間の出せる数字とは思えません。
ロードレース界のトップスプリンター、最近だとフィリプセンとかメルリールあたりでしょうか、その最大出力が1500Wくらいと聞きますので、さらにその20倍以上という恐るべき破壊力を持っていることになります。
続きまして、トルク45.3N・mを見てみましょう。
トルクというのは回転軸に対する力の大きさで、力とその距離の積で求められます。
↓の画像がわかりやすいでしょう。
クランクの長さを170mm、つまり0.17mとすると、なでしこがペダルにかけている力は
で求めることができるので、
ということになります。
ここで先ほど求めた最大出力が問題になります。
ワットというのは仕事率の単位ですが、
と定義づけられます。
したがって、なでしこのペダルを回す速度は
であり、クランク長170mmなのでケイデンスは
ということになります。
ケイデンス6667ですか、パワーだけでなくこちらも大概な数字で、オートバイのエンジンかよと言いたくなるスペックです。
ここまで凄いと彼女が本気を出すと自転車がブッ壊れるんじゃないかと心配になりますが、そこさえクリアできるなら日本人初のツールドフランス総合優勝・・・いやいや全21ステージを全部勝ち、山岳賞もポイント賞もかっさらう完全制覇ですら造作もないことでしょう。
と思ったのですが、そうは問屋が卸しません。
問題になるのは彼女の燃費の悪さです。燃料はみのぶまんじゅう、そしてその消費率は20m/個。ツールのステージを150kmとすると、みのぶまんじゅう7500個が必要になる計算です。
なでしこは健啖家ではありますが、いくらなんでもこの数はキツイ。走りながら食べるとしても、走破時間を4時間とすれば2秒に1個のペースで食べ続ける必要があります。みのぶまんじゅうは小さめではありますが、胃腸での消化がどう考えても追いつきません。
これを2秒に1個・・・無理!
日本人初、しかも女子高生によるツール制覇は儚い夢であったようです。
それでは、ここで彼女の燃費をレオパルト2と比較してみます。
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レオパルト2はドイツの主力戦車で、ロシアのウクライナ侵攻関連のニュースで頻繁に紹介されていたので聞き覚えのある方も多いかと思います。
レオパルト2の動力はディーゼルエンジン、燃料積載量は1160リットル、行動距離は500km。
ということは、1km走るのに必要な燃料は軽油2.32リットルです。
軽油は現在1リットル140円くらいなので、1km走るのに325円かかるということになります。
一方でなでしこはというと、1km走るのに必要なみのぶまんじゅうは50個です。1個70円なので、3500円・・・
各務原なでしこさんは、戦車より大食いな女子高生ということになりました。
しかし考えてみると、原油を精製しただけの軽油と、職人さんが丹精込めて作っているまんじゅうの値段を比較すること自体ナンセンスであるような気がしてきました。
そこで公正を期すため、両者の熱量を比べてみたいと思います。
まず軽油の熱量は1リットルあたり9087kcalですから、レオパルト2が1km走るのに消費する熱量は21082kcal。
一方、みのぶまんじゅうは1個当たり90kcalらしいので、なでしこが消費する50個のカロリーは4500kcal。
さすがのなでしこも、60tもあるレオパルト2には及ばないようです。
先ほど戦車より大食いな女子高生と言いましたが、これは誤りでした。
戦車より金のかかる女子高生に訂正させていただきます。