KAWORUの山日記~今日も雲の上!

百名山や日本アルプスの旅の記録

北八ヶ岳から蓼科山~森と湖と山上のピアニスト 2022.7.31-8.3 [高見石2,225m・双子山2,223m・蓼科山2,531m・車山1,925m]

2022-08-18 12:02:37 | 上信越の山

今回は苔に囲まれた湖畔の山小屋と、生演奏が聴ける山頂小屋をつなぐ「森と湖のコース」を歩く。最終日は霧ケ峰を散策して蓼科温泉に泊まる少しゆるめの山旅。

茅野駅で昼食をすませて、アルピコ交通麦草峠線に乗り込む。標高2,090mの白駒池入口でバスを降りて湖畔までわずか15分。あたりは緑色の世界で、苔むした癒しの空間が広がる。シラビソやコメツガと相性がいいのか、倒木の苔に発芽して森ができていくらしい。白駒池周辺は観光客も多い。少し歩くと「もののけの森」がある。

時間があるので、主稜線の高見石まで往復する。金子貴俊さんが番組で紹介していたヒカリゴケを探しながら、40分ほどで高見石小屋。その隣に巨大な石積みの高見石。てっぺんで展望が開け、眼下に白駒池と森が見下ろせる。急に雨雲が近づいて夕立となり、高見石小屋で雨宿り。この時期は決まった時刻に夕立がやってくるらしい。

湖畔の白駒荘は新館と本館が並び、本館個室は割安で泊まれる。薄暗い照明と、歩くときしむ床板には時代を感じる。夕食は山小屋とは思えないほど豪華で、自家菜園の高原野菜と牛肉の鍋。創業百周年だそうで、4代目小屋主の挨拶があった。室内は綺麗でスタッフもテキパキして気持ちがいい。山小屋だが風呂もある。消灯後に雷雨。

山小屋前の湖畔でご来光を見る。湖面から立ちのぼる霧が幻想的だ。今日は麦草峠から雨池と双子池を経由して、北八ヶ岳北端の蓼科山をめざすロングコース。出発の準備をしていると「熊がガケから落ちたらしい」という声が聞こえてきた。そう言えば熊鈴を持った人が何人か…。まあ、聞かなかったことにして先を急ごう。

あたりは、ひときわ森が深く、倒木や切り株を苔が覆いつくしている。すれ違う人もいない静かな道。分岐の道標に、うそのくち集落とある。まるでむかし話に迷い込んだような不思議な村名だ。突然空が明るく開けると雨池に出た。この先も木の根と倒木の道。カラ川橋を渡り双子池までしばらく林道を進むが、炎天下の林道歩きはつらい。

双子池で昼食をとり、ササ原を進むと蓼科山登山口の大河原峠へ。山頂までいくつかルートがあるが、ここからが高度差が最も少ない。山頂まで400mを登る。峠の山小屋は廃業しているのか近づけない。北八ヶ岳の山小屋は20近くあるが、個性的な山小屋が多く、日帰りコースでも山小屋泊で登る人が多い。

将軍平からは岩の急登。岩場で息を切らしていると「今から山頂ですか?大変ですね」と声をかけられて、一気に疲れてしまった。励ますつもりだったのだろうが逆効果ですよ。人気の山なので登山者が多い。振り向くと結構高度感がある。男性が「高所恐怖症だよ、おっかないよ」とつぶやきながら追い越して行った。彼は何しに山頂へ?

やがて傾斜が緩くなると山頂部。蓼科山頂ヒュッテは小さいながらピアノの山小屋として有名で、スタッフによるピアノの生演奏がある。いつもお客にどうやって運んだのか聞かれるので「私がかついで上げた」と答えることにしているらしい。先日、調律が終わったばかりだというが、ここまで登ってくる調律師は大変だ。

部屋にはコタツと薪ストーブ。大きな空間を占めているのがETONEの巨大スピーカーと真空管アンプ、マランツのCDデッキ。CD持ってきましたかと聞かれたが、自分のCDがこの音響設備ではどう聴こえるのだろう。山小屋周辺にはヒメネズミを目当てにオコジョが現れるとか。絶滅危惧種なので、会えたらラッキー。

夕食時には「木漏れ日の中で」「千と千尋の、あの夏へ」のピアノ演奏があった。山上の素敵なディナータイム。今夜も消灯後に雷雨。

朝の目覚めはモーツァルト。近くの最高点でご来光を眺める。気温12度。スタッフが石丸謙二郎さんお勧めのフォトスポットを案内してくれた。直径百mほどの平らな山頂部は岩がゴロゴロ。これ全部溶岩。白馬乗鞍岳に似ている。中央部がへこんでいるのは火口の名残か。ジャムになるガンコウランの実を採ってもらったが、まだ酸っぱい。

目の前には浅間山。遠く御岳、槍・穂高岳、昨年登った鹿島槍ヶ岳まで一望できる。八ヶ岳に隠され富士山は見えない。下山は将軍平まで戻り、七合目登山口までは倒木だらけの道。さらにゴンドラで蓼科牧場に下る。ここからバスで霧ケ峰高原の車山へ。リフトで楽々と山頂を征服後、バスで蓼科温泉・滝の湯で山の疲れをいやす。

北八ヶ岳のど真ん中でバスを降りたら標高2千m!ここをスタート地点にしない手はない。ピークは目指さずアップダウンをさけて、森と湖と百名山をめぐりたい。あれこれ考えるうち今回のコースになった。北八ヶ岳は登山口が多く多彩なコースが組めるし、温泉のある山小屋も多いので、色んな楽しみ方がある。ぜひまた訪れたい。

霧ケ峰のスカイテラスに立つと、八ヶ岳から蓼科山までワンショットで収まる。

【コース】白駒池入口…高見石…白駒荘(泊)…麦草峠…雨池…双子池…双子山…大河原峠…将軍平…蓼科山・蓼科山頂ヒュッテ(泊)…将軍平…七合目登山口…御泉水自然公園駅

 

【公式サイト】北八ヶ岳 白駒荘 ~ 白駒池畔に建つ唯一の宿

【公式サイト】蓼科山頂ヒュッテ ~ 八ヶ岳連峰最北端、蓼科山の山頂にたたずむ小さな山小屋です


笹ヶ峰から火打山 2018.8.11-13 [火打山2,462m]

2019-01-06 11:13:54 | 上信越の山


今年の夏は新潟県妙高連山の最高峰、火打山をめざす。初日はJRで名古屋、長野を乗り継ぎ、妙高高原へ。ここからバスで池の平温泉へ行き、宿なごみに宿泊。初日から温泉はありがたい。道沿いはアジサイの最盛期で、ウグイスの鳴き声も聞こえてきた。夕方から雨が。標高が800mなので涼しい。近くの温泉で火事があったようで、夜中にサイレンが鳴り響いた。





登山バスで標高1,310mの笹ヶ峰へ。広大な草原には牧場やキャンプ場が広がる。ここは火打山と妙高山の登山口で、小さな門をくぐると緩やかな木道が続く。今日は高谷池ヒュッテまで9㎞の行程。ブナ林の道は森林浴ができて心地よい。黒沢橋は渓流が美しい。河原に下りて水の補給にちょうどいい。しばらく進むと十二曲りと呼ばれ傾斜がきつくなる。12回コースが曲がるが、意外と短く20分で登り詰めて休憩。ここから先が稜線までの最大の急坂となる。大きな岩に手をかけながら、かなり登りづらい。



傾斜が緩くなってしばらくで尾根道になり、富士見平と呼ばれる分岐に出る。ここで高谷池方面と黒沢池方面の道に分かれる。左の高谷池への道を進む。ここから先は標高2千mの水平道。やがて左手に三角屋根の高谷池ヒュッテと湿原が見えてきた。お昼にヒュッテ到着。標高2,105m。まだ早いが、宿泊を申し込む。改築工事が終わったばかりで、ホールは真新しく、トイレは水洗。ただ、公営施設のためか機能重視の感じがする。





ここで軽装になり火打山を目指す。山頂まで4㎞。高谷池は森の中の高層湿原で、木道が山頂方面まで延びている。少し歩いて振り返ると、三角屋根のヒュッテと湿原が北欧の風景のようで美しい。高山植物の最盛期は7月なので、花はもう少ない。秋は草紅葉が美しいらしい。岩の道を登り、一段高い台地に出る。ここは天狗の庭と呼ばれ、メルヘンの風景が展開する。さらに稜線の急坂を登るとライチョウ平。ライチョウ生息の北限で、運がよければ出会えるらしい。ベンチがあり、ここで休息。





ここから先さらに急坂。天気が悪いので山頂は見えないが予想外の登りにかなり疲れる。突然、標高2,462mの山頂に到着した。1時間ほど滞在して雲が晴れるのを待った。北に日本海、西に白馬連峰が望めるはずだったが、焼山方面と天狗池の眺望が見えただけで、360度のパノラマとはいかなかった。登りでは気づかなかった風景を写真に収め、時間をかけて下山。途中、正面に特徴的な山容の妙高山が雲間から姿を見せた。





夕食、朝食ともに5時半というのは山小屋にしては早い。夕食はカレーとハヤシライス。ライスを皿の中心にし、左右にそれぞれ取り分けるのが通のやり方らしい。8時消灯、だが完全消灯が9時なので発電機がうるさくて眠れない。



5時前から出発準備の登山者がいて、目が覚めた。朝食後にゆっくりくつろいでいたら、皆出発してしまって、私たちが最終組になってしまった。今日は笹ヶ峰まで15㎞を下るだけ。時間が十分あるので、茶臼山の北を黒沢池方面へ回って下山することにする。左手は日本海や糸魚川の町並みかも知れない。途中で雨が降ったりやんだり。1時間足らずで右手に黒沢池の巨大な高層湿原が現れた。黒沢池ヒュッテはドーム型の珍しい山小屋だ。ここで、昼食を兼ねた休憩をとる。





雨が本降りとなったが、妙高山をめざす登山者が何組かいる。私たちは黒沢池を経て下山する。雨は一向に収まらず、雷鳴がとどろき始めた。池塘が広がり晴れていえば美しい風景だろう。1時間足らずで高谷池からの道と合流して、笹ヶ峰へ下る道となる。雨の中、急坂で何度か転倒しかけた。やがて高度を下げるに従い雨が上がった。岩の急坂を経て十二曲りを下り黒沢橋で休憩。子供たちの集団が登ってくるのとすれ違った。山上は雨なのに火打山に登るのだろうか。この先は快適な木道が登山口まで続く。



近くの明星荘でそばを食べ、また降り出した雨の中、バスを待つ。黒沢池ヒュッテから妙高山をめざしていた登山者が、登頂をあきらめて下山してきた。雷鳴がとどろく中の登山は危険だ。この先、バスで妙高高原駅へ戻り、ホテルの送迎バスで赤倉温泉の赤倉ホテルへ。湯につかり、2日間の山の疲れを癒す。3日目は長野で善光寺に参詣し、直行バスで新大阪に向かう。