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鉄道事業のプロセス

2020-04-09 21:16:00 | 分析・観察
僕の趣味の一つに、「私の履歴書」(日経新聞社)を読むことがあって、デジタル版で読めるものも、古本で過去の履歴書も、一部は著者自身による拡張版も読んできている。
この中で、「小林一三」という名が色々な業界の方々の履歴書に登場する。(戦前に共に働いたエピソードから、家の近所に家があって何度かあがった話まで)

この人自身も自叙伝を出しているのだが、知る人ぞ知る阪急阪神グループの創業者であり、鉄道界のパイオニアの1人である。
鉄道事業は、実際の鉄道会社の有価証券報告書をみると多角化されているので「何をもって鉄道事業というのか」というところから迷うと思う。けれどもそれは小林一三の時代からそうなのだ。
「沿線で住宅地として最も適当な土地を仮に一坪一円で買う、50万坪買うとすれば開業後一坪について2円50銭利益があるとして、毎半期5万坪売って12万5千円もうかる…(中略)…そういう副業を当初から考えて、電車がもうからなくとも、この点で株主を安心せしむること」(逸翁自叙伝・小林一三の回顧録)を、阪急電鉄の前身の会社設立前の話し合いで述べているのである。
副業の収益を当てにして始まった鉄道事業は、周辺開発の収益も含めて考えるのが妥当だと思える。
そう考えたとき、鉄道事業のプロセスは以下の通りだ。
①資本を集めて鉄道の予定地と周辺の土地を買い集める
②鉄道を通して沿道の不動産開発を行う
③運輸代金と不動産収益で利益を得る
④給与や維持管理等の費用を払う
⑤株主還元・鉄道の再投資・不動産開発投資を行う
ここで、運輸代金は鉄道路線によっては独占状態になるため、官庁に独占状態でも正当に運営していることを示さなければならない。(国交省のサイト
疑問になるのは不動産開発で儲けたら「企業体力があるから運賃を下げなさい」となるのかどうかだが、これについては同サイトで鉄道設置の原価と乗員数をもとに計算することがルールとして定められている。
技術革新で人の作業が減り、省エネになるにつれて横並びで下がっていくことが予測される。

ところで小林一三の設立した阪急阪神ホールディングスでは、2018年度の営業利益が約1150億円あるうち、都市交通は約450億円である。
都市交通は、売上(すなわち運賃)が約2400億円だ。設備の維持や働く人のお給料に1950億円、株主に450億円という配分になる。業界別平均給与をみてもあまり高額になっていないのは、配分にも説得力があるのだといえる(ネット上のサイト)。裏を返せばそれだけ鉄道監督は利益を抑えているのだといえる。

ここで例えば改善して給与を高めるとすると、鉄道事業の利益を維持しつつ、利益率を高めうる周辺事業に傾斜しなければならない。資金循環のプロセスを、少しずつ鉄道以外に寄せていくのだ。利益の固定される鉄道事業が技術革新を繰り返してきた歴史を思うと、利益追及より志で運営されていると思うので、利益を最大化する考えでの意思決定を望まないかもしれないが…。

以上から鉄道事業のプロセスは、利益を考えるなら周辺事業シフトで改善されるが、そうするかどうかは各社の思惑というのが現時点でわかることだ。

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