総合商社がウォーレン・バフェット氏に投資されたことが一時期話題であったが、バフェットの経営理念と総合商社のそれには違いが存在する。
企業に投資する際の前提が異なるのだ。
バフェットはバークシャー・ハサウェイという持株会社の中の、ガイコという保険会社を通じて多くの株式投資を行う。
保有する会社はアップル、ワシントンポスト、マスターカード、コカコーラなどで、買う前提は優れた経営陣によって、魅力的な業界の事業が行われていることだ。そのため購入した企業に人を送り込むことはほとんどなく(自ら取締役になったりはしている)、買ったままの形で経営を委ねている。経営陣を誉め、「ほとんど口出ししない」と株主への手紙で述べているほどだ。
「彼らは我々と出会うずっと前から経営のスターだったのであり、我々の出来る主な支援は彼らの邪魔をしないことである」(『株主への手紙』ウォーレン・バフェット著)
総合商社は全く異なる。
優れた経営人材を抱えているということを強みとしており、魅力的なビジネスには会社の買収や設立で積極的に参入していき、買収した企業には人材を送り込んでトップから経営を舵取りしていく。
例えば三菱商事が子会社としたローソンは取締役がほとんど三菱商事出身者となり、経営を完全に親会社主導で行っていることがみてとれる。(ウェブのまとめサイト)
経営が困難な状態にある企業にも人材を積極的に送り込んで立て直そうと努力する。例えば千代田化工建設は、27人の人材を一挙に送り込んで立て直しに動いている。(日経記事)
成長することに関する考え方、企業戦略の違いは明らかである。
もし自らが買収される立場なら、バフェットの方が良いと思うのではないか。総合商社に買い取られ、経営権を握られ、出世が見通せないと感じてしまったら、きっと日々の業務に対するオーナーシップは失うだろう。
セブンイレブンとローソン、ファミリーマートで一日の売上が異なることは広く知られている。(セブンイレブンが高い)
単品管理による店頭商品の最適化などを考え出した鈴木敏文という名経営者の存在もあるのかもしれないが、そうした理論が明らかになった今も差がついていることの説明をどう捉えるべきなのか。
戦略コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーは従業員のモチベーションを企業の業績を決める重要なポイントであると考えている。(ハーバード・ビジネス・レビューの記事)
「自分のものだと思うからがんばる」という理論の根拠は日々の感覚からも理解が出来る。
企業買収の際の人事配置が与えるオーナーシップへの影響について、投資家は考える必要があるのではないかと思う。
「レポートバンク」で出しているレポートの一覧。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます