いけいけ芝居探検隊

芝居を見に行ってみようと思う。
…さりとて、なにを見に行こうといったあてはないのだが、最近、なぜか急に観劇欲が沸いてきた。おそらくこれは、時期的なものと関係があるのだろう。

こう見えても、実は昔、芝居をやっていた。高校生の頃、名もない高校の普通の教室をぶち抜いた部室で、しょっぱい汗をとばしていた。発表会で近隣の高校のホールへ出向き、緞帳が上がった瞬間に差し込んできたシーリングとピンスポットのまぶしさに、頭が真っ白になったものだった。
こちらは弱小演劇部だったから、発表会も地区大会も、「学芸会」レベルのそれでしかなかったのだが、これが県大会へ進もうものなら、場内の熱気が違っていた。みんな狙うは関東大会っていう猛者ばっかりだったから、裏方のお手伝いとして県大会に携わっていても、熱気で飲み込まれていた。その県大会が、だいたい深秋を迎える今くらいの時期に行われている。高校二年の時は、県大会の裏方を一手に束ねる県大会実行委員長なるものも経験したことがあり、毎年この時期になると、青春の忘れ形見とでも表現すればいいのか、あの頃の記憶が甦ってくるのだ。
高校を卒業した後も、一年浪人したあげく専門学校に通いながらもなんだかんだと演劇とはきっぱり足を洗えぬ生活が続き、友人の主宰するお笑いユニットに参加して稲毛ＳＡＴＹでバカやったり、池袋の小劇場で芝居を打ったりしていたが、大学卒業と同時に、当たり前だが皆足を洗ってゆき、俺も例外ではなく９９．９％足を洗った生活を送っている。
本当は１００％足を洗ったと言えれば良いのかも知れないが、わずか０．１％でも残っているのは、あの頃培った横のつながり。そのつながりも今やほとんど無いに等しいが、悲しいかな「あいつが交通事故で死んだ」とかいう連絡を受けるところに、やっぱり無意識のうちに横のつながりが出来ているのだなと実感する。
あの頃、地区大会で一緒につるんでいた同期も、一人は交通事故で天寿を全うし、一人は現役でプロの俳優としてがんばっているし、一人は親の会社を譲り受けたかなんだかで会社社長としてネットにアフォ面を晒しているし（笑）、一人はマリーンズファンでは知らないものはいない「Mari-chak」という、応援歌着メロサイトの管理人兼プログラマーとして活躍している。１０年以上のつきあいだからなあ。彼とは。
あの頃、一番光っていた奴が、今でも舞台、映画、声優と活躍しているのだが、彼が客演するお芝居が、今日、銀座の時事通信ホールで行われるそうで、こっそり行ってみようかな。彼とは昨年四月、地区大会で一緒に遊んでいた奴が交通事故で亡くなったお葬式で８年ぶりかで再会し、今度芝居を必ず見に行くからといって別れたのだが、口約束は果たせず仕舞いだった。

結局、１００％足を洗うのは無理そうだなあ。