NGS後の世界

NGSが普及したあとの世界がどうなるのか、診断業界の変化を中心として情報発信をしていきたいと考えています。

”防疫”という目的に求められる検査とは何か

2020-07-13 20:47:00 | 日記

https://blog.goo.ne.jp/kevery/e/60e70663c9d8565037bd854f3524897c

”コロナウイルス:紙でPCR?を読んで考えたこと”の続きとなります。

感染症の検査は今まで、診断(治療)、疫学の二つの目的がありました。これに、最近の議論は防疫の役割を

求められています。この検査に求められる仕様(スペック)は誰にも分らないので、アニマルスピリッツあふれる

米国ベンチャーが積極的に取り組んでいるのだろうという話です。

で、わからないなりに、求められる検査を自分なりに考えてみました。

 

「防疫のために求められる検査」

・その人が感染しているかどうかはどうでもよい。その人が他人に移すかどうか → スプレッダーかどうか?

・とにかくコスト。安く、安く、安く。そして、簡単に結果がわかる。

・10人まとめて(プールして)検査もあり。

例えば、3万人のコンサートの場合を考える。

ガムを参加者に食べさせる。30人から回収したガムを試験管にいれて、こんな感じで核酸増幅。

https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2020/06/200622.html

目視判定。要請がでた30人を呼び出し、再測定。

3万人ならば、1000個のチューブで事足ります。一人一人の感染を判断するには感度が足りなくても、

異様にウイルス量が多い、スーパースプレッダーなら検出できるかも、と思っています。


コロナウイルス:紙でPCR?を読んで考えたこと

2020-07-13 20:17:00 | 日記
COVID-19 パンディミックは、紙ベースの分子診断(DNAを用いた診断)を可能にするのか?
 
GenomeWebからの記事となります。
 
COVID-19の影響で、FDAが緊急の利用許諾(EUA: Emergency Use Authorization) を積極的に活用しております。この勢いに乗り、紙ベースの簡易検査を実用化することができるのか、各ベンチャーの取り組みを紹介しております。
 
まず、ベンチャーがEUAをどうみているのか? ある技術者のコメントです。
“EUAは今までになくもっとも効率的な枠組みです。皆が、このドアが閉まる前に商品を世に出そうとしています”。 
 
まさしく、バスに乗り遅れるなです。
EUAバブルが終わる前に、ベンチャーはなんとか世にものを送り出し、実績を残したいと考えているのでしょう。
 
次に、対象技術(紙をベースとしたDNA増幅/診断)のメリットがまとめられておりました。
 
・他の微小流体を用いた検査と比較して安価。大量生産が容易で、製造コストが劇的に安い。
・特別な器具・装置がいらない。
・紙が液を吸う機能がすごい。液を動かすのに、ポンプや電子回路がいらない。
 
安さと簡便さが売りの技術です。
従来は発展途上国を対象にしていたものが、現状のCOVID-19パンデミックで、
先進国のマーケットを意識しはじめているのです。
 
記事中では、複数のベンチャーの取り組みが紹介されていますが、技術の詳細も記載されておらず
退屈なので省略します。しかし、この記事を読んで考えたことが二つあったので、この記事を書こうと
思いました。
 
“私が考えたこと”を記載する前にこの技術(紙をベースとした核酸診断)に対する私の考えをしめします。
 
・紙でPCRとか実施する意味がよくわからない。普通のチューブでなんでだめなの?
・紙ベース検査の先輩、イムノクロマトにコスト・性能で勝てるのだろうか。
・(イムノクロマトに対して)簡便さ・安さ・性能で勝てる気がしない。
 
イムノクロマトってなに?という人は以下の記事を参照ください。
すでに、富士レビオが良い商品を販売しています。
 
で、次が、考えたことです。
 
①安さが第一の技術にベンチャーが取り組む必然性はない。でも、これだけ各社取り組むには(彼らは馬鹿ではないので)、なにかあるんだろう。なにがあるんだろう?
 
②従来の感染症の検査の目的は、①診断のため(治療のため)、②疫学調査のため、の二つでした。しかし、ながら最近は攻めのPCR検査などといって、防疫の観点が議論されている。
防疫という目的を達するための検査に要求されることが誰もわかっていない。
 
アメリカのベンチャーの強みは多様性と生存競争です。なんか、FDAは意図的にEUAでマーケットの参入を容易にし、多様性を確保しています。次は、生存競争で、どのようなコンセプトがいきのこるのでしょうか。
個人的には、紙なんかじゃなくて、塩野義製薬のがいいんじゃないかと思います。
 塩野義、EUAとってアメリカで戦ってくれないかしら?
https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2020/06/200622.html
 
 
 

Covid-19の勝ち組: Luminex社が2Qの売り上げ前年比30%up, 110 M USDに

2020-07-12 17:48:00 | 日記

各社の4‐6期の決算が出始めております。Covid-19の勝ち組Luminex社を紹介したいと思います。

7/8のプレスリリースより

https://investor.luminexcorp.com/news-releases/news-release-details/luminex-corporation-pre-release-2nd-quarter-2020-revenue

・分子診断(PCR関連)の売り上げが前年同期比二倍の$65M USD
 Luminexの試薬(MDxアッセイ)の売り上げが大きく増加
 170台のARISEシステムを販売

・ライセンスビジネス(xMAP関連)が35M USDで5%の低下

LUMINEXを聞いたことがある人がいたら、PCRよりもたんぱく質のマルチプレックス測定を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか? このビジネスは、xMAPビジネスとして他メーカーにライセンスしており、現在ではライセンスビジネスとして取り扱われているようです。これは古くからある測定装置(プラットフォーム)のですが、今でも人気のある装置です。

複数のタンパク質を一度に測定したい(マルチプレックス測定をしたい)という研究者にとっては、いまだに第一選択の技術なのではないのでしょうか。

xMAPの普及度

・17,000台以上の装置が普及宇

・50,000報の査読付き論文

・65のパートナーから1,300以上のキットが発売されている。

しかしながら、COVID -19の影響でアカデミアの研究需要が低下し、ビジネスでは5%の減収となってしまったようです。

 

一方で、コロナのチャンスをxMAPビジネスにも活かそうとしています。

https://finance.yahoo.com/news/luminex-boosts-product-portfolio-xmap-132801060.html

xMAPにCovid-19の抗体検査を開発して、抗体検査の承認を取ろうとしているようです。

マルチプレックスでのFDA承認というのはいまだないと思いますが(あったらすみません)、実績から考えてもLuminexであれば妥当な気がします。

*表題の画像は、Luminexのホームページより引用。

 

 

 


Covid-19の血漿療法の注目企業 ADMA biologics

2020-07-11 18:04:51 | 日記

Covid-19の新規感染者がまた増えてきました。感染者数が増えてくると、やはり治療法が気になってきます。

そこで、ワクチン、特効薬とは異なるアプローチで治療する血漿療法とその注目企業を紹介したいと思います。

血漿療法というのは感染症では古くから治療法です。感染から回復した人の血液を重症患者に注射(輸血)すれば、

ウイルス・細菌と戦えるというものです。これは、漫画・アニメでもよくあるコンセプトです。

実用化するにはいろいろとクリアしなければ課題が多そうな技術というのも、コンセプトからしてうかがいいしれます。

まず初めに、この血漿療法に取り組んでいる、ADMA biologics社の5/21のプレスリリースを紹介します。

https://www.admabiologics.com/investors/press-releases/detail/470/adma-biologics-commences-collection-of-covid-19-plasma-from

"本日、ADMA biocenter にて、Covid-19から回復した患者から血漿の採取を開始します。ADMA biologicsはヒトの血漿から免疫不全患者に必要な製剤を開発・生産する企業です。このような(COVID-19のような)非常事態において、ADMA biologicsはこのパンデミックに立ち向かう、新たなチャレンジを開始します。"

治療法は多ければ多いほどいいわけで、回復した人の血液から素晴らしい製剤が開発できたら、これは素晴らしいことです。また、この企業はNASDAQに上場もしております。株も上がるのではないかというスケベ心もでてきます。以下が、最近の売り上げと利益のグラフとなります。

(yahoo finance より)

すごいですね。売上が30億円相当に対して、営業利益ー50億円相当となっております。30円売り上げを上げるのに80円使っているということで、まっとうな企業ではありません。

当然、リスクはありますので、以下の記事がYahoo financeに掲載されていました

Is ADMA Biologics (NASDAQ:ADMA) A Risky Investment?

https://finance.yahoo.com/news/adma-biologics-nasdaq-adma-risky-141312512.html

当然、普通に利益を上げている会社と比べればリスクが低いわけはありませんが、手元にキャッシュを五億円ほどもっていて、当分は(どれだけ持つかはわかりませんが)大丈夫そうとのことです。

7月6日には新しい施設のオープンもアナウンスしています。

https://www.admabiologics.com/investors/press-releases/detail/473/adma-biologics-opens-its-newest-adma-biocenters-plasma

これから利益が倍々ゲームで増えていけばいいのでしょうが、、、、。

株を買うのが難しい企業であるのは間違いありません。

 


ネイティブアメリカンとポリネシアンは800年前に接触していたかもしれない。

2020-07-10 20:45:34 | 日記

 

https://www.genomeweb.com/microarrays-multiplexing/native-americans-polynesians-contact-800-years-ago-genomic-study-indicates?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=GWDN%20Wed%20PM%202020-07-08&utm_term=GW%20Daily%20News%20Bulletin#.XwZa5smCjmQ

ゲノムウエブからの記事となります。

 

南アメリカの原住民と、ポリネシアの原住民はコロンブス到着以前に、すでに接触していたかもしれないと、

800人のゲノム解析から示唆をされたとのことです。

 

NGSはガンの診断分野だけでなく、様々な分野に適応されていますが、人類の進化を探る領域はとっても面白いですよね。 Whole genome analysisが最も力を発揮しそうな領域ですし。

 

ポリネシアの住民のなかには、ヨーロッパ人に期限をもつ領域が複数ありますが、同時にアメリカ原住民に起源をもつ領域が2つみつかったとのことです。一つは、残念ながら?ヨーロッパ人がチリに入植したさいに持ち込まれたもの。

他の一つはより古く、ヨーロッパ人を介さずに直接、持ち込まれたのではないかとのことです。

 

アメリカ原住民同士の接触を考えると、他の文化的なつながり、たとえばスイートポテトの発音がkumalaとcumalのように似ていること、

と整合性がとれるそうです。モデルでは、ポリネシア人の島への定住がはじまった1200AD頃に接触があったと推定されるそうです。

 

考古学的発見、言語学的な発見、そしてゲノム解析により人類の歴史が明らかになっていくのは、本当に興味深いです。