NGS後の世界

NGSが普及したあとの世界がどうなるのか、診断業界の変化を中心として情報発信をしていきたいと考えています。

バイオジェンがアデュカヌマブ;aducanumabをFDAに申請

2020-07-09 20:00:00 | 日記
https://www.fiercebiotech.com/biotech/a-test-for-hahn-s-fda-biogen-submits-controversial-alzheimer-s-drug-aducanumab

バイオジェンがアデュカヌマブ;aducanumabをFDAに本日、申請したとのことです。
デュカヌマブとは、アルツハイマー型認知症の根本治療を実現する、抗体医薬品です。
第3相の臨床試験をしていましたが、2019年有効性が確認されないとして、試験を中止した
薬剤となります。ところが、再度解析すると、高投与群では有用性が確認され、再度申請するとバイオジェンがアナウンスしました。
再申請の時期は5月ごろと言われていましたが延期、もしかして深刻な問題が発生して申請自体が無理なのではないかと邪推もされましたが、
本日、無事に?申請したとのことです。

はじめに、そもそもなんで、臨床試験が中止となり、そのごなんで再申請ができたのかFierebiotechの記事をもとに経緯を振り返ってみましょう。
アデュカヌマブはEMERGE, ENGAGEと呼ばれる二つの臨床試験が実施されていました。EMERGE試験において、アデュカヌマブの高投与群は、プラセボ群と比較して大きな認知機能の改善が見られました。一方で、ENGAGEにおいて投与群はプラセボ群と比較して認知機能の悪化が見られてしまいました。
そして、有用性がないとして、2019年3月に、本試験は中止となりました。
しかし、8ヶ月後、解析に誤りがあったとしてbiogenは、再申請をアナウンスしました。

この申請を受けて、各アナリストの見方が記事で紹介されています。

・2019年12月にFDAは中枢神経系の部門をアルツハイマーなどを含む編成認知症とそれ以外に部門編成を行なった。今回の再申請は、この動きと密接に関わっている。
・従来の基準であれば、絶対に認可されるようなものではない。FDAがどこまで基準をDiverseできるかにかかっている。
・いろいろあるが、私はこの薬が認可されることを確信している。
・認可されることは確実ではない。30%位ではないか?
・もし、バイオジェンが追試をするとしたら株価は急激に下がっていただろう。再試験するのと認可を取るのでは後者は数倍難しい。よって、認可は取れない。

結局、アナリストの意見は様々で、どうなるかはわかりません。
そこで、私の考えというか、希望を書かせていただきます。

アルツハイマー型の認知症は、アミロイド班の沈着が主な原因とされる認知症です。このアミロイド班の沈着が抑制されているとデータが明らかに示すのであれば、
認可されても良いのではないでしょうか。
そして、沈着が抑制されていることは、データに基づき証明できるのではないかと考えられています。
従来は、具体的な効果、この場合では認知機能の低下の抑制が重要な評価指標となるのですが、この指標で明確な差が見られなくても薬剤として承認することは
今後のアルツハイマー病との戦いにおいて価値があるのではないかと考えています。
どうなるか、分かりません。続きが出ましたら、このブログで紹介したいと思います。


FDAがBDのCOVID-19検査キットに警告

2020-07-08 20:14:00 | 日記
https://www.massdevice.com/fda-warns-of-false-positives-with-certain-covid-19-tests-from-bd/

MassDeviceからの記事になります。
FDAがBeckton Dickinsonに対して、COVID-19の遺伝子検査の品質に問題があるとして、警告(Warning)を発しました。
Beckon Dickinson 社の試薬を用いて測定すると、偽陽性(誤ってCovid-19に感染していると判断してしまう確率)が3%程度とのことです。
今後は、検査ラボなどの関係者には、BDの試薬で要請が出ても、他社の検査で確認するなど、慎重な運用を要求するとのことです。

感染症分野で、偽陽性3%はやはりちょっと多いかなと思います。HBV, HCVなどの有名な?感染症での偽陽性ではコンマ%のオーダーが求められます。
ここで、3%はやはりCovidといえども今の段階では許容されないのでしょう。

緊急事態であったので、従来の対外診断用医薬品(IVD)の概念を大きく覆すような形で、FDAは緊急使用を認めました(EUA)。
そこから、3ヶ月程度たって、PDCAサイクルのCheckを確実に実行するのは安心感を与えます。
もし、自分がBDで働いていたらと思うと、ブルブルとしますが、ユーザーの立場でしたら、頼もしくて合理的ですよね。
COVIDも1周回って、2周目、各メーカーの品質勝負のフェーズに移ってきた気がします。



COVID−19の勝ち組・負け組の企業

2020-07-07 20:33:00 | 日記

以下の表は、GenomeWebからの引用となります。19年の12月の株価から20年の6月末のまでに、bio-tech系の企業の
株価の増減を示した一覧となります。記事中でも、触れられていますがCovid-19 Pandemicを使って躍進した企業、
あまりビジネスチャンスを掴めなかかった企業が一目瞭然です。

一番は、GenMark Diagnostics で206%伸び(これはつまり3倍です)、2番はQuidel で198%、3番はMeridian Bioscience で138%
となっております。GenMark Diagnostic, Meridian Bioscienceはあまりよく知りません。いつか触れたいと思いますが、
今回はQuidel社に触れたいと思います。




https://ir.quidel.com/news/news-release-details/2020/Quidel-Announces-Preliminary-Revenue-for-Second-Quarter-2020/default.aspx


Quidel社は7/6に、2Qの利益に関してアナンスを実施しました。

なんでも、2Qの売上は、200M USD(200億円)を見込んでおり、これは前年同期比の86%増だそうです。

増収の主な部分は、COVID関連で、分子診断とイムノクロマトの検査とのことです。


イムノクロマト検査と言ってイメージはわきますか? 濾紙の端にコーヒを垂らすと水が毛細管現象によりロシの中に広がっていきます(濡れたところが広がっているとも言えます)。

すると、コーヒの元となる茶色の色素がバンドみたいなものを形成してくっきり見えるという科学の実験を覚えているでしょうか?

イムノクロマトはこの原理を利用して、簡単に”見つけたいもの”=COVI-19の抗原を分離、検出することができるのです。

PCRやELISAとは原理が異なり高感度の検出はできませんが、特別な装置も要らず、何よりも簡便なので一定の需要があるのでしょう。

このビジネスチャンスをうまく使って、増収、プラットフォームの普及につなげたのは、本当に凄いと思います。






FDAがインフルエンザと新型ウイルスのマルチプレックス検査に対してEUAを付与

2020-07-06 20:45:00 | 日記
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/coronavirus-covid-19-update-fda-authorizes-additional-covid-19-combination-diagnostic-test-ahead-flu

FDAがCDCに対してインフルエンザA,B と、COVID19のマルチプレックスのPCR検査に対して緊急使用許可(Emergency use authorization)を与えました。
冬に向かって、インフルエンザとCOVIDの流行に備えた措置となります。

複数の項目を一回の測定で同時に測定できることをマルチプレックスアッセイと言います。一回の測定で一つの項目を測定することをシングルプレックスアッセイとなります。この原理はPCRなので、PCRのプライマーに付いている蛍光色素を複数用いることでマルチプレックスを実現します。
冬になると、インフルエンザの流行時期を迎えるので、目の前の患者がインフルエンザなのかCOVIDなのか知る事は重要になります。
CDCのEUA承認は3例目で、biofireなどが既にEUA承認をとっているとのこと。

マーケットのニーズを捉えたキットになりそうな気がします。

ただ、今は、COVIDが特別に扱われているため、検査が重要となりますが、2−3年後、何か型判別して(COVIDかインフルエンザか?)有用なことあるの?
みたいな議論がありそうな気もします。マルチプレックスのテストで2倍の検査量が取れたらメーカーとしては嬉しい限りですが、、、、




Invitae 社とArcherDxが、癌の遺伝子診断分野の強化のため統合

2020-07-05 20:58:00 | 日記

最初に両社になじめがない方のため、各社の概要を説明します。
Invitae: 医療分野における遺伝子解析分野のリーディングカンパニー。ここ2−3年は倍々の成長を続けており、従業員は1,000人程度。NY証券取引所に上場。
ArcherDx: 固形がんの融合遺伝子を検査するためのキットを発売。遺伝子検査をより一層普及するため、従来の一極集中型から、各ラボで実施できるようにことを目標に掲げる。

Sean George, Ph.D Inivatae CEOコメント
最初から、Invitaeのゴールは、世界中の遺伝子検査を一つのプラットフォームに統合し、患者の遺伝情報を一貫して治療のメインストリームで活用できるようにすること。このゴールに向けて、新しい一歩を踏み出した。

Jason Myers ArcherDx CEOコメント
ArcherDXとInvitaeは、ゲノム情報により治療が変わるという基本的な信念を持つ。両者の統合で、Precision oncology, 診断、治療法の最適化、モニタリングのあらゆる分野で、主導的な役割を果たすことに興奮している。Arched DxはPrecision Oncologyをローカルな環境でも使えるよう、大衆化(デモクラット)させるために設立された。STRATAFIDE、PCMの技術により、この目的を達成し、45 billion USDのマーケットを見込む。Invitaeと協力することで、癌以外の分野においても活動し、ヘルスケアの進化に貢献して行きたい。

この分野で、注目株の2社の合併なので、どのように展開していくのか、気になるところです。「まー、どうせ成功するんでしょうね」、という感じです。
そんなことよりも、アメリカ、スタートアップ界で使われる”デモクラット”は何か、崇高な響きがある単語です。ですが、うまく訳せないですよね。どうでもいいですが。

Invitae社の買収条件
キャッシュ325M USD, 株等含め、総額1.4billion USD(マイルストン払含む) の買収。お金持ってますよね、、、、