「けやぐの道草横丁」

身のまわりの自然と工芸、街あるきと川柳や歌への視点
「けやぐ」とは、友だち、仲間、親友といった意味あいの津軽ことばです

#29.ちょっと一服(2)南部鉄器鋳鉄鍋「右腕」くんで「石焼き芋」に挑戦!

2014年03月03日 | ちょっと一服
  


  鋳鉄鍋「右腕くん」がカレー作りの達人であることは、小ブログ(#25.南部鉄器カレー鍋 「右腕」くん)で紹介しましたが、以前からずっと心残りになっていることがありました。
  カレーソースは鋳鉄鍋を使うととても静かに楽に作れるのですが、少量を作るときには、一般的なプレス板金鍋でも手をかければできるわけです。
  「右腕くん」は「キッチンオーブン」といわれるタイプの鍋の仲間ですから、高温・耐熱調理対応本来のレシピでもっと男を挙げてもらいたいものと考えていました。
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  このところ少々はまり気味の「板橋・仲宿商店街」を区役所方面から巡ると、八百屋さんが大小4・5軒、有名スーパーが2軒、さまざまな四季色の野菜で眼を楽しませてくれます。
  その中で四季を通じて眼を引くのが、紅紫色のサツマイモ。
  小腹が眼を覚ますとき用に、野菜籠に欠かさないようにし、カボチャやジャガイモなどとともにときどき蒸し器で蒸して「蒸かし芋」、「蒸し野菜」として食してきました。
  そこで、たまには焼き芋も食べたいなと、ホームベーカリー(パン焼き器)の焼き芋機能でも試してみましたが、水分の飛び過ぎ、皮が硬くなりすぎて、いかんとも制御不能の感ありかなという印象。
  というわけで、そうだ!「右腕くん」には「石焼き芋」ができそうだ!と考えました。
  子供のころの記憶では、ピィーピィーとホイッスルを鳴らしながらやってきた「イーシヤァーキイモー…」屋さんは、軽トラの荷台に加工したドラム缶を横にした「窯」で薪を燃料にしていて、釜の中はインゲン豆のように丸く磨耗した、褐色で艶々とした小砂利で満たされていました。(現在では荷台で生火を炊くのは違法かもしれません。)
  現在は、ネットでも「石焼き用の石」は普通に出回っていて、高価でもないのでつい発注してみようと思いました。
  ところが、一歩踏みとどまって「石の廃棄」について調べてみると、都会では「産業廃棄物」扱いとなり、業者に依頼し費用をかけて捨ててもらわなくてはならないことが判りました。
  通常の「燃えないゴミ」では受け付けられず、川や海に捨てに行くというわけにもいきません。
  数日間考えて出てきたのは、「アルミホイル/tin [ aluminum ] foil」を丸めて「石」の代わりができないかというアイデアでした。
  金属などの「熱伝導率」について調べてみると、大きいほうから、銀/Ag=420,銅/Cu=398,金/Au=320 と同様、「アルミニウム/Al=236」とあり、鉄/Fe=84,ガラス= 1,水/H2O=0.6,空気=0.0241 に比べると桁違いに大きいことが判りました。
  小石代わりのアルミ球は鍋の中の余分な空気を押しのけ、その温度を効率よく高めることができ、使用後はすぐに冷め、非常に軽く、「燃えないゴミ」として捨てることができます。
  いわば、アルミの「熱しやすく、冷めやすい性格」が利用できるのではないかと考えたわけです。
  そこで、夜な夜なアルミホイルを千切っては丸め、千切っては丸めたのがこの画像。▼


  丸めながら「小さな子のいるご家庭でも楽しくできそう」などと思っていました。
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  サツマイモ/薩摩芋・甘藷・唐芋;Ipomoea batatas;Sweet potato/は、ヒルガオ科サツマイモ属の蔓性多年草の塊根(養分を蓄えて肥大した根)です。同属に、アサガオ/朝顔;Ipomoea nil;Morning glory/などがあります。
  熱帯アメリカの原産で、スペイン・ポルトガルから東南アジアに導入され、フィリピンから中国を経て1597年に宮古島へ、17世紀の初めに琉球、九州、その後八丈島、本州と伝わったとされています。
  なお、ニュージーランドへは10世紀頃に伝播するなど、ポリネシアでは広く栽培されていたため、古代ポリネシア人はヨーロッパ人の来航前に、南米までの航海を行っていたのではないかという話には興味深いものがあります。
  サツマイモといえば青木昆陽/あおきこんよう;甘藷先生;1698-1769/が普及に努めたことで有名です。
  青木昆陽以前にサツマイモ栽培法を伝えた人たちがいたという話が方々に伝わっているようですが、最初かどうかはともかく、江戸時代にすでに青木昆陽の名声が取り沙汰されていたことは間違いないということです。
  江戸・日本橋の魚屋に生まれた無類の読書家・勉強好きが、友人の紹介で南町奉行・大岡越前守忠相/1677-1752/に取り立てられ、8代将軍・徳川吉宗の命を受けて甘藷の育成栽培の普及に成功し、数々の飢饉から人々を救い、幕臣となったという一種のシンデレラ・ストーリー=立志伝が、いわゆる「大岡政談」と相まって江戸っ子の自慢話となったようです。
  江戸幕府がサツマイモの試作を行った場所は、小石川薬園/小石川植物園/、下総国千葉郡馬加村/千葉市花見川区幕張/、上総国山辺郡不動堂村/千葉県山武郡九十九里町/の3カ所。現在もそれぞれに記念碑や神社があるようです。
  私の街あるきのひとつのルート上にもある「小石川植物園/東京大学大学院理学系研究科附属植物園」には、「甘藷試作跡」と無骨な文字で刻まれた石碑があります。▼


  サツマイモらしく紅色系の岩石でできていて、その骨太でごつごつした岩石塊をじっと見つめていると、たくましいサツマイモの生命力が感じられるようです。
  大正10年/1921/に建てられ、黒澤映画「赤ひげ」で有名な「小石川養生所」の井戸跡手前のヒノキの木陰にひっそりと鎮座しています。
  初春にはいろいろなサクラの花が咲く原っぱが尽きる左奥で、大にぎわいとは対照的に寂しそうに見えます。

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  さて、本日も鋳鉄鍋「右腕くん」で焼き芋をしてみましょう。
  素材のサツマイモですが、最近の東京の店頭にはベニアズマ/紅あずま/が圧倒的、ときどき鹿児島・種子島のアンノウイモ/安納芋/が、まれに徳島のナルトキントキ/鳴門金時/がお出ましのように思います。
  日本におけるサツマイモ生産は、鹿児島、茨城、千葉、宮崎、徳島がトップ5県。
  語源であり、焼酎で名高い鹿児島は全国の4割を、またこの5県で全国の8割を生産しているということです。(2005年)
  まず、アルミ球を鍋の底に1層分敷き詰めます。
  そこに、今日は手ごろなサイズを「仲宿商店街」でチョイスしてきて水洗いした「ベニアズマ」2本を安置します。
  そのすき間を素材と鍋肌が接触しないようにアルミ球を埋め込んでいきます。<トップ画像▲>
  そのうえを満遍なくアルミ球で覆いつくし、蓋が持ちあがらないようピッタリと押し付けることが肝心です。
  「キッチンオーブン」の密閉性は身と蓋の間の水(素材から蒸発した)が保つのです。
  これだけで準備OK! 中火で約1時間。じっと我慢の子になります。
  当初はときどき蓋を開け、竹串を挿してようすを見たりしましたが、それは No Good!
  アルミは「熱しやすく冷めやすい」ので、せっかく貯めた熱を一気に逃がしてしまう愚行だと反省。
  鍋の前に立ち、鼻へ手うちわで熱い上昇気流を扇ぎ寄せると、ほのかに焼き芋の匂いがしてきます。
  その匂いの甘さが増して少々焦げくさいかな?くらいが Best!
  「アチアチッ」と興奮しながら指で持ち上げて開き割ると、ホクホクの湯気が立つ典型的な甘い甘い焼き芋。▼



▲ お気に入りのうつわは「益子焼」の七寸皿。
植物由来の色違いの釉薬を、
流し掛け、はけ掛け、筒描きにより施している。
農産物の一次調理品にピッタリの風情のお皿。
作者不詳。

  熱気流がかなり甘くて焦げ臭が強いと、相当「糖化(?)」が進んで、形が崩れやすくなり、アルミ球の熱が下がってから、両手で取り出してお皿に乗せ、スプーンでケーキのようにすくわないと食べられないくらい、半透明でドロドロな餡コ状態になります。これがまた絶品!
  逆に甘さも焦げ臭も少なめな気流の場合は、「蒸かし芋」に似た歯ざわり感のある美味さ。
  これはこれで美味いのですが、これだと蒸し器で処理したのと同じことになるように思います。
  作業後のアルミ球は数分でかなり冷めてきます。
  何度でも使えますから、念のためレジ袋より発火点の高い紙袋に入れて保存します。
  サツマイモの糖分が一部のアルミ球に焼きつくので、目立ってきたら笊にあけザッと水洗いして天日で乾燥させます。
  球のシワシワに入り込みすすぎがたいへんですから、洗剤は使わないようにします。
  球の黒さが気になってきたら1個ずつ卒業してもらい、燃えないゴミです。
  アルミ球はいくらでもまたすぐ作れます。

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  最近はたいていのスーパーの入口付近で焼きたての「焼き芋」が売られるようになりました。
  そのためか、以前は街に流れてきた「イーシヤァーキイモー…」の拡声器の声は聞かれなくなりました。
  冬の風物詩といわれた「石焼き芋」の屋台や軽トラの担い手は、青森からの人が多いと聞いたことがあります。
  「出稼ぎ」というニュースもほとんど聞かれなくなりました。
  実態はどのようになっているのでしょうか…。
  あの大震災、原発事故から満3年が経とうとしています。
  今日の素材「ベニアズマ」2本入りの小分けビニル袋には、「茨城県玉造有機野菜組合」とプリントされた小紙片が入っていました。
  曰く「 …安全でおいしい野菜は、私達の目標であり、自信です。自然にやさしいさつまいも作りは、手間・時間はかかりますが、一人一人の両手で作り出すさつまいもを消費者の皆さんに喜んで食べてもらえる事が、私達の願いです。 生産者 青木英雄 」と。
  可能な限り、消費者との絆を大切にしたいと考え、実行している生産者の方の食品を求め、ささやかながらも応援しながら、くらしを慎ましく楽しんでいこうと思っています。



焼き芋の絆にふれて寒が過ぎ  蝉坊



《 関連ブログ 》

● けやぐ柳会「月刊けやぐ」電子版
会員の投句作品と互選句の掲示板。
http://blog.goo.ne.jp/keyagu0123
● ただの蚤助「けやぐの広場」
川柳と音楽、映画フリークの独り言。
http://blog.goo.ne.jp/keyagu575


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