東日本大震災の被災地三陸から江戸の桜を観たいというかくしゃくとした義母と美しい義姉を、満開の大枝垂れ桜で有名な駒込・六義園に案内したのは、4月の初めでした。
「では休憩しましょう」と茶店前の縁台に近づくと、そばの径40cmほどの大木の根元一帯にころころと黒く丸いものがたくさん落ちていました。
その幹には「イスノキ」というプレートが巻かれていて、それまで幾度となく訪れその表示を見て . . . 本文を読む
街あるきで心動かされる手しごとに出会う場所はさまざまです。
当世風に挙げれば、ミュージアムショップ、アンティークショップ、ショップカフェ、リサイクルショップ、フリーマーケット…など、最近のマスメディアの生活感の希薄なネーミングの多いこと。
閉塞的な実生活からの逃避心を煽っているかのようです。
さて、わが家で「エビ丼」と呼ばれ日用に供しているドンブリとの出会いは、東京・北区十 . . . 本文を読む
30年以上前、信州・松本の中央民芸ショールームで居並ぶ民芸家具のなか、英国風のチェストの上に置かれていたカップ&ソーサー。
伝統的な和陶の気遣い感のある味とは違い、無口な静けさがあり骨太で大胆なろくろ捌きに欧米風の趣が感じられました。
表示カードには「益子焼」と書かれてあっただけ、残念ながら作り手は現在も不明ですが、おそらく「民芸」に深い造詣を持ちイギリスあたりで修行したことの . . . 本文を読む
わが家の鉄瓶「なぎさ」くんを紹介します。
黒く底光りのする鋳鉄肌の美しさと存在感。
わが家にやってきて四半世紀以上。
でも当初からそのほとんどは不遇をかこつ状況でした。その機能をステンレスケトルに奪われ、仕事らしいことといえば、この間6・7回にわたり南部鉄器の本場・盛岡の学びやへ伝統的工芸品の標本として連れて行かれたことぐらいだったからです。
そこで、この春からのかくも . . . 本文を読む
「工芸は里山の一滴」というイメージに最も近いのが漆器です。
落葉広葉樹、ウルシ(漆:Toxicodendron vernicifluum)の樹脂を塗料とするうつわ。
この使えば使うほど美しくなるものを、毎日の生活に供しているのは世界で日本だけです。
もちろんこのことだけを根拠に普遍的なことはいえません。
なかでもこのことを特徴的に示していると思われるのは、日本の伝統的な . . . 本文を読む
伝統工芸の本当のよさとは何なのだろうか、次代を担う若者たちへどのように呼びかけることが最も適切なのかと、長い間自問自答し続けてきました。
日本の「伝統工芸」というものへ、「伝統文化」という観点からアプローチすると、「アカデミズム」的なこと…しきたり、作法、ならわし、格式、うんちくなどなど…が立ちはだかり、毎日のくらしからかけ離れたものとして認識してしまいがちです。
確かにこうした . . . 本文を読む