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冬のソナタに恋をして

転校生 高校生③

 


ユジンは学校にむけて降る坂を一気に駆け降りた。ギリギリセーフか、と門をくぐったとたん、
「チョンユジン‼️」
カガメル(ゴリラ)先生が仁王立ちしていた。ユジンはしょんぼりしながら、同じく遅刻した親友のチンスクが並ぶ遅刻者の列に並んだ。春川第一高校では、遅刻した男子生徒は腕立て伏せ、女子生徒は膝をついて、ウサギみたいに両手を上げた姿勢でお説教されるのが恒例になっている。ユジンはゴリラのいかつい顔を恨めしげに見ながら口を尖らした。

「今日は変な奴に会っちゃって。」
すると、ゴリラが
「こらっ、お前、今何時だと思ってる💢」と怒鳴る声がした。後ろを振り返ると、あの男子生徒が悠々と歩いて来るのが見えた。ゴリラが怒っているのに、全く気にする素振りもなかった。あいつ、タバコは吸ってるし、全く動じないしいったい何者?ユジンは不満げに男子生徒を睨みつけるのだった。

朝のホームルームではお調子者のヨングクが前に立たされて、反省文を読んでいた。担任のゴリラは指導棒を持ちながら、生徒たちを睨みつけている。これはいつものクラスの光景だった。そのとき、転校生がクラスにやってきた。ユジンはその転校生を見て驚いた。それは今朝一緒にバスに乗った男子生徒だったからだ。彼はカンジュンサンという名前で、ソウルの名門校である科学高校から転校してきたらしい。クラスメイトたちはそのルックスと頭の良さにざわめいていた。ゴリラは学級委員長のキムサンヒョクに面倒を見るように言って、チュンサンを席に着かせた。その時にサンヒョクを見るチュンサンの瞳がギロリと光ったのを誰も気がつかなかった。

ホームルームが終わると、チュンサンはざわめきの中に独りぼっちで座っていた。ユジンは彼が気になって仕方なかったが、ちらちらとみるだけにとどめておいた。友達はチュンサンが数学オリンピアードで優勝したとかなんとか騒いでいる。すると、チェリンが「カンジュンサンは私がもらった!」と自信満々で彼の席にあいさつに行った。その次は優等生のキムサンヒョクも部活動を紹介するために行ったけど、、、二人とも撃沈して帰ってきたようだった。チェリンはプライドが傷つけられてぷりぷりと怒っていたし、サンヒョクは彼の非友好的な態度に不思議がっていた。僕、何かした?と言わんばかりだった。それほど、チュンサンは冷たい態度をとったらしかった。

突然チュンサンが席を立って廊下に出てしまったので、ユジンはチュンサンに部活動を聞こうと後を追った。チュンサンはユジンに対しては、冷たい態度はとらなかったが、からかうような視線で見つめていた。それどころか、「学校ではねないのか」とか、「科学高校から来たからってなんで科学部に入らなくちゃいけないんだ。本業と趣味が一緒の人間なんているのか」とか失礼な発言を連発してきた。結局なぜだかわからないけれど、「キムサンヒョクがいるから」という理由で放送部に入部することを決めた。ユジンは私も放送部だ、と言い忘れたまま、チュンサンの後姿を見つめていた。ユジンの後ろでサンヒョクも目を真ん丸くして見送っていた。
 

その日の昼休み、放送部の仲間が集まって、放送を始めようとした。ところが、なんとスイッチが入らずに放送ができなくなったのだった。ヨングクとチェリンはお互いに罪を擦り付け合っているし、いるメンバーではどうにも解決できずに大騒ぎだった。するとそこにチュンサンがやってきて、スイッチをさわり始めた。するとあっという間にスイッチは直ってしまった。ただのコンセントの差し間違いだったようなのだが、チェリンに至っては目がハートになってしまっていた。チュンサンが放送部の仲間の信頼を勝ち得た瞬間だった。

サンヒョクとユジンはいつものように一緒に帰っていた。ユジンはチュンサンがサンヒョクを意識していることが気になっていた。掃除の時間もサンヒョクをじっと見つめていたし、放送部だってサンヒョクがいるから入ったことは明白だ。しかし、サンヒョクはまるで気にしていないようなので、ユジンも気のせいだと思い込もうとした。
ユジンは唐突に道端の柵によじ登って平均台のようにそろそろと歩き始めた。ユジンはいつも柵の上を歩くのが好きだった。誰の手も借りないで柵を10歩歩けたら願いが叶うという願掛けをしていた。サンヒョクが手を貸そうとすると「私は特別な人にしか手を取ってもらわないからいいの。サンヒョクは彼氏じゃないもん。」と拒否して柵を渡り切った。

そして「見たでしょ?」と得意げに振り返った。サンヒョクはそんな勝ち気で明るいユジンが面白くて、にこにこと微笑むのだった。このままずっとユジンと二人でいたい、サンヒョクはいつも願っていた。

そのころ、チュンサンは図書館で卒業アルバムをめくっていた。1967年度、母親のミヒが卒業した時のものだ。そこには若いころのミヒがにこりともせずに映っていた。チュンサンはポケットから母がこっそりとかくしていた写真を出した。そこには、若かりし頃のミヒと、左側には穏やかそうな顔をした男性が写っていた。そして、その男性が卒業アルバムの中に「キムジヌ」としているのを確認すると、静かにアルバムを閉じるのだった。この男性こそが自分の求めている人物かもしれない。春川第一高校は母の母校でもあった。そして、まだ見ぬ父親の母校だったかもしれないのだ。母は小さなころから「父親は死んだ。自分一人でチュンサンを産んだ。」と教え込んできた。その父親がだれか、それを知りたくてこの学校にやってきた。


母親が大事にアルバムにしまっていた1枚の写真、右側が破れていて見つからないが、左側にはミヒとキムジヌが写っていた。母親によると、父親は高校の同級生だという。チュンサンはどうしても父親を知りたかったのだった。
こうしてチュンサンの転校初日は波乱の一日のまま幕を閉じた。
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