元気になった母

　母が、また元気になった。
　身体の痛みも取れて、以前の明るさを取り戻した。
（あたしのお祈りが通じた……！）
　神様ありがとう！　と言いたいくらい、うれしかった。毎晩、就寝前に私はお祈りの言葉を口にしていた。
　母の気分の落ち込みが、身体の痛さのせいだけでなく、以前は２種類だった薬が４種類になったから副作用ではないかと疑ってもみたが、思い過ごしで良かった。
　痛み止めの薬をくれないのかしらと、かかりつけの主治医を恨みそうになったけれど、薬を飲まないで治って良かったと思った。やはり日にちが経てば治る痛みだったのだ。
　先日は母の日。私は、母の日の贈り物を、欠かしたことはない。姉と一緒にデパートでブラウスなどを選んで贈ることもあるが、今年は別々にしたので、母の好物の和菓子を贈った。美味しい物、好きな物を食べることで、幸福な気持ちになってくれることを願った。
　カードに感謝の言葉を添えたのとは別に、手紙を３枚書いた。最近の私はハガキも手紙も書けない筆無精になったため、手紙を書いたのは久しぶりだった。母は私の手紙に感激してくれる人なので、精一杯、心をこめて書いた。
　この世に私を誕生させてくれた母、育ててくれた母への感謝は文章で表現し尽くせないと、母の日の手紙を書くと、いつも思う。３人きょうだいの中で、生まれた時からずっと、私が一番、母に心配かけたことも自覚している。兄と姉と違って、幼少時代の私は虚弱児だった。
　母は先日、身体の痛みのせいで、デイ・サービスへ行くのを続けて休んだら、ケア・マネージャーの人が心配して家に来てくれたことを、驚き、感激して、喜んでいた。仲間の人たちが皆、寂しがっていると言われて、とてもうれしそうな口調だった。
「だって、お母さん、人気者なんでしょう？」
　私は言った。　
「そう。どうしてかわからないけど、引っ張りだこなの」
　うれしそうに笑って答える母に、私は心から安堵した。