未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第20章 運命は変えられる! ①

2021-03-15 16:16:47 | 未来記

2013-02-17

1.アニキの正体

 

「ちょっと聞いていい?」

 

少年の1人がキララに尋ねた。

 

「何だい? アンタらは、元いた所に戻りゃいいンだろ?

 

アタシはタケルに話してるンだよ! 」

 

「…だから、オレらのことじゃなくてさ。

 

さっきの映像で、すっごいきれいな女の子が映ってたじゃないか。

 

あの子も、あの時に犠牲になっちゃうのか、聞きたかったンだけど…」

 

キララは、プチっと切れて怒鳴り始めた。

 

「アッタリまえじゃないか! みんな、銃で倒れてンだ!

 

あの場所で生きてた奴なンていないさ!

 

それとも、何かい?

 

アンタ達がこれからあそこへ行って、奴らを助けてやるっていうのかい?」

 

少年も負けずに、言い返した。

 

「でもさ。タケルには助ける気があるのかって言うけど

 

じゃぁ、ウェンディはどうやったら助けてやれるっていうの? 」

 

キララ(ウェンディ)は、また何か思いを巡らせているようだ。

 

「…う~ん。残念だけど、もう終わってる。

 

心配しなくていいさ。あの子達は無事だよ…」

 

その時、タケル達が縛られている部屋の戸が開いて、防衛軍の制服を着た人が入ってきた。

 

顔を見ると、タケル達とさっきまで一緒にいたアニキだった。

 

アニキはキララに向かって言った。

 

「情報提供に感謝するよ。

 

君のおかげで、起こるはずのアフカの乱射事件を未然に防ぐことができた。

 

君が宇宙ステーションに時々現れる幽霊ではなく、

 

防衛軍に協力的な、予知能力のある人間であることは、

 

我々も保証するよ」

 

そして、少年たちに向かってこんなことを言い始めた。

 

「今まで黙っていて悪かったが、私は防衛軍の兵士だ。

 

やぁ、タケル。

 

君には、技術者として接していたけど、私は防衛軍の一員でもある。

 

実は、君がキララと呼んでいた女の子と出会うのではと、見張っていたんだ。

 

防衛軍にもいろいろあってね。こんなひ弱な技術者でも、役に立つことがあるらしい。

 

もうすぐ、防衛軍の宇宙船が到着する。

 

これから、あの宇宙船の乗組員を逮捕して、ラミネス宇宙ステーションに戻ることになる。

 

君達と一緒にね…」

 

タケルは、信じていた人に急に裏切られた気がした。

 

アニキは、なぜ最初から防衛軍の兵士だと言わなかったのだろう。

 

キララは、宇宙ステーションに戻ると聞いて、アニキにかみついた。

 

「言っとくけどさ。

 

アタシは、アンタがあのMフォンの使い方教えてくれたから、お礼に教えてやったのさ!

 

アンな大きな事件を予知したこと、言っても信じないと思ったからさ。

 

まぁね。アタシの言うこと、信じてもらえたってことは良かったよ。

 

だって、宇宙ステーションじゃ、言っても誰も信じてくれなかったからね。

 

…でもさ…

 

防衛軍にだって、助けてもらえなかった人がいっぱいいたンだ!

 

アタシの家族もだよ!

 

11年前に、隕石が地球にぶつかるから、宇宙船に乗って逃げたンだ。

 

ソンときゃ、アタシにも、ママとパパがいたンだよ!

 

だけど、細かい石が数えきれないくらい当たって、宇宙船に穴が開いたンだ。

 

赤ン坊だったアタシだけ、丈夫で安全な場所に閉じ込めて…

 

みんな宇宙のちりになっちまった…」

 

 

キララの声は、不思議とタケルの心に届いていた。

 

キララの目から、初めて涙があふれ出たのを、タケルは妙な気持ちで見ていた。

 

キララは泣きながら、叫んだ。

 

「もし、あンとき、防衛軍が来て助けてくれたら、アタシの家族だって今も生きてるンだ!

 

アタシだって、普通の女の子みたいに、きれいな服着て、親に甘えてみたいさ。

 

できることならね!

 

アタシが生まれたってとこの、地球にも行ってみたいさ…」

 

ここまで言うと、キララの表情が、また小悪魔のように変わった。

 

「それにさ、アノ事件はなくなったかもしれないけど、

 

タケルの好きなアノ女の子は、これからまたキケンなグループに捕まるンだよ。

 

アンタの男友達と一緒にね。

 

いくら防衛軍がいたって、助からないかもしれない。

 

アタシの家族みたいに…。

 

 

このまま宇宙ステーションに戻ったって、アタシは消えるだけだよ。

 

防衛軍の相手なンて、してらンないさ。

 

でも…もし、地球に行ってイインだったら…

 

アタシにできることで、役に立つことがあるかもね…」

 

 

防衛軍の若い男は、キララの言いたいことを黙って聞いた後、こう言った。

 

「わかった。君のことを隊長に伝えておくよ。

 

相談してみるから、しばらく待ってくれないか」

 

と言い残し、タケルをちらりと見て、部屋のドアを閉めて立ち去った。


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