未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第20章 運命は変えられる! ②

2021-03-13 16:18:01 | 未来記

2013-03-07

2.華やかさの影に…

 

エリック・マグナーの声が途切れ、広場は一瞬真っ暗になった。

 

大きな広場が、シーンと静まり返った。人々は、これから何が始まるのかと、息を呑んだ。

 

 

しばらくすると、色鮮やかなライトがパッと上空を照らし、

 

華やかな音楽とともに、空中に控えていたサーカス団が、

 

待っていたように自分達の得意の演技を始めた。

 

 

天井からぶら下がった、空中ブランコを揺らしながら移動する人達や、

 

高い所に張られた縄を伝わって、手に持った棒を支えにしながら慎重に歩く人達もいる。

 

 

下からその演技を眺める人々は、自分の上に落ちてくるのではと、手に汗を握りながら、

 

その演技の美しさや、度胸のよさに感嘆の声をあげ、見守った。

 

 

ときどき、わざと下に落ちそうなふりをして、おどけるピエロもいたが、

 

音楽もそれに合わせて、拍子のぬけた音を出し、見る人の笑いを誘った。

 

 

地上でも、ディズニーランドのようなパレードが始まった。

 

 

飾られた車に乗って、アフカのさまざまな民俗衣装を着た人達が、

 

笑顔を振り撒きながら、手を振った。

 

それを見守る人達も、後を追いながら、踊りの輪に入って行った。

 

 

長い旅の終わりを祝福してくれるような、賑やかなパレードに、

 

キラシャやパールも、顔を紅潮させながら、手を振ったり、踊ったりした。

 

上空ではたくさんの花火のような光線が輝き、集まった人達の顔を照らした。

 

 

ポンポンポ~ンと効果音が鳴り響き、

 

音が静まると、

 

集会の主催者が、集まってきた大勢の人達に、お礼の言葉とともに

 

パレードの終わりを告げ、広場は元の明るさに戻った。

 

 

人々は、現実に戻って、名残惜しそうに広場を立ち去り始めた。

 

 

キラシャ一行は、全員がいることを確認して、ホテルに向かった。

 

子供達は、ようやくベッドで寝られるとあって、少し安心した表情になったが、

 

パールはこれから元の生活に戻ることと、友達に会うことに不安を感じていた。

 

それに、パパとお兄さん達のこともどうなっているのだろう…

 

 

パールがあまりの不安に、自分の手を胸に当てて苦しそうにしているのを見たキラシャは、

 

パールを抱きしめて、そっとつぶやいた。

 

「大丈夫だよ。 パールには、あたしがツイてるンだから…」

 

 

一方、人々が去ってゆく広場を映している映像を、ベッドで眺めながら、

 

エリック・マグナーは、そばで見守っている兵士達に言った。

 

 

「防衛軍の諸君は、実にりっぱな任務を成し遂げた。

 

戦争で、心の底まで生きる希望を失いそうな人達に、

 

ホンのひとときでも、お祭りの楽しさを味わってもらえたことだろう。

 

…今回の集まりに関する、軍の犠牲者は…?」

 

 

「はっ。パールの父親を移送する部隊で、負傷者3名。

 

広場周辺の取り締まりで、武装者を発見した際に5名の犠牲が出ました。

 

負傷者、重傷者を含めると50名を超えますが、

 

連行した武装者は、怪しい者も含めて、100名を超える人数でした。

 

何より、広場に集まった多くの人に、ひとりの犠牲も出なかったことに、

 

今回は大きな収穫があったと思われます…」

 

 

「…そうか。ご苦労なことだった。

 

犠牲となった兵士には、哀悼の意を表しないとな。

 

生きていれば、一緒にパレードを楽しむことができたのだが…。

 

…私も、もうすぐ犠牲となった兵士のいる場所へ行く。

 

あの世でお詫びの旅を、果てしなく続けなくてはならない。

 

本当に、有能で志のある人物を、我々はどのくらい失っただろう。

 

生きていれば、世界の平和を築くために、

 

その才能を惜しむことなく使っていただろうに…」

 

 

「殉職した者のうち、2名はパールと同じ民族出身のものです。

 

2名とも、自分の民族に誇りを持っておりました…」

 

 

「そうか。それから、パールの父親は…?」

 

「残念ながら、移送の途中で生体反応がなくなったので、安置所に移送したとのことです…」

 

 

「…本当に、残念なことだ。

 

燃える娘を助けるために、自分も火の中に飛び込んで、

 

愛する娘を抱きしめて、火を消したと聞いている。

 

子供を持つ親として、実に立派な行いを示してくれた人物だ。

 

家族に、事情を丁重に伝えてもらいたい。

 

 

…今日の防衛軍の働きに感謝している。

 

後のことは、頼むぞ。

 

もう、私の役割は果たした…」

 

エリック・マグナーは、静かに目を閉じた。


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