未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第10章 危険を感じながら ②

2021-07-01 21:09:06 | 未来記

2008-02-15

2.キララと名乗る少女

 

3人は宇宙船の発着ステーションへと急いだ。

 

宇宙船の乗組員は、出発までにいろんな物資を詰め込む作業で忙しそうだった。

 

子供たちは、このステーションのゲームがよほど楽しかったのか、その話に夢中になっていた。

 

3人が宇宙船をたずねた時も、船内は子供たちの明るい笑い声で包まれていた。

 

途中で出会った人にテレながらも、タケルは共通語であいさつとお詫びの言葉を言い、かわいそうに思ってハグを求めてきた人に、抱きしめられながら、ありがとうと伝えた。

 

タケルが悪態をついたり、ケガをさせたり、迷惑をかけた人に対しては、きちんと頭を下げて、お詫びの言葉とともに、両親の用意していたギフトを渡した。

 

ひと通りあいさつし終わると、タケルは宇宙船に向かってバイバイと手を振った。

 

タケルは地球へ帰れると聞いて、内心ホッとしていた。事情はともあれ、自分を理解してくれる仲間に、また会える。

 

ただ、宇宙船での記憶がよみがえるにつれて、自分がマギィに送ったメールが気になっていた。

 

それに、地球に帰るころには、自分の耳は聞こえなくなっているかもしれない。

 

タケルは、この不安をどこかへ吐き出したかった。

 

少し買い物をするという両親と、待ち合わせの場所と時間を決めたタケルは、ゲームコーナーへと急いだ。

 

タケルは、Mフォンで見つけた“宇宙の海賊をやっつけろ!”というゲームに興味を持った。

 

人気のある仮想空間ゲーム・コーナーには、通路にまで順番待ちの行列がつながっている。

 

タケルの耳は、音がだいぶんかすれてはいるが、まだ聞こえている。

 

でも、いざという時のため、しぐさや口の動きだけで、何を話しているのかを理解するように心がけた。

 

地球にいる時、前に気を取られていると、キラシャに後ろから話しかけられてもわからなくて、タケルはそんな自分に腹が立って怒っていたのだ。

 

宇宙船の中でも、うまく人と会話できなかったのは、目だけで会話を追う練習をしていたからだったが、不器用なタケルは、そのつらさを吐き出せずにいた。

 

タケルはだまって、ゲームの順番を待つ人たちの表情や口の動きを追った。

 

そんな時、通路の掃除をしている少女が、タケルの目に入ってきた。

 

ホッペを真っ赤にしながら、だまって掃除をしている少女の顔が、罰を受けて、必死に掃除をしていたキラシャとだぶって、思わずタケルは声をかけた。

 

「キラシャ!?」

 

タケルのびっくりした顔を見た少女は、けげんな顔をしてこう言った。

 

「アタシの名前は、キララだよ!」

 

「ゴメン! 知ってる子に似てたから。…キララ、君はここで働いているの?」

 

タケルは、キラシャに似た女の子に、興味を持った。この宇宙ステーションでも、共通語が使われているが、タケルは自然と共通語で話していた。

 

よく見ると、素直なオーラを発散させていたキラシャとまったく違い、その少女には小悪魔的な雰囲気さえあった。

 

でも、今までにない不思議な親近感をタケルは感じた。

 

キララは、いたずらっぽく答えた。

 

「アンタがアタシにジュースをごちそうしてくれたら、答えてもいいよ」

 

「いつ?」

 

「ちょうど、休憩しょうと思ってたんだ」

 

「あぁ、いいよ。おごるよ」

 

「ビッグサイズだよ!」

 

「OK!」

 

2人は、意気投合してレストランへと向かった。


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