2012-04-19
5.どこへ行くんだ?
仲間の乱闘騒ぎが始まり、タケルはあわててキララに助けを求めようとしたが、キララはひとり冷静に、呪文のようなものを唱えていた。
そこへ、別の乗組員がどなりながら、タケル達のいる部屋に入って来た。
「何騒いでるんだ!
もうすぐ、宇宙パトロール隊がやってくるぞ!
オレ達は救助活動しなくていいから、進路は変更だ。
少し遅くなったから、スピード上げるってさ。
なんだ? こいつら…」
殴り合いをしていた少年達も、声の大きさにびっくりして、入って来た乗組員の方を見た。
「こいつら、へんな奴らなンだ…。
この部屋開けたら、知らないガキばっかり立ってて、
ひょっとしてエイリアンかもと思って、ヒヤっとしたけど
下手な共通語でさ、誘拐されて逃げて来たとか言いやがるし、
こいつら勝手にケンカも始めるし…」
「何~? 誘拐された?
おまえら、勝手にこの船に乗り込んで来やがって、何言ってるンだ!
そういうのをなぁ、不法侵入って言うンだ!
ちょうどいい、宇宙パトロール隊が来てくれるンだ。
一緒に、しょっ引いてもらえばいいさ。
おい、お前達、仲間を呼んで縄で縛ってやるから、おとなしくしてろ!」
その乗組員は、すぐにMフォンで連絡を取り始めた。
それを聞いたタケルや、他の少年達もあせって、それを止めようとした。
すると、その乗組員は少年達に向かって、怒鳴りあげた。
「てめえら、そこでじっとしてな!
動くんじゃねえぞ~!
動いたら、オリに入れるぞ~~!!」
その声の凄まじいくらいの大きさに、少年達はその場で固まったように動けなくなってしまった。
『ナンなンだ…?
このままじゃ、オレ達って、不法侵入でつかまっちゃうのか!?
被害者なのに、加害者にされちゃうのか?
これじゃ、スクールにいた時の裁判と一緒ジャン!
キラシャも、オレも、イジメられてる方をかばおうとして
相手をやっつけたら、加害者だって訴えられて…
でもこれって、犯罪っていうか、逮捕されちゃうの?
この話、パパやママが聞いたら、いったいなンて思うだろう…』
途方にくれたタケルは、キララをただ見つめた。
キララの呪文が一区切りつくと、タケルの心にもキララの声が聞こえた。
『みんな、消えるよ。
悪いようにはさせない。
自分を信じて、集中するんだ!』
『キララ、一体どこへ行くんだ?
オレ、お前を信じていいのか?』
『アタシは、アンタらを助けたいンだ!
つべこべいわずに、集中しな!!』
再び、白い煙のような“気”に囲まれるようにして、キララとタケルと少年達の姿が消えた。
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