2008-02-20
1.だまし討ち
トオルは、そばで世間話を続けるトュラッシーという見知らぬ男を警戒しながら、ラミネス宇宙ステーションの通りを歩いていた。
ミリのことも心配なので、メールで確認する。
どうやら何事もなく部屋についたようだ。少し安心して、トュラッシーの話に耳を傾けた。
「どうも、ゲームはあきられるのが早い。せっかく選びに選んで、仕入れたゲームだというのに、3ヶ月も持たないんですよ。新しいゲームに人気を取られてしまって」
「地球でも、同じようなものです。私のいたエリアでも、ゲームの流行は短い。子供は新しいものが好きですからね」
「地球では簡単に新しいものが手に入る。しかし、この広い宇宙では交換するのにも何ヶ月とかかる。せっかく儲けたと思っても、取替え費用だけでパァですよ」
「そりゃ、たいへんでしょうね。私は息子のために、耳の治療を含めて、ずいぶんお金をかけてしまいましたが、でも息子のお陰で研究に励むことができた」
「ほう、息子さんは耳が悪いんですか?」
「いや、まだだいじょうぶです。遺伝的なもので、私はマシンのお陰で耳が聞こえにくい程度だが、息子はパスボーで耳を傷めている。それが少し心配なだけです」
「そうですか。そうだ、私の宇宙船が近くにあるので、少しコーヒーでも飲んで行ってはいかがですか?」
トオルは、タケルのことに気を取られ、レストランで十分な水分を取っていなかったことに気づいた。
「そちらがかまわないとおっしゃるのなら、先ほどのお話の続きを…」
トュラッシーは軽く頷いて、トオルを自分の宇宙船へと導いた。
「さぁ、ここです。お入りください。」
トオルの目の前に、古びた小さな貨物運搬用の宇宙船が見えた。トュラッシーは、入り口をMフォンの操作で開け、先に入って行った。
「さぁ、どうぞ。古いゲーム機材を分解して積んでいるから、少しせまいですが、コーヒーを飲みながらお話するには、問題はないでしょう」
金属の臭いがムッとして、少々気が引けたが、トオルはタケルのことが知りたくて、息苦しさをこらえながら中へ入った。
入り口がガタンと閉まると、部屋は真っ暗なままだった。
「すみませんが、明かりを…」
その時、トオルの背後でバシッという音がして、何かが光った。トオルはそれが何なのか、振り返ろうとする間もなく、意識を失った。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます