こんばんは。架空のCMソングを作るユニット・キシリ徹のやなせ京ノ介です。
我々は、(実在の)CMソング好きが昂じて架空のCMソングを作るようになり、今もなお実在のCMソングに感動することが多くあります。
なにせいきなり架空のCMソングに感動して架空を作るやつはいません。自分たちの曲でも「このCM曲はなぜいいのか?」を考え感じて、架空を作っていることが多いです。
このコーナーでは、”CMソング作家の赤ちゃん”であるやなせが、好きな実在のCMソングについて、感動した点を主観的に分析しながらお伝えします。
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「なんか楽しそう!」が伝わる”めちゃコミック”のCM
今回取り上げるのは、現在放映中『めちゃコミック』のCMソングについてです。
まずは公式ChのCM動画をどうぞ。
曲は、
D | Em | A | G D |
A | G D |
Em | A | D |
という三和音主体のコード進行に、アコギ・ベース・ドラムのシンプルなアンサンブル。
そこにやや打ち込みっぽい口笛の音、CM内で三輪車を漕ぐ犬のベルの音も相まって、全体的に軽妙で弾む感じのスッキリまとまった印象のオケです。
特筆すべきは歌詞です。
『め(っ)ちゃコミックうひょひょひょひょ~ め(っ)ちゃコミックうひゃひゃひゃひゃ~』という「サービス名+笑い転げる擬音」のみで構成されており、あとは語り的にその時々のキャンペーン内容が2小節程度入る、というもの。
「漫画を読んで、その間だけは何もかも忘れて楽しめる・お気楽さ」が、
(たったこれだけで)曲と毅然一体となり伝わるところがCMソングとして非常に素晴らしいと感じます。
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優れたポップスは映画を孕んでいる
(誰が言っていたかは失念しましたが)20歳ぐらいの頃「優れたポップス・歌謡曲は4分の中に映画を作る」という言葉を聞いたことがあります。
実際に世間で名曲とされているものは、情景描写が非常に豊かかつ的確であり、聞き手の記憶の中にある類似した情景を自然と思い起こさせ、込められた感情を追体験できるものが多いと思います。
シンガーソングライター・豊島たづみさんの『もう海へなんか行かない』という曲があります。
豊島さんは自らの作詞曲もありますが、この曲については、
作詞:松本隆・作曲:筒美京平のゴールデンコンビによるものです。
代表的な作品では『木綿のハンカチーフ』/太田裕美、『セクシャルバイオレットNo.1』/桑名正博など超多数。
(↑オリジナルバージョンがなかったので、原曲の再現度が高い、ピンクレディーの未唯さんのバージョンを引用します)
語りすぎないながらも、季節を共にした男女の別れ・2人共通の海の思い出を匂わせる歌詞。
重厚なリズムに、軽妙ながらどこか影のあるギターのカッティングが切なく淡々とした時の流れを感じさせる。
この曲は間違いなく4分の中に映画を作ってしまった名曲です。
22歳のとき、6枚組の筒美京平作品集の中に収録されたこの曲を聞き、前述の映画のたとえが真に腑に落ちました。
他に収録されている、誰もが知っているもっと有名な名曲にも感動しましたが、6枚組の中でも、特にこの曲の持つ風景に食らってしまいました。
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CMソングの話に戻ります。
媒体にもよりますが、CMソングやジングルが放送される尺は主に5秒~1分程度であることが多いです。
その尺の中に映画を作ってしまったCMソングの名曲も実はあります。(小林亜星『パッと!さいでりあ』、伊藤アキラ作詞『ホテル三日月』など)
しかしながら、大多数のCMソングにまず求められる役割は、そういったストーリー性・重厚感以上に、”短い尺でサービスの内容や利点・その商品や企業やサービスの持つイメージを伝えること”だと思います。
めちゃコミックの場合は「漫画の楽しさ(漫画を読んでるときは他のことを忘れられる)」のイメージを伝えることが主題であり、
それを「サービス名+うひょひょひょひょ~!」という歌詞と軽快な曲だけで伝えられているめちゃコミックのCMは、
ある意味「4分の中に映画を作ってしまう」ことにも似た情報の凝縮性を持っていると思います。
インタビューの機会で「CMソングの魅力は?」と聞かれたとき、いつも「ポップセンスの凝縮性」という要素を上げています。
短い尺の中で、
普通のポップスにはない凝縮された・語りすぎないポップセンスの表現ができる、それもCMソングを作る楽しさであり、CMソング自体の魅力だと感じています。
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最後にキシリ徹の架空CMソングの中で、ポップセンスの凝縮性を特に意識した曲を紹介します。
『巡る出会い 廻るお寿司 ロマン寿司チェーン』
15秒の尺の中で、企業名に名前負けしないスケールの大きさ・大陸感を意識しながら、
ややひねったコード進行で、浮遊感と、自分のお気に入りの寿司ネタと運命的な出会いを果たした時の幸福感まで演出しています。
そういった点を感じながらぜひ聞いてみてください!(今後リマスターで音質改善予定!!!)
<終>