連れずれの記

声なき者の叫びを映す(思い上がりのたわ言)

カケラ

2023-09-18 11:02:32 | 夢の中の話
4 記憶のカケラ
 弥生月 雪解けの霊水立ちこめる霧。ガタガタと震え
 漁具を手に、じっと下流の水面を見る。体の震えが止み
 ようやく目の焦点も定まった頃、不気味さを身にまとい
 ゆらゆらと光を遮る様な「影」が 来た!緊張で早鳴る
 胸の動きを、喉の渇きを抑え込むように。ゴクリとする。
 早暁の日課のような事なのだがほかの同級生達はこれを
 知らない。ある日気が付いたら、家にいたのは自分だけ。
 金もなく米びつに僅かな蓄え。貧しさは他人や境遇を
 恨む事さえ許してくれない。13歳の頭で飢えをしのぐ
 手段といえば食い物を手に入れる行動だけだった。幸い 
 漁師の家だけに漁具もあり、術も身に着けていた。時間は
 通学前早朝ならばこの季節、人目も気にならない。それで
 前述の様であるのだが、夢の中のように思い出す。しかし
 宝のような記憶なのだ。