4 記憶のカケラ
弥生月 雪解けの霊水立ちこめる霧。ガタガタと震え
漁具を手に、じっと下流の水面を見る。体の震えが止み
ようやく目の焦点も定まった頃、不気味さを身にまとい
ゆらゆらと光を遮る様な「影」が 来た!緊張で早鳴る
胸の動きを、喉の渇きを抑え込むように。ゴクリとする。
早暁の日課のような事なのだがほかの同級生達はこれを
知らない。ある日気が付いたら、家にいたのは自分だけ。
金もなく米びつに僅かな蓄え。貧しさは他人や境遇を
恨む事さえ許してくれない。13歳の頭で飢えをしのぐ
手段といえば食い物を手に入れる行動だけだった。幸い
漁師の家だけに漁具もあり、術も身に着けていた。時間は
通学前早朝ならばこの季節、人目も気にならない。それで
前述の様であるのだが、夢の中のように思い出す。しかし
宝のような記憶なのだ。
弥生月 雪解けの霊水立ちこめる霧。ガタガタと震え
漁具を手に、じっと下流の水面を見る。体の震えが止み
ようやく目の焦点も定まった頃、不気味さを身にまとい
ゆらゆらと光を遮る様な「影」が 来た!緊張で早鳴る
胸の動きを、喉の渇きを抑え込むように。ゴクリとする。
早暁の日課のような事なのだがほかの同級生達はこれを
知らない。ある日気が付いたら、家にいたのは自分だけ。
金もなく米びつに僅かな蓄え。貧しさは他人や境遇を
恨む事さえ許してくれない。13歳の頭で飢えをしのぐ
手段といえば食い物を手に入れる行動だけだった。幸い
漁師の家だけに漁具もあり、術も身に着けていた。時間は
通学前早朝ならばこの季節、人目も気にならない。それで
前述の様であるのだが、夢の中のように思い出す。しかし
宝のような記憶なのだ。