庭木師は見た!~ガーディナー&フォトグラファー~

庭木師が剪定中に見たあれこれ。

庭木師は見た~飲酒運転~

2023-10-14 16:10:03 | 日記

                                   

                               

                                   

   「決別と いふほどのことを われはせず ひとりで 

    閉ぢゆく 扉を思ふ」

                                            (『夏鴉』 澤村斉美)

 

 写真に写っている茶色のとっくり状のものは、スズメバチの巣です。セミの抜け殻がくっ付いています。

 巣としてはまだ成長途上です。生け垣を剪定中、見つけました。

 同僚の80代半ばのお年寄りは、仕事がない日曜には、田や畑の仕事に出かけます。お昼の食事時間には畦道でビールを、午後3時の休憩時には日本酒を飲み、仕事を終えてからは自宅に帰ってビールと日本酒、焼酎でその日の疲れを取るのだそうだです。

 この間に、軽トラの運転をすることもないことはない、とのことです。そう話してくれたご本人は、照れくさそうに笑い、「……ココダケだけだぞ」と。

 別の同僚(70代)に誘われ、ある日曜日、剪定の手伝いに出向きました。

 その日のランチは、国道沿いの大衆食堂でした。彼、ワタクシメに「何でも注文していいぞ」と言った後、ウエイトレスに「おーい、ビール中瓶2本!」と。

 このあたりの皆さん、お酒を飲んでもほぼ全くと言っていいほど顔に出ないだけでなく、饒舌になることもなく、不思議なほど変わらず、淡々としているのです。……これをどう解釈したらいいのか。

 その“非変身ぶり“に驚かされます。

 

 


庭木師は見た!~辛夷の花~

2023-10-09 08:48:27 | 日記

         

                     (10月に剪定した辛夷)

            

 詩人・茨木のり子の作品『花の名』から-。

 のり子は、父親の告別式を終えて東海道線で帰る時、たまたま一緒になった同い年の男性と話が弾みます。時期は4月。 

 その彼が、ある花の名をたずねます。「あなた知りませんか? ううんとね 大きな白い花がいちめんに咲いてて…」。

 「泰山木じゃないかしら?」と、彼女は答えたのだが、東京駅でその男と別れた後、「あのひとが指したのは辛夷の花ではなかったかしら そうだ泰山木は六月の花 もう咲いていたというのなら辛夷の花」。

                     

 添付写真は、10月に剪定に行った民家の庭の辛夷。

 最初にその木を見た時は、幹が見えないほど葉が生い茂っていたのですが、同僚のM氏が剪定したらこうなってしまった。

 辛夷は早春に花を咲かせます。ただ、ここまで葉っぱや花芽を落としてしまったら来春、花を楽しむことは難しいでしょう。ここの家の辛夷はなぜか、毎年M氏が担当しているのです。それもこの時期に。花が終わって間もなくならともかく。

 ここのご主人が言っていたそうです。「うちの辛夷はなぜか、花がほとんど咲かない」と。

               

 


庭木師は見た~高齢化と庭の手入れ~

2023-10-08 01:01:29 | 日記

     

                  

   (仕事帰りに立ち寄った道の駅で買った“創作飾りカボチャ”)

 

      「ああ  生きる日の

        美しき

       ああ  生きる日の

        楽しさよ

        われは草なり

        生きんとす

       草のいのちを

       生きんとす」

 

                   (「われは草なり」 高見順)

                   

 庭木剪定でいろんな家庭を訪ねて数年。共通して感じることが2点あります。

 まず、年配のご主人や奥さんは、庭にそれなりに関心を持ち、手入れにお金をかけることを惜しまないのですが、その子供たちとなると、どこもほとんどといっていいくらい興味を示していないこと、そして2点目は、そのご主人や奥様は歳月とともに、施設や病院に入り、われわれの前に姿を見せなくなるということです。

 今日、訪ねた民家もそうでした。

 これまでは80代後半風のおじいさんが、われわれが訪ねると必ず家から出て来て、庭木の手入れについて班長と熱心に話していたのですが、先月入院したとのことで、その姿はありませんでした。

 代わりに50代風の穏やかな感じの息子さんが現れ、「私、剪定については分からないので、お任せします。今後については改めて相談させてください」と言っていました。

 休憩時間には、大きなミカンと地元の和菓子店のまんじゅう、ペットボトル入りにお茶と出て、これまで通り手厚い持てなしでした。

                            以上

 


庭木師は見た~素敵な夫婦~

2023-10-06 18:49:32 | 日記

      

                        (題して『』んでん虫は蜂の巣に向かう』)

 「ものを創る人に、ただのおだやかな人などいないという、統計

  的事実にもとづく持論をもつわたし」

                         (『ミセス』2017年11月号、作家・川上弘美)

 

                       

 作家・川上弘美さんは、娘が通っていた私立高校で教えていました。

 長身で美人。木立に囲まれた学校横の坂道を上り下りする様は、「一幅の絵のようだ」という生徒もいたそうです。

 先日、剪定に行った家のご夫婦は60代前半。その雰囲気から、定年後の生活を楽しんでおられる様子がよく分かりました。孫の話から最近食べておいしかった果物まで、問わず語りで…。話が途切れることはありませんでした。おだやかで素敵な夫婦”という言葉がぴったりと言ったらいいかな。

 ご主人は地元の大学を出て、東京・霞が関の某官庁に長く勤務していたそうですが、その役所の名を聞けば、それはシビアな仕事だったのではと想像する人は少なくないと思いますが、ご本人からは全くそんな雰囲気がなく、町役場などで、のんびり過ごしてきたと言った方が似合っている感じでした。

 その奥さんも明るく話し好き。ピチピチしており、われわれの休憩時間には一緒にお茶を飲みながら雑談。その夫婦のおだやかさに、“大いなる価値”を感じた次第です。

 ただ、カネを預かる役所に長くいたせいか、出された菓子のコストパフォーマンスは結構高いものでした。(※小生が仕事を終え、近くのスーパーに立ち寄ったら、数時間前に食した菓子が、レジ前の特売品コーナーにありました)以上。

 


庭木師は見た!~ラブフラワー(愛の花)~

2023-10-05 09:01:54 | 日記

        

      (切った木の幹に現れたハートマーク。愛に疲れた感じの薔薇が近くに咲いていた

       のでを添えてみた)

 

「最愛の妻Kalebraへ。結婚してから21年になろうとしていますが、今もまだ魅力的で、私だけでなく周囲の人々を魅了し続けています。あなたほど思いやりがあって愛情に溢れ、朗らかで、真に美しい人には会ったことがありません。私の伴侶であり、私の子の母であり、ビジネスパートナーであり、プライベートパイロットであり、中国語の通訳者であり、最高の理解者であることは、とても幸せです。まさに数々のラブソングに歌われるような女性…」

          (『フォトグラファーのためのPhotoshopC55』スコットケルビー著)

                     ★

 先日、同僚の庭木師が親戚の葬儀に出るため、仕事を休んだ。

 亡くなった方は90歳の男性Gさんという方だが、その奥さんがなんと、Gさんが亡くなる3日前に88歳でこの世を去ったばかりだった。妻に先立たれた男は、残りの人生が短いとはよく聞くが、これほどまでとは-と庭木師のみなさん、驚いていた。

 70代半ばの庭木師が言っていた。「オレは料理はそこそこできるし、家の掃除も手伝っているので妻が先に行っても、生活自体はなんとかなると思うが、一人で食事することを考えるとたまらんなあ…。つまんないよ。生きる元気は出ないんじゃないかな…、そう思うよ。妻が先に行くとダンナはせいぜい2~3年持てばいい、とよく言うよね」と話していた。

 この日は、たまたまお寺の剪定をしていたのだが、墓地の生け垣を整えながら、何気なく墓石を見ていたら、墓に眠っている人の写真付きの碑があって、そこには「<妻>平成20年、享年73歳。<夫>平成23年、享年80歳」と記されていた。

 “2~3年説“の通り、ということになっていた。