◇富山のます寿し店紹介の第2弾です。
筆者が東京にいた時、JR有楽町駅前の富山県のアンテナショップ「いきいき富山館」で、よくます寿しを買いました。日替わりでいろんな銘柄が販売されていました。 日本橋にもアンテナショップ「日本橋とやま館」があります。いずれも富山県ます寿し協同組合に加盟しているます寿し店が出しています。
その中から今回は「高芳ます寿し店」と「高田屋」について紹介しましょう。
[高芳ます寿し店]
富山駅から路面電車に乗って5分ほどで「桜橋」という停留所に着きます。大正14年に創業した高芳は、その目の前にあります。
(路面電車の停留所「桜橋」前にある「高芳」。瓦屋根の家)
同店に入るや、国産の天然サクラマスを使っているとの表示が目に入りました。養殖や、外国から輸入した鱒(ます)を使っているます寿し店が多い中、あえて国産の天然物にこだわって差別化しているのです。鱒は、北海道日高地方から仕入れているとのこと。養殖鱒は一般的に、脂がのってとろっとしていますが、天然鱒はあっさりした食感だそうです。
筆者も早速買って食べてみましたが、確かに脂っぽさがなく、鱒の色もこれまで食べたます寿司に比べやや白身を帯びて、肌の色に近い感じを受けました。
(手のひらの色に近います寿し)
訪ねた日に、店頭で応対してくれたおかみさんは、「ます寿しは、買った日の夜から明日になると味が締まって食べ頃になります。あさってになると、やや固くなります」と。
その言葉が頭に残っていたこともあったからでしょうか、1個買って帰宅したその日の夜、仕事をしていて、日付が変わった頃に小腹がすいたので、夕食時に半分食べて翌日用に残しておいたそれを、ほんの一口だけと思ってつまんだのですが、うーむ、2口、3口と手が出てしまい、結局すべてを食べてしまいました。
おかみさんと話していて、感心したことがありました。筆者が富山のます寿し店を巡っていると話すと、
富山ます寿し協同組合のパンフレットを棚から出して示しながら、「昨年(2020年)、一番大きいお店の『源』さんが組合に入ったので組合員は現在13店になり、一緒に富山を盛り上げようとしているんです。横のつながりを大事にし、イベントなども仲良く取り組んでいて…」「富山のます寿し店の数?そうですねえ…、全部で50店以上あるんじゃないかしら。富山市以外でも高岡市、魚津市などにもありますからね。ホテルや料理屋が自分のところで作って販売しているケースもあるんです。また、富山県外でも、われわれと同じ製法で作っているところもありますし…」。
自分の店のことについては語れても、業界全体について整理して話してくれる人は、私が何店かまわった限りではいませんでした。50件以上もあるとは初めて知りました。以前、テレビで20数件と聞いた記憶があったものですから…。
広い高い視点で業界を見ておられる感じのおかみさんでした。マスクの上にのぞくしゃきっとした目元、要を得て簡潔な話し方に利発さを感じました。
次は高田屋さんです。
[高田屋]
同店のホームページによると、創業は明治5年だそうです。
訪ねた日は午後3時近くでしたが、お店にはます寿司が2個残っていました。1個1,500円と、他店より100円安かったです。
80代前半に見えるお店の男性(多分、店主さん)に、「このあたりには鱒(ます)寿司屋が多いのですね?」と聞いたら、「かつてすぐ側を神通川が流れていて、鱒などの魚がたくさん採れたので、この地区からます寿司作りが始まった。この当たりには昔は6軒あったが、今は4軒だ」と。
(松川に架かる「舟橋」。かつては神通川が流れていた。正面の赤い看板が「高田屋」。その右手に「せきの屋」。左手奥が「川上ます寿し」=橋を渡る緑の服の人の奥)
高田屋のます寿しは、酢飯、鱒ともやや柔らかめで、しっとりした感じ。店でもらった食べ方案内書きには、室温(15~20度程度)がおいしく、冷めたい所に置いておくと固くなる、とありました。
筆者は買った日(2月上旬)に、自宅のキッチンにおいたまま特に温めることなく食べたのですが、さほど固くはならず、歯ごたえは柔らかでした。高齢者には食べやすい感じがしました。
(高田屋の店内に置いてある石)
お店の中に置いてあったいくつかの黒っぽい石に目が行きました。1個が5㌔前後(もっとかな)ありそうでした。
これは何に使ったのですか?と聞けば、ます寿しを作る時、押すための石とのこと。「かつて店の横を流れていた神通川で探したもの」だそうです。どの石も角が取れて丸みを帯びていました。
しばし見つめていて、ます寿しは一つ一つが手作りであることを改めて感じた次第です。
(以上)
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