特別捜査密着24時の『妄想飛行~冗談は脳内だけにしろ~』で野村さんが言っていたこと
>>「9つも歳が違うと同じ学校に通うなんてことないしさ、妄想が膨らむよね」
>>「もう少し年齢が近かったら、こんなこともあったかな~っていう俺のロマンじゃーん」
みたいに譲二さんも妄想してたかな…と思ったらこんなお話が浮かびました。
なお、妄想の中の『マスター』は先代マスターです。
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【☆妄想中☆】
俺は茶倉譲二、高校二年生。
訳あってクロフネという喫茶店の二階に下宿している。
下宿代は入れているが、微々たるものなので、時間がある時には喫茶店を手伝ってる。
ま、コーヒー入れたり、サンドイッチを作ったり、そういうことが好きだからということもあるんだけどね。
このクロフネのマスターは浦賀さんと言って50代位。眼鏡をかけてあごひげを生やしてる優しそうな人だ。
そして、何より重要なのは俺と同じで、歴史が大好きなこと。
店の名前にクロフネとつけるくらいだから、幕末が特に大好きなんだ。
今日も店の手伝いをしていたが、お客さんがひけたところで、マスターが声をかけてくれた。
マスター「譲二くん疲れたろう。これでも飲んで休憩してくれ」
カウンターに俺好みのブレンドコーヒーのカップを置いてくれる。
譲二「あ、すみません」
俺がゆっくりコーヒーを飲んでいると、マスターは時計を見ながらソワソワしている。
譲二「あのー、何かあるんですか?」
マスター「あ、いや。そろそろ来る頃かなって、思ってね」
譲二「それって、前に言ってたもう一人の下宿人のことですか?」
確か俺と同じ高校の一年に編入してくるとかいってたな。
マスター「ああ、以前世話になった方の娘さんでね」
俺は思わずコーヒーを吹き出しそうになった。
え?娘さん?女なのか?
その時ドアのチャイムが鳴ってハルとリュウが入って来た。
ハルは俺の一つ下の後輩、リュウは俺の同級生、どちらもこの商店街の跡取り息子だ。
春樹「こんにちは。マスター、下宿人を連れてきたよ」
竜蔵「やあ、ジョージ。俺らの幼馴染らしいぞ。俺はあんまり覚えてないがな」
二人の後ろから可愛らしい女の子がおずおずと入って来た。
百花「初めまして。今日からこちらにお世話になる佐々木百花です。よろしくお願いします。」
譲二「え?佐々木って、もしかしてあの百花ちゃん?小学校の頃、公園でよく遊んでた」
春樹「そうなんだよ、ジョージさん。俺も最初、店で会った時には見たことある子だな、って思ったくらいだったけど、話を聞いてみたら、あの佐々木で、しかも今日からクロフネに下宿するっていうから驚いちゃって」
マスター「おやおや、君たちは知り合いだったのかな?」
譲二「みたいですね。百花ちゃんは小1で引っ越すまで、この近くに住んでいたんですよ。そうだよね?」
百花ちゃんは俺の顔をじっと見つめた。
百花「もしかして、譲二くん?わぁ、本当に懐かしい人ばっかり」
春樹「ほら、ここに来れば懐かしい奴らに会えるって言ったとおりだろ」
なんだか、ハルとはここに来る前色々話して打ち解けたみたいで、俺はちょっと面白くない。
何せ、百花ちゃんは小学校の頃遊んでた仲間で唯一の女の子で、明里と違って優しいから俺は大好きだったんだ。
あ、明里というのは親が決めた俺の婚約者で、婚約者なんだけど俺は何度も振られてる。
それも俺が家出同然でクロフネに住んでる理由の一つなんだけどね。
それと百花ちゃんのことは俺以外の仲間たちもみんな好きだったから、全員がライバルになるな。
仲間たちというのは春樹と竜蔵以外に三人いる。
百花ちゃんと同い年のが、ケーキ屋の一護と風呂屋の剛史。百花ちゃんの一つ下が、ピアノ教室の理人。
俺以外はみんなこの商店街の息子たちだ。
え?俺は違うのかって?
ま、色々とあってね。
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他の仲間たちも次々やって来て、百花ちゃんと懐かしい再会をした後、俺はマスターに言われて百花ちゃんを部屋に案内した。
譲二「ここが君の部屋だよ。って、…へえー、マスターいつの間にこんなの運び込んだんだろうな?」
部屋の中は俺の知らない間に女の子らしいファブリックでまとめられている。
百花「先に荷物だけを送ったんですけど、ちゃんと梱包も解いてくれてるみたいですね」
譲二「うん。マスターはそういうとこ気が利くからね」
百花「そうなんですか?」
譲二「あれ?百花ちゃん、もしかしてマスターに会うのは初めてなの?」
百花「はい」
譲二「って、俺にまでそんなよそよそしくしないでよ…。幼なじみなんだからさ…」
百花「ごめんね。譲二くんは一つ上だったけど、リュウ兄みたいにみんなのリーダーっていう感じじゃなくて、同い年の男の子みたいに思ってたのに…。
久しぶりに会ったらなんだか大人の男の人みたいになってるから」
百花ちゃんは言いながら真っ赤になっている。
俺は彼女をリラックスさせてあげようと冗談ぽく言った。
譲二「それって、俺は老けてオジサンになっちゃったってこと?」
百花ちゃんはますます赤くなって慌てて言った。
百花「そんなことないよ!譲二くんはとてもス…だし…」
え?今よく聞こえなかった。
『ステキ』と言ったような気もするけど、確かめる勇気はない。
譲二「えっと、もう少ししたら店も閉めるし、夕食の支度ができたら呼びに来るからゆっくりしてるといいよ。つかれてるだろ?」
百花「あ、夕食の支度なら、私、手伝うよ」
譲二「いいからいいから。明日からは三人で順番に作ってくと思うから今日はいいよ」
百花「ありがとう、譲二くん」
階段を下りながら顔がにやけてしまう。
今日から百花ちゃんと同じ家に住むんだ。
学校の行き帰りも一緒になったりして…。
ハルや一護たちに手出しされないように気をつけないとな…。
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百花「マスター?大丈夫ですか?」
譲二「え?」
百花「さっきから同じお皿ばっかり拭いてますけど…」
譲二「え、そうだった?ゴメンゴメン」
俺は慌てて拭いた皿を片付けはじめた。
あ~あ、あいつらと百花ちゃんが子供の頃の話で盛り上がって、あんまり楽しそうなんで、つい妄想しちゃったよ。
俺も百花ちゃんと一つ違いくらいで同じ高校に通いたかったな…。
でも、待てよ。
今の妄想だと一緒に住んでるっていっても、先代マスターと三人で、今みたいに二人きりじゃないな…。
でも、高校生が二人だけで住むなんてあり得ないしな。
百花「マスター!お鍋が吹いてます!」
譲二「あ!ゴメン」
慌ててコンロの火を消す。
百花「今日のマスター、変ですよ?何かあったんですか?」
ちょっと眉間にシワを寄せた顔も可愛い。
譲二「いや、なんでもないよ。あ、そうだ。明日のことなんだけど…」
本当は俺も百花ちゃんとは昔馴染みなんだけど、百花ちゃんは覚えていないみたいだし。
やっぱり、こんなオジサンじゃ恋愛対象からは外れるだろうな。
可愛い百花ちゃんと一緒に夕食を取りながら、今日思いついた妄想の世界に気持ちは飛んで行くのだった。
妄想飛行~譲二の場合 その2へつづく
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フレキシブルなクロフネの二階。 妄想の中では部屋数が増えてる^_^;。