町外れにある古びた洋館。
何時からそこに建ち、誰が住んでいるのか…。
気味悪がった人々は1人も近づくことはない。
ある日のこと。
主人公は錆び付いた門前に立ち、チャイムを押す。
彼女を出迎えたのは、
館の住人である双子の青年達だった。
西園寺蘭 CV櫻井孝宏
24歳。冷徹で高圧的な性格。
感情を余り表に出すことがない。
自分と弟以外の人間に興味はない。
西園寺若狭 CV羽多野渉
24歳。社交的で人懐っこい性格。
感情の変化が豊か。
主人公には病的なくらい懐いている。
主人公
西園寺家の住み込みメイド
Youtubeが削除されてしまいました。
ただ妄想の方は続けて行きたいと思います。
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蘭endでは、若狭は外国へいったということですが、それまでの顛末を妄想してみました。今回も蘭目線です。
ヒロインの名前は玉井美緒と名付けます。
蘭と若狭に「どっちを選ぶのか」と詰め寄られたヒロイン。
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その1
美緒「蘭さんと一緒にいたいです」
蘭「当然だな」
若狭「……」
安堵と喜びが沸き上がる。正直どちらが選ばれるかは五分五分だと思っていた。
若狭はよほどショックだったのか黙ってうつむいている。
美緒「若狭さん、ごめんなさい。あなたのことが嫌いというわけではないの。でも、私は蘭さんと一緒にいたい。」
うなだれていた若狭が突然こちらに突進して来た。俺は若狭を警戒していたので、素早くよけた。若狭は勢い余ってソファーに激突した。若狭の手にはスタンガンが握られていて、激突した拍子にバチバチと大きな音を立て火花がとんだ。
俺はすかさず若狭に馬乗りになった。若狭の腕をひねり上げる。スタンガンが滑り落ちる。
若狭「痛い! やめろ!」
蘭「お前こそ、動くな」
若狭「くそ! もう少しだったのに…」
驚いて、固まっている美緒に指示を出した。
蘭「美緒、若狭のポケットを探れ! 多分、手錠が入っているはずだ。鍵があればそれも」
美緒は、引きつった顔で頷くと、若狭の服のポケットを一つ一つ調べた。ガチャリと音がする。
美緒「これ?」
美緒が手錠と鍵を見せた。
蘭「ああ、俺が手を押さえているから、若狭に手錠をかけてくれ」
美緒「でも…」
若狭「美緒ちゃん、僕を助けてくれ。お願いだ」
蘭「美緒、何を躊躇している。お前も見ただろ? 若狭は自分が選ばれなかったから、スタンガンで俺を襲おうとしたんだぞ!」
美緒は決心したように頷くと若狭の両手に手錠をかけた。若狭は相変わらず俺を振り落とそうと暴れている。
蘭「美緒、俺の部屋に行って、離れの鍵を取って来てくれ! 俺の机の右側の引き出しの上から2番目に入っている。離れというタグが付いているからすぐわかる。」
俺の言葉を聞くと、美緒は緊張した面持ちで頷き、小走りで走っていった。
蘭「若狭、甘かったな。お前の考えていることは、俺にはだいたいわかる。」
若狭は暴れるのをやめた。甘えるように言う。
若狭「兄さん、降参。冗談だよ。僕が本気で兄さんを襲うわけないじゃないか」
蘭「しらじらしいぞ!」
美緒が鍵を持って、息を切らしながら戻って来た。
俺はその鍵を受け取ると、若狭の上から降りた。
蘭「ほら、立て!」
俺は後ろ手に手錠をかけられた若狭を歩かせる。美緒が後ろから着いて来ようとしていたので、すかさず制止した。
蘭「お前はここにいろ! 後は俺1人で大丈夫だ。」
美緒「でも…。」
蘭「夕食の準備でもしていてくれ。俺たち3人分のな。」
美緒「…」
蘭「ああそうだ。さっき若狭が落としたスタンガンも拾って持って来てくれ」
俺は一方の手でスタンガンを構え、片手で若狭の腕を後ろから持って離れに連れて行った。
この洋館の裏庭には小さな離れがある。その中に物入れに使えるように外鍵の付いた小部屋があった。俺はそこに若狭を放り込むと鍵をかけた。念のため二重にかける。
若狭「兄さん、ひどいじゃないか…。こんなところに閉じ込めて。兄さんはあの子を手に入れたんだから、僕のことはもう許してくれてもいいじゃないか」
蘭「心にもないことをいうんじゃない。俺を出し抜くチャンスがあれば、あいつを自分のものにする気だろ?」
若狭「そんなことないよ。僕たちは血を分けた双子じゃないか。お願いだよ。出してくれ」
蘭「まあいい。しばらくそこにいろ」
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櫻井孝宏さんの声は私的に『特命捜査密着24時』の花井一沙の声そのものでした。
で、この話の蘭の顔もジャケットカバーのイラストの顔立ちじゃなく、一沙の顔で再生されています。
一卵性の双子なのに顔が違うじゃなーい。と、いうのは置いといて…。
ちなみに一沙とハル君の体格はほぼ一緒です。ふふっ( ̄ー☆
(ハル君の体重が1kg軽いだけ)
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その2
美緒に作らせた食事を持って離れにいく。鍵を開けると、若狭は手錠をしたまま随分暴れたようで、いろんなものが床に散らばっている。
蘭「食事を持って来たから、食べろ」
若狭「手錠をしたままで? 手錠を外してよ」
蘭「自分で工夫して食べろ」
若狭「そんなむちゃ言わないでよ。外から鍵をかけてあるんだから、逃げられやしないよ。だから鍵を外して」
蘭「手錠の鍵は今持っていない」
俺はテーブルにお盆を置くと、戸を閉めてまた鍵をかけた。
若狭「兄さん、ひどいよ。」
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俺が部屋にいると、チャイムがなった。
(早かったな)
美緒が「篠崎さんという方が来られています」と取り次いだ。
蘭「すぐ部屋に通してくれ」
40歳くらいの男が入って来た。一見ごく普通のサラリーマンに見えるが眼光は鋭い。
篠崎は父の代から付き合いのある人間だ。会社の業務で、法に抵触する恐れのあるものの処理を時々頼んで来た。篠崎という名が本名かどうか、俺は知らない。
篠崎「お久しぶりです。」
蘭「前に若狭がしでかした後始末の時には、世話になった。ありがとう。」
篠崎「いえいえ、単なるビジネスですから、礼には及びません。」
俺たちの住むこの屋敷を見つけてくれたのも、篠崎だった。
篠崎「それより、蘭さんがメールで済まさず、直接会って依頼するなんて珍しいですね。」
蘭「ああ、かなり厄介な案件だからな。お前の部下は連れて来てくれたか?」
篠崎「はい。メールで連絡頂いた通り、2人連れて来ました。部屋の外に待たせてあります。」
蘭「裏庭の離れに若狭を閉じ込めてある。これが離れの鍵だ。手錠はかけてあるが、暴れるし、1人で置いておくのは心配なので、そいつらで見張っていてもらえないか?」
篠崎は鍵を受け取ると、ドアの外にいる部下に手渡して指示を出した。
篠崎「今回も若狭さんのことですか?」
蘭「ああ。事情があって、若狭をこの屋敷から遠ざけたい。二度と俺の目の前に姿を現すことのないようにしたいんだ。」
篠崎「それだと…。日本国内より、海外に出した方が安全ですね。パスポートを取り上げれば帰って来れませんし…」
蘭「お前が一番いいと思う方法でやってくれ。」
篠崎「若狭さんがなるべく快適に過ごせるように尽力します。」
蘭「そうしてくれるとありがたい。ただし…、日本国外にでた後で、もし若狭が暴れてどうしても手が付けられないようなことがあれば、その時は…その生き死にの判断はお前に任せる。」
篠崎は片方の眉をわずかにあげた。
篠崎「報告書はどうしましょう?」
蘭「いらない。…いや、何か変わったことがあった時点で、例のメアドに添付書類として送ってくれ。固有名詞は抜きでな。」
篠崎「わかりました。」
蘭「これは手錠の鍵だ。若狭の移送先が決まるまで、例の離れは自由に使ってくれていい。」
篠崎「請求書は?」
蘭「いつも通りの方法で送ってくれ。」
篠崎「先ほどこちらへ案内してくれたお嬢さんは、新しい家政婦さんですか?」
蘭「ああ。まだ非公式だが、俺の婚約者でもある」
篠崎「それは! おめでとうございます。それで、今回の仕事依頼になったわけですね。」
蘭「余計な詮索はするな」
篠崎「これは失礼しました。」
篠崎に若狭のことを依頼して、俺はほっとした。あれだけの諍いをしたとは言え、実の弟を排除する作業は、精神的にかなり堪える。
若狭には「おまえを憎んできた」と言ったが、妹亡きあと、若狭はたった一人の弟であり、肉親としての愛情もあることは事実だ。
若狭には幸せになって欲しいと思っている。俺の美緒に手出しさえしないならば…。
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その3
美緒がおずおずと話しかけてくる。
美緒「あのう…」
蘭「なんだ?」
美緒「若狭さんは?」
蘭「暴れて手が付けられないので、人に来てもらって面倒を見てもらっている」
美緒「私が、話してみましょうか? 若狭さんも落ち着けば…」
蘭「お前は余計なことをしなくていい!」
つい声を荒げてしまう。
蘭「それにお前の声を聞いたら、かえって若狭は手に負えなくなるだろう。今はしばらくそっとしてやった方がいい」
美緒は少し不満そうだった。今まであれだけ仲良しだったのだから、確かに気になるだろう。それでも俺は、美緒には若狭ではなく、俺のことをもっと見て、もっと考えて欲しかった。
しかし、俺には若狭のように美緒を楽しませるような会話ができなかった。何を話題にしたらいいのかすら分からなかった。
俺は途方に暮れた。
美緒はなぜこんな俺を選んでくれたのだろう?
蘭「おまえ…。なんで俺を選んだんだ?」
美緒「私は…。お2人のどちらもそれぞれいいところがあって好きです。でも、ここ最近の若狭さんには、時々得体のしれない怖さを感じることがあって…、若狭さんを選ぶ気にはなれませんでした。」
俺はため息をついた。
蘭「俺が選ばれたのは、単なる敵失か。」
美緒「そんなことはないです。蘭さんのことが好きなのは本当です。」
蘭「別に無理しなくていい。」
美緒「蘭さんは、最初は気難しくて、とっつきにくかったけど…、少しずつ知っていくと、水が少しずつしみ込むように、私の心に入って来ました。蘭さんは優しい人なんだと私は知っています。」
少し照れくさくなって、俺は話題を変えた。
蘭「おれは仕事をするから、紅茶を入れて部屋に持って来てくれ」
美緒「わかりました」
部屋にもどり、PCを立ち上げる。今日一日ゴタゴタしていて出来なかった、会社の業務の報告書に目を通し、指示のメールを打つ。
おばあさまには、若狭が海外に出ることになったと適当な理由をつけて報告しないといけないな…。定期的なご機嫌伺いも、これからは俺がいかなければならない。あの人のことは本当に苦手だが、美緒を確実に手に入れるためにはそれも致し方ない。
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数日後、若狭のとりあえずの移送先が決まった。
若狭を移送するところを美緒には見せたくなかったので、少し離れた大きな町での買い物を頼んだ。
篠崎の部下2人に付き添われ、手錠をかけられたままの若狭が離れから出て来た。
日に当たらず、食欲もなかったのか、少しやつれて青白くなっている。これからどこに連れて行かれるのか分からず、不安そうだ。
若狭「兄さん。僕をどうする気?」
蘭「お前を預かってくれる人ができたので、頼むことにした。お前の荷物は、最終的な目的地が決まれば全部送り届けてやる。」
若狭「でも、その中には美緒ちゃんの写真は入ってないんだろ?」
蘭「当たり前だ」
若狭「美緒ちゃんは? お別れを言いたい」
蘭「買い物があったので、使いを頼んだ。いまは留守だ」
若狭「兄さん、ひどい! 美緒ちゃんを僕から取り上げた上に、お別れも言わせてくれないなんて!」
蘭「会えば、別れが辛くなるだけだ」
若狭「兄さんは鬼だ! 兄さんのことは一生許さない。」
蘭「ああ、好きにしろ」
若狭は車に乗せられ、去っていった。ヒバリが鳴き、暖かな春の日差しが降り注ぐ田舎道を車はゆっくりと進んでいく。俺は車を豆粒のように小さくなるまで見送った。
「あばよ! 俺の半身…。」小さく呟いた。
庭の桜のつぼみが膨らんでいる。今年は桜が咲くのも、いつもより早いかもしれない。
蘭endで、若狭はどうなったか?おわり
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玄関のチャイムが鳴っても、「若狭がいないから、自分が出ないと行けないのか?」と悶々としていたのと同一人物とは思えないような蘭です。ww
とにかくヒロインを若狭から守り、自分のものにするという目的のためにはなりふりかまってはいられないわけですね。苦手なおばあさまの相手も自分がこれからはしなければ!!(若狭がいないので)と決心する蘭。なんか可愛い。
蘭endの告白の中で、ヒロインの手を握って、「お前に触れるのはこれが初めてだったな…」と呟くシーンがある。
ひと月の間何してたんだよ!と思ったけど、蘭にとってはいっぱいいっぱいだったんですね。ヒロインに触れるのを忘れるくらい。
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