糸乃こまりのストーリー

川柳と俳句と小説〜下町とチワワはhttps://plaza.rakuten.co.jp/daigotyokotan

シナリオ


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45 探偵

2025-03-12 11:37:59 | 世界一周ひとり旅

45 探偵


聡美は裕子と別れてから階段を上がろうとしてふと足を止め。結局部屋に戻らずデッキに出て行った。だが階段の上では来るはずの聡美を二人が待っていたのだ。スタッフの3番と28番だった。二人は聡美を追いかけた。そしてデッキで二人でぐるっと回って聡美の前に立った。驚いた聡美。
「あら スタッフさん どうしたの? お二人とも いつもの格好とは違って」 
 先に話し出したのは28番だった。
「二人ともお休みなので」
「あら そうなの?」
「あの」
「なんですか」
 三人はだまってしまった。今度話したのは3番で
「今日お二人で講義場にいらっしゃったのを拝見しました そのあと喫茶店にいらして男性の木村さんもお会いに」
 呆れた顔をした聡美。
「まるで探偵ね」
 だが聡美はいそうぃってから頭をかかえて目を閉じた。
「ああ ごめんなさぃ 心配してくれたのに ただ裕子さんだいぶ調子がよくて」
 だが目を開けたら二人ともいなかった。
「えっ ええ?」
 二人はすでに遠くにいた。聡美が「待って」といって少し追いかけたが3番は振り向かず背中で両手で×と記した。聡美はあきらめてデッキに戻ると祐子が立っていた。
「ゆ 裕子さん どうしたの?」
「聡美さんこそどうしたの?」
「なんだか海が見たくなって」
「私も! 戻ってきたら裕子さん階段上がって行かなかったから」
「ああ そうなの?」
「あのお二人はどなた? 聡美さん(探偵ね)って叫んでた」
 二人の沈黙。そのときデッキに近づいた人たちの中から一人の男性の声が聞こえた。
「幸せだなあ 僕は君といるときが一番幸せなんだ 僕は死ぬまで君を離さないよ いいだろ」 
 早速はしゃぐ裕子。
「加山雄三さんね」
「日本男子の古風な厳しさとおおらかで明るい西洋の男のよさを併せ持った男性」
「さすが 聡美さん」
 デッキの前ではいつのまにか人々が集まって来た。太くて低い男性が大声で
「タムタム 歌え!」
女性の声でも
「タムタム」
「有名人かしら 聡美さん知ってる」
 首を振る聡美。
「田村です タムタムです!! それでは (海 その愛)歌わせていただきます」
 拍手があふれた。

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44 おばさんとあげまん

2025-02-26 15:39:18 | 世界一周ひとり旅



裕子と聡美が座っていたテーブルに近づいてきたのは

13 メインデッキ

で登場したスズキムタクだった。

「スズキです 片山さんお久しぶりです お二人の席に寄せていただけますか?」

「どうぞどうぞ」

 聡美も

「あっ どうぞ」  

 スタッフにコーヒーを頼みながらスズキムタクは同じテーブルに座る。 

「この船に初めて乗った時ウロウロしてたらスズキさんに声をかけて頂いて助かりました」 

「それは私も同じですよ」

「でもスズキさん 頬が少し赤いですね」

とくすくす笑った裕子。

「実は私も講義聞いてたんですよ ざわざわした声があった方を見たら片山さんがいらした いっぱい飲んで元気を出して片山さんを探したんです」

「あらぁ でも講義おもしろかったですね」

「そうですか? オバサンオバサンじゃあね 皆さんはレディなのに」

「ですよね」

と聡美は納得。

「それに教授じゃなくて映画の監督も私の妻はあげまんですといったようなもの」

「嫉妬ですか? スズキさんの奥様も聡美さんも私もあげまんなんですよ」        今度はくすくす笑うスズキ。

「自分のことをあげまんって言う人はあげまんじゃない」

「そうか」 

 また舌を出す裕子。聡美も楽しそうだった。

 廊下を歩きなが部屋に戻る裕子と聡美。立ち止まる別れ際。聡美は

「スズキムタクさんは奥様亡くしたの?」   と聡美。

「そう 私もそうだげど 船で一人の人はご主人や奥さまを亡くした人多いわ」

「そうでしょうね」   

「スズキムタクは話しててもまぁまぁだけど 私はパパのライバルの方がいいわ ただ病気にならないと会えないわ」

「えっ? 誰のこと?」

「内緒内緒」

 聡美に手を振って離れていく裕子。


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43 クレオパトラの鼻

2025-02-13 17:49:52 | 世界一周ひとり旅


講義場で人がいっぱい。並んで座っている裕子と聡美。
「私 宮尾登美子さんの『クレオパトラ』ずいぶん前だけど読んだわ」 
「お髭の教授さん 楽しみね」
 講義場の前の方でガイドが拍手する。お辞儀しながら髭姿の教授が皆の前に出てくる。   拍手があふれる。
 スライドが映る。暗闇の中で写真が写っている。教授の声で 
「いよいよ クレオパトラの写真です」
 石像の写真が写っている。
「『クレオパトラの鼻がもう二センチ低かったら歴史は変わっていただろう』は有名なセリフでしたが ただの小太りのおばさんだったそうですよ」  
「えっ」
「えー!?」
 女性のざわざわの声。 
「(小声で)あのざわつきはクレオパトラがおばさんだったら私たちもクレオパトラになれるの?ってこと?」
「(小声で)でも私たちはおばさんじゃないわ クレオパトラになれるかもしれないけど」
「聡美さん よく言う」
「裕子さんだってそう思ってるくせに」     舌を出す裕子。
 また教授は語る。
「美人ではないおばさんが何故あれほど有名になったのか それは機転の利く知恵とユーモアが男性に仕事をやる意欲を起こさせる力を持っていたのではないかと思うのです やはり女性は美人だけではダメ 伊丹十三監督の『あげまん』のような女性が男には必要なんです」
 深く考えずに拍手する裕子。   
 喫茶店でコーヒーを飲んでいる裕子と聡美。
「講義 おもしろかったわ」
 だがいつも冷静な聡美は
「あんまり おばさんおばさんて呼ばれるとね」
 聡美と喋っていた裕子が急に立ち上がってお辞儀した。聡美もその方を見つめた。 



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42 ツタンカーメン

2025-02-07 14:30:11 | 世界一周ひとり旅
ルクソール駅のバスから出てきた裕子と聡美。二人とも身体を伸ば。裕子は
「ひゃー 四時間ぐらい乗ったのね お尻が痛い痛い」   
 二人や他の人達の後に降りて来たガイド。
「車窓から見学出来たのはカルナック神殿 ルクソール神殿です 古代のファラオたちが神々のために造り上げた館で象形文字や壁画を見た記憶は決して失われませんように」
 「はい!」
と必要以上に大声で返事をしてしまう裕子だった。皆がくすくす笑う。でもガイドは反応してくれる人が嬉しい。
「そうです! これからはいよいよナイル河ほとりのホテルシェラトンでランチですよ 神のお恵みを」 
 祈りの真似をする裕子。
 豪華なホテルシェラトンにペチャペチャと   しゃべりながら入っていく皆さま。そしてフェリーボートに乗っていく裕子と聡美。
「ナイル河から西へ 東が生の街で西は死の街なんてねぇ」
と裕子。
「でも昔は死の街は人が住んでいなかったけど今の人は気にせず住むようになったそうよ」 
 川を眺めている裕子。
 そして最大のメインはツタンカーメンの墓。クルーズ船の人たちの集まりの一番後ろから歩いている裕子と聡美。裕子は
「ドキドキだわ」
「ツタンカーメンさまのミイラと会えるのよ でも裕子さんは変な夢を見るから ミイラさんも出てくる出てくる」
「やだー」
 その時前の方から声が聞こえる。気になる裕子。
「どうしたのかしら」
「ミイラさんが起き上がったのよ」
「もう」
 前の方の人たちから声が聞こえる。   ガイドも右指を立てて
「しーしー」
と小声でささやく。そして言った。
「本日のツタンカーメンは像の下のガラスのケースに入っております 本物はお目にかかれません」   
 裕子と聡美は顔を見合わせる。そして
「(小声で)お疲れでお休み?」
「がっかりー」
「よかったよかったでしょ」
とまたくすくす笑った。
 帰りの途中何台ものバスが並んでいたまま20分以上止まったいる。
 裕子はカーディガンをはおる。
「この国では肌を出しちゃいけないのよね」     「何かあったのかしら?」
 ガイドがバスを降りたがすぐに戻って来た。
「ここはのんびりした国で一日五回アラーの神様に祈りを捧げます 今は検問所の係りの警官がお祈りの時間だそうでもうしばらくお待ちください」 
 みんなで呆れて大笑い。
 聡美曰く
「この地方の言葉にインシャーラーというのがあるの アラーの神様のままという意味だそうよ 言い換えれば『なるようにしかならない』」
「へぇ 私も何だかわかるわ その気持ち」   うなづく聡美。
 動き出したバスで眠りかけている裕子。   聡美が裕子の肩を叩く。   
「寝ちゃいそう?」 
 聡美は唇の前に人差し指を立てて次は窓の外を指さす。裕子が同じ方向を見るとナイル河に沈む夕日が見事だった。 
「太陽も月も日本よりずっと大きい」   いってからあわてて、唇の前に人差し指を立てる裕子。ゆっくりと沈んでいく夕日。




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41 サファーガ

2025-01-29 14:42:45 | 世界一周ひとり旅


クルーズ船の裕子の部屋でいつものように化粧をしている裕子。船長のアナウンスが聞こえた。

「サファーガに入港いたします バスに分散してルクソールを目指します カイロの南560キロ紅梅沿岸に位置する本土側唯一の高級リゾート地です エジプトの本土の紅海沿岸は砂漠がそのまま海に落ち込む不毛の大地   

 空の青 砂漠の砂色 エメラルドグリーンの紅海は孤高の美しさに輝いています」

 今だに段ボールを上手に片づけていない裕子。この日も一つの段ボールの中の荷物をひっくり返している。そんな風に出かけるからクルーズ船のバスに最後に乗って来るのも裕子。今回も一番最後に入ってきた裕子だった。

 奥から裕子を呼ぶ聡美。

「裕子さん」

 返事をしながら隣りに座る裕子。

「お部屋の近くまでお迎えに行くのに」

「自分を甘やかしちゃダメ! ってそう思うの 自分が出来る時まで」

「裕子さん」

「それより教えてもらったからちゃんと持ってきたわ そのせいでバタバタしちゃったけど」      

 裕子はバッグの中からスカーフ 目薬 日焼け止め サングラス ウォーター 日傘 帽子を順番に引っ張り出した。

「裕子さん完璧よ カイロでは一年に五日間しか雨が降らないし 三月下旬は砂嵐がひどいそうよ」 

「さすが聡美さん」

「でもこの辺は初めてなの」

 何か答えようとしたがガイドの声がじゃまをする。

「エジプトはエジプトアラブ共和国です 広さは日本の2・7倍その97%が砂漠です 残りの3%がナイル6700mの緑地帯」

 裕子は感心して

「日本では考えられないことね」

「梅雨の頃は雨なんていやだいやだって大騒ぎしちゃうけどね」

 ガイドは後ろの方の人はどうせ聞いていてくれないんだろうと思ってさらに声が大きくなる。

「砂漠の人たちは砂漠は美しいとは思えない 

 厳しさだけを感じていました 緑に対する憧れが非常に強かったんですね 学校で先生が子どもに自分の家の絵を描かせると実際にはないのに家の周りにたくさんの木を描くそうですよ」

「ふうん 何気なく持っている物ばかりだけど日本にある物は全部感謝して大切にしなくちゃね」

 大きくうなづく聡美。

 

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40 紅海

2025-01-20 14:00:48 | 世界一周ひとり旅


 裕子は部屋で晩ごはんの時に着る洋服を選んでいた。船長のアナウンスが聞こえた。

「紅海に夕日が沈むのは左舷側です」

 裕子は左舷側の窓にへばりつく。少しゆがんで見えるが広い美しい夕日がもやに包まれていた。地平線の彼方にゆっくり沈んでいった。 

「パパ、一緒に見たいよ」

 涙が溢れる。

 化粧直しにバスルームの洗面所に向かうと 夕食の案内のアナウンスが聞こえた。

 裕子がクルーズ船のダイニングルームに近づいていくと何人かの女性たちの真ん中に聡美がいた。

 遠ざかろうと思った裕子だったがやめて思い切って聡美たちに近づいた。

「マサラマレン 貴女に神のお恵みを」   

 怪訝な顔の女性たち。お辞儀をして離れる裕子。ため息をもらすが少しほっとした顔になっている。

 裕子は後ろから肩を叩かれる。

 振り向くと聡美が笑顔で立っている。

「お隣りいい?」

「でも皆さんは?」

「貴女の神の恵みを 裕子さんはオマーンの言葉をよく覚える みんなきょとんとしてた」 

「この頃いつも何でも必死よ」

「裕子さん」

「聡美さん えっ! 泣いてるの?」

「マサカ 嬉しかったの」

 二人は自分たちが座れる席を見つけた。 

「ここにしません?」

 聡美もうなづきながら

「でも私 パパと聡美さんが浮気した夢見ちゃって 嫉妬しちゃって」

「ええ? 何それ?」

 座りながら舌を出す裕子。スタッフが二人に近づく。

「本日のスペシャルディナーでございます」

 二人の前にお品書きを置いていく。裕子は

「わぁ」

 とお品書きを読みながら

「このわたの小鉢 おひたし 次はエビ ホタテ えのき 鮭 しらたき ネギ 豆腐のお味噌仕立て鍋 サイコロステーキにサラダ

 漬け物 ごはん きしめん 和菓子 盛りだくさんだわ」

 くすくすと笑う聡美。

「食べるの大好き でも聡美さんと一緒に食べられるのが幸せ気分」

 テーブルにこのわたの小鉢が来る。

「あー おいしそう 聡美さん おビールいただいちゃおうか」

「賛成」

 と聡美がスタッフを呼んだ。

 その後クルーズ船のデッキをウォーキングしている裕子と聡美。夜の海は真っ暗闇。星だけがまたたく。

「宇宙の孤独ってこんなものかしら? それともこれが死の世界?」

「裕子さん」

「あっ!?」

「裕子さん どうしたの?」

「紅海に感動したんだけど 写真撮るの忘れてた ほんと私ってうっかりもの」

「裕子さん かわいい人よ」

 嬉しそうな裕子だった。 


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39 ラクダかシカか

2025-01-18 14:21:35 | 世界一周ひとり旅

一方裕子と聡美はバスに乗りサラーラ博物館見学はじめ ゴールドスーク見学 アルプスん宮殿 アルバラード遺跡など車窓観光していた。

 最後にラクダのいるところでバスを降りて自由に写真を撮れた。

 聡美は前も船に乗ったこともあっていつもみんなに認められて中心にいる。だが裕子はそうでなく今度も一人でラクダの写真を撮っていた。

 ガイドがいった。 

「ここではラクダの数はいつも登録されています。ラクダが車道を横切る時には必ず車は止まらなければいけません。運悪くラクダをはねてしまったら罰金を払わなければいけません」

 撮り終えた裕子が聡美を探すと聡美は他の何人かの女性と話をしていた。みんなの楽しそうな声が聞こえた。裕子は「聡美さん」と呼んだが聞こえないようで諦めて一人でバスに戻った。

 しばらく経つと聡美がバスに戻って来た。真っ青な聡美。

「裕子さん 探したわ」

「私も探したわ」

「気がつかなかったわ」 

「聡美さんはファンが多いから」

「そんなこと」

「それより昔のこと思い出したの」 

「何?」

 言いながら席に座った聡美。

「日本にはラクダ事件はないけど大昔奈良で鹿事件があったの 自分の家の前で鹿が死んでいるとその家の者はみな処刑されるから早起きして自分の家の前にもし鹿が死んでいたらよよその家の前に置いて来たそうよ 鹿は春日さん 春日神社の神様のお使いとされていたから」

「そんなこと知らなかったわ」

「子どもの頃オバァちゃんがそんな話をしてた 子どもの頃のことをよく思い出すの」

「生き物も命はみんな一つだものね」

「サスガ聡美先生」

「もう」

 クスクス笑う二人。バスが走り出した。


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38 ベッドメイキングのE子

2025-01-18 14:10:26 | 世界一周ひとり旅


E子はベッドメイキングルームにいた。

31 パパのヤキモチ

の次の日だった。

 ドアを叩く音が聞こえたのでドアを開けた。それが片山さんだった。

「片山と申します」

 そうは言ったけど真っ青な顔をしていた。

「片山さま お客様とうなさいましたか?」

「私はシーツは毎日は変えないの」

「お客様によってシーツをどう変えるか お好きに言ってくだされば」

「ちょっと汚しちゃったから 変えたくて それを言いに来たけど道に迷ってぐるぐる 一時間は経ってるんじゃないかしら」

「一時間ですか お電話くだされば伺います シーツを変えます」

「でもドッチャラかっちゃらで部屋の中を見せたくないの」

「はぁ」

「それに部屋にネズミがいるの」

「マサカ 船にはネズミはいませんよ」

「本当? だけどタイタニック号にはネズミがいたでしょ」

「この船はタイタニック号ではありませんから」

「あぁ そうだったわね」

 と楽しそうにクスクス笑った。あんなに真っ青で困った顔をしていたのに違う人のようだった。結局E子はシーツを持って片山さんを部屋の近くまで送って行った。本当にネコは飼っていないのかわからない。

「片山さま ネズミはいないと思いますけどネコはいませんか?」

「ネコ? いいえ 私は動物は苦手なの 娘は何とかいう小さい犬が大好きでそれはそれは可愛がってるけどね」

 にこやかに答えた裕子だった。それならいいけどね。片山さんについてはかなり心配だとE子は思った。でも片山さんがネコは苦手でよかった。実は誰にも言っていないけどお客様が飼っていたネコが逃げ出して頼まれて追いかけたとき捕まえた。なのにうっかり海に落としてしまったのだ。もちろん誰にも言えない言わない言うわけがない。そしてそれ以来ネコが怖くて怖くてたまらなくなってしまった。

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37 3番のトキメキ

2025-01-18 14:01:18 | 世界一周ひとり旅


E子に会えると思った3番は小走りになっている。デッキに出るとE子は海を見ていた。若い頃年上の女性たちはみんな上から目線で何を言っても相手にされなかった。それが今は自分が上から目線で誰のこと信用しなかった。それがE子だけは違った。若くて可愛くて爽やかで賢い。付いた3番はE子の背中に言った。

「お待たせ」

 振り向いたE子は答えた。

「船で走ってはいけませんよ」

「そうだったわね」

「それでどうでしたか?」

「片山さんはオプショナルツアーのバスに乗ったみたい だけど片山さんの部屋に行ったら彼女がいて」

「彼女って今日の午前中は休みだった人?」

「そう だけどスタッフの格好をしてたわ」

「ナゼですか?」

「わからない でも片山さんのことは心配みたい」  

「気になりますね」

 E子はまるで探偵みたいだった。 

「私は先日飲みすぎた片山さんを送った時に初めて会話を交わしたけど別に ただ部屋はドッチャラかっちゃらだから近づかないでって途中で返されたわ」

「とにかく片山さんはおかしいです」

「お客様よ」

「私も心配なんです 船にネズミがいるって言うけどそれはネコじゃないかと」

「マサカ」

「どっちが」

「どっちも」

「船にはどちらもいないわ」

「でも前に乗ったときこっそりネコを連れていらしたお客様がいらして 結局ネコは死んでしまいお客様は海に飛び降りたりするかと心配で心配で」

「へぇ そんなこともあったんだ」

 そう答えながら3番は別のことを考えていた。どちらかといえばネコがいい。ネコになってE子のペットになりたい。マサカ同性でしかもずっと年下の女性に惹かれるなんて思ってもみなかった。どうしてこうなったのか考えるのも怖かった。

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36 貴女に神のお恵みを

2025-01-18 13:50:51 | 世界一周ひとり旅
バスに乗る裕子と聡美。
 裕子はバッグの中をひっくり返している。 「裕子さん どうしたの?」
「あれが見つからない!!」
「あれって?」
「あれあれ」 
「スカーフ?」
「そうそう スカーフスカーフ この頃なんて言ったらいいか忘れちゃうことがあるの」
「みんなそうよ」
「でもスカーフ部屋に取りに行かなきゃね」
「裕子さん忘れたら困るから二つ持って来たの 裕子さんのピンクのスカーフほどキレイじゃないけど」
 子どもみたいに飛びつく裕子。
「よかった!! それでスカーフはどうするの?」
「バスでご説明しますわ」
「聡美先生 よろしくお願いしま〜す」
 ますますはしゃぐ裕子。
 バスに乗ってアル·パリード遺跡を通りヨブの墓をお参りした。
 聡美は話始めた。
 ヨブと言う人は色々な困難に会ったがただひたすらにアッラー(神)を信じたんです。それゆえに恵みを受け救われて以前より幸せな人生を送ったと言われているの。心境心の厚い人だったそうよ。そこをお参りするには必ず素足にならなければいけませんよ。そして女性は必ず頭にスカーフのようなものをかぶらなえれば行けなかったんです。
 聡美が裕子に黄色いスカーフをかけた。白いブラウスとよく合っていた。まるで裕子は妹のように見えた。
「オマーンの言葉で サラマレコン」 
「サラマレコン?」
「サラマレコン 貴女に神のお恵みを」
「貴女に神のお恵みを」
 抱きしめる二人。
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