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裕子と聡美が座っていたテーブルに近づいてきたのは
13 メインデッキ
で登場したスズキムタクだった。
「スズキです 片山さんお久しぶりです お二人の席に寄せていただけますか?」
「どうぞどうぞ」
聡美も
「あっ どうぞ」
スタッフにコーヒーを頼みながらスズキムタクは同じテーブルに座る。
「この船に初めて乗った時ウロウロしてたらスズキさんに声をかけて頂いて助かりました」
「それは私も同じですよ」
「でもスズキさん 頬が少し赤いですね」
とくすくす笑った裕子。
「実は私も講義聞いてたんですよ ざわざわした声があった方を見たら片山さんがいらした いっぱい飲んで元気を出して片山さんを探したんです」
「あらぁ でも講義おもしろかったですね」
「そうですか? オバサンオバサンじゃあね 皆さんはレディなのに」
「ですよね」
と聡美は納得。
「それに教授じゃなくて映画の監督も私の妻はあげまんですといったようなもの」
「嫉妬ですか? スズキさんの奥様も聡美さんも私もあげまんなんですよ」 今度はくすくす笑うスズキ。
「自分のことをあげまんって言う人はあげまんじゃない」
「そうか」
また舌を出す裕子。聡美も楽しそうだった。
廊下を歩きなが部屋に戻る裕子と聡美。立ち止まる別れ際。聡美は
「スズキムタクさんは奥様亡くしたの?」 と聡美。
「そう 私もそうだげど 船で一人の人はご主人や奥さまを亡くした人多いわ」
「そうでしょうね」
「スズキムタクは話しててもまぁまぁだけど 私はパパのライバルの方がいいわ ただ病気にならないと会えないわ」
「えっ? 誰のこと?」
「内緒内緒」
聡美に手を振って離れていく裕子。