糸乃こまりのストーリー

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今日いち-2024年11月28日

2024-11-28 10:19:56 | 下町
お散歩〜
浅草へ
向かってます
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23 インド洋の海水

2024-11-28 10:13:34 | 世界一周ひとり旅
インド洋の海水を引いてプールになっている。裕子はインド洋で泳ぐなんて一生に一度出来事だとさっそく申し込んだ。ただこうやって船に乗ることは1人分300万ぐらいで済むらしいがインド洋のプールで泳ぐとなると別に必要になる。アップする。また別に申し込むとアップする。最後はアップアップの裕子だ。
 そんなことより裕子が心配したのは別のことだった。ベッドの横に置いてある時計がカチッカチッとするだけで静かだ。誰もいない。裕子はバスルームにいた。息を止めたのにギチギチ音がする。裕子が持ってきた水着が縮こまっている。イヤ、縮こまったわけではなくて船に乗って美味しいものばかり食べて来たから身体がぶよぶよになっただけ。汗がどっと出てきた。要するに冷や汗😅
 みんなでプールに入った。まるで女子高生がプールに入ったような賑やかな声。プールの周りにスタッフの何人かが立っている。その中の一人。
「はーい、皆さん!! ゲームを始めま―す。もしかしてまさか泳げない方はいらっしゃいませんよね」
 みんなでコクンとうなづいたが裕子が叫んだ。
「私泳げません!」
 どっと笑い声。スタッフも苦笑いで
「では水の中で歩くゲームをしましょう」
 舌を出した裕子は周りの人に謝った。少し離れていた聡美が人をかき分けながら近づいて来た。
「よかった! すぐに見つけられると思ってたけど人が多くてビックリ!! 泳げなくてよかったわ」
「なんか慌てて聡美さん探す余裕なくて」
 裕子は水着のお腹あたりにスカーフを巻いている。それがプールの水に漂っている。
「裕子さんおしゃれ!! 水着の白とスカーフのピンクがよく合ってるわ」
「いいえ、たまたま」
 水着はやっと着れたけど着てみるとお腹がまるで相撲取りに見えた。それに白い水着のあそこあたりのヒゲが少々長くて見えそうで気持ち悪い。女性用ひげ剃りは船にもあるだろうけど買いに行く時間も全くなかったからね。非常に緊張したプール遊びとなってしまいました。








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22 グリコアーモンド

2024-11-28 10:09:18 | 世界一周ひとり旅


クルーズ船の廊下を裕子は歩いていた。階段の途中で同じ階の夫婦と出会う。妻は上海のデパートで共に過ごしていた仲間。喜んで一緒に歩くことにした。

 彼女の話で今日のレストランではインド料理の有名シェフがインドカレーを作っているという。レストランに入り裕子は夫婦と同じテーブルに座った。食べるの大好きな裕子はもうワクワクしていた。頼んですぐにインドカレーが3人のテーブルにやって来た。

「いい香りですね!」

 妻も大きくうなづく。ナンも来た。ドキドキしながら口にする裕子。

「美味しい〜」

 喜んでパクパク食べる。ナンも食べながら

「ナンもカレーと合いますね!」

 妻を見ると困ったような顔をしている。夫は食べているが首をかしげている。キョトンとし頼んで裕子。

「カレー苦手ですか?」

「いいえ〜ただこの人(夫を見ながら)大好きなんですけど」  

「だったら」

 口元を隠して、

「好きなのはグリコアーモンド。アレ甘いでしょ。これとは違うそうですよ」

 クツクツ笑う裕子。他のテーブルを見ながら、

「グリコアーモンドはないようですけど、ナンの代わりにごはんはもらえるかも!」 

 聞いた妻は立ち上がってスタッフに近づく。夫は裕子に感謝していた。

 その時近づいて来る聡美。。

「裕子さん、こちらにいらしたのね」

「あら、聡美さん。おいしいから、私もごはんいただこうかしらと思って」

 ごはんを持って戻ってきた妻に挨拶しながら聡美は

「私はナンしか食べなかったわ」

 夫の前にだけご飯を置いた妻も

「私もごはんは食べません!」

「えーっ」

 と叫ぶ裕子。怪訝な顔になる。聡美と妻は二人でニヤッと笑って

「忘れちゃったの?」

「何だっけ?」

「ナイショ」

「意地悪ね」

 聡美と妻は声を合わせて

「今日はこれからプールよ!」

「あ〜。そうだった!?」

 立ち上がる裕子。

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21 浅野内匠頭

2024-11-28 10:02:34 | 世界一周ひとり旅

裕子は自分の部屋のベッドに寝転んでいる。ノートにメモを書いている。「寄港地上海、日本は清潔、シワ取りクリーム、クマ取りクリーム」

と思い出しながら書いている。

「あっ! シルクのパジャマ」

 と書きながら

「忘れてた!」

 ベッドから降りて、紙袋に入れたままのシルクのパジャマを引っ張り出す。

「試着試着」

 バスルームに向かう。数分経ってベッドルームに戻って来る。ピンクのシルクのパジャマを着ているが、鏡に写してゲラゲラ笑う。袖口も裾も長い。

「まるで松の廊下の浅野内匠頭だ」

 笑いながらバスルームに戻る途中にひっくり返ってベッドの角に頭を思い切りぶつけた。しばらくの間、頭をかかえる。またベッドに寝転ぶ。

「いたた」

 ベッドのテーブルにいつも置いてある小さな鏡で見るとコブが出来ている。 少々目立っている。裕の声が聞こえる。

「そそっかしいから気を付けて下さいよ」

 舌を出してコブによだれを付ける。    

 仕方なく裕子は船の診察室に出かけることにした。

 診察室は静かな部屋だった。たった一人でやってるのかなとキョロキョロと眺める。

 裕子の頭を見ている医師は頭を動かす裕子に少々困っている。

「母はくも膜下、父は脳軟化、私も血管弱いんじゃないですか?」

「大丈夫です。お薬付けましょう」

 と言いながら塗り薬を付けている医師は

「でもそそっかしいから気を付けて下さい」

 ハッとして医師を見つめる裕子の目から涙がボロボロ落ちてきた。

「どうしました?」

「主人が私によく言ってたんです。先生と同じこと」

 裕子にティッシュペーパーごと渡す医師。

「主人は先生と同じ仕事をしていたんです」

「なるほど」

 また泣く裕子。

 裕子は夜また部屋でベッドに寝転んでいた。ノートに「浅野内匠頭」と書いている。

そして裕の位牌を横目で見ながら「パパのライバル」とも書いて位牌の隣に置く。そして 電気を消した。

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20 初めての寄港 上海

2024-11-12 15:19:24 | 世界一周ひとり旅
クルーズ船の裕子の部屋で明け方グツグツという着岸のエンジンのエンジンの音がした。位牌もガタガタと動いている。隣りの時計は四時になっていた。よく眠っている裕子だった。

 上海バスで乗って並んでいる裕子と聡美。

上海通りではバスの両側には箱型の家が並んでいる。家の二階の窓から長い鉄製のパイプが張られ、それには長い竿がかかってある。

いい天気で竿にはにぎやかな服がパタパタと揺れている。 

 一番前のガイドが

「浅草の仲見世みたいなところです」

聡美は裕子に

「デパート行きます?」

 嬉しそうにうなづく裕子。

 デパートの玄関に付いた裕子だが

「私の用事ばかりじゃ迷惑かけるから、30分後にね」

 といい出して二人は別れた。

 自分が買い物したい時は他の人と別に行動すること、みんな同じものがほしいわけじゃないからね、人に押付けちゃだめだからね、と鞠子に言われたから。これじゃあ、どっちが親かわからないけど。

 裕子はまずは書道店に行き高そうな硯を買う裕子。そして寝具店でシルクのパジャマを購入する。

 そしてお手洗いお手洗い、すっかり忘れていたから見つけて入っていく裕子だが、ギョッとする。ドアには鍵が付いていないのだ。 バッグをぶら下げるフックも付いていない。

 30分後に玄関で出会う裕子と聡美。デパートを出ていく二人が並んで歩きながら、

「聡美さん初めてじゃないから知ってたんでしょ。トイレ汚いのね」

聡美「びっくりでしょ」

裕子「日本のトイレはとても清潔。ありがたいありがたい」

 そんなことを言いながらバスに乗り込む二人。

 上海バスで金融街を行く。バスから街を眺めると建物は全てヨーロッパ調。

 また別のデパート到着。入ってきた裕子と聡美。クルーズ船仲間の何人かと会う。その中の二人

「ここのシワ取りクリームいいそうですよ」

 裕子は聡美を見る。

「知らない知らない」

 と首を振る聡美。

「私10個、こちら30個」

「とてもいいんですよ〜。私はあとはイタリアのオリーブ油、それだけ」

 シワ取りクリーム、イタリアのオリーブ油とメモを書く裕子。

「ママ、みんな同じもの買わなくていいのよ」

 早速化粧品売り場に到着した裕子と聡美もシワ取りクリームを購入。また別のクルーズ船仲間の二人の女性が近づいて来た。

一人の

「クリーム買った?」

 の言葉に嬉しそうに

「買った買った」

の裕子は10個のクリームを見せる。

「じゃなくて他にもあるのよ」

「他の人に聞いたんだけどクマ取りクリームもいいそうよ!」

 いいながら二人はクマ取りクリーを10個見せた。顔を見つめ合う裕子と聡美。

 中国服販売場ではクルーズ船の仲間たちがかけてある中国服を眺めている。裕子と聡美もいる。その中の一枚を裕子にかけてみる聡美。

「えー」

 といいながらまんざらでもない裕子。更衣室で着替えている。

「ジャジャジャジャーン」

 中国服を着て出てくる裕子。モデル風仕草に仲間たちがキャッキャッキャッキャッ喜んでいた。
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19 聡美の生霊

2024-11-12 15:12:17 | 世界一周ひとり旅



廊下をてくてく歩いている裕子。そしてぺちゃぺちゃ自分の心と話をしている。A対Bみたいなもの。
「今日はどんな服を着る?」
「あら、勝手に船が決めるときもあるのよ」「何それ?」
「何それ? よね」
 裕子はたまたま出会ったスタッフに近づいた。近づいて来た裕子ににっこり笑うスタッフだが裕子はにっこりというより心配事があった。  
「私、ドレスコードがイマイチわからなくて。今日はどんな服を着るか船に決められる日もあるんですよね」
「そういう日もあります」
「そんな〜」
「特に詳しいアドバイザーがおりますからご相談いかがですか?」
 裕子は大きくうなづいた。   
 サロンルームでは何人かの客の中央で話をしているアドバイザーがいた。
 裕子を連れたスタッフがアドバイザーに近づいた。
「お客さまがドレスコードのことをお聞きしたいそうです」
「そうですか、どうぞどうぞ」
 と言いながらアドバイザーは裕子の椅子を持って来た。 お辞儀して裕子もイスに座った。
 前にあるボードに書きながら話すアドバイザー。
「フォーマル、インフォーマル、カジュアルがあります」
 と書いてから手を止めて座っている何人かの人たちの顔を順番に見る。
「皆さまの中にはお子さまのいる方もいらっしゃいますよね」
 何人かがうなづいた。裕子も隣りの女性を見つめる。彼女も同じようにうなづいた。
「お子さまがご結婚なさった時はさぞや大変でしたでしょう。そのくせ黒の留め袖でジミーにしなくちゃいけない」
 またまたうなづきあう女性たち。
「今のことは横に置いておきましょう。今、大事なのはフォーマルです」
 「注目!!」
 やっぱりアドバイザーって人を引き付ける仕事なのね。学生時代の注目と同じかもしれない。私はこうはなれないと裕子は思っていた。
「フォーマルは甥御さま姪御さまお友だちの娘さんの結婚式がよろしいです」
 ホォー、大きくうなづく裕子たち。
 裕子は帰りの廊下でサロンルームで近くにいた女性たちもいた。みんな一緒なんだなと裕子はつくづく思った。
「勉強になりますね。インフォーマルは同窓会、カジュアルは父兄会の感覚で」
 一人の女性がにっこりと笑った。後ろから小走りに来た別の女性が笑顔の彼女を 「聡美さん」と呼んだ。笑顔の聡美さんが振り向いた。
「あ、明日のことですか?」
「よろしくお願いします」
「こちらこそです」
   お辞儀をしながら去っていく女性。
「聡美さん、うちのお嫁ちゃんと同じ名前!」
「あら、いいお嫁ちゃんですか?」
「ぼちぼち」
   聡美は笑いながら
「それより明日のご予定は?」
「まだ何も」
「でしたら、ご一緒しません? 寄港デビューですよ」
「わぁ、聡美さん、是非是非。私、裕子です」
   握手する二人。
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18 ドレスコード

2024-11-06 06:10:28 | 世界一周ひとり旅
ベッドで横になって「一人ぼっち」と書くと例によってグスグスと泣き始める裕子。そしてまたいつしか眠っていた。どれぐらい時間が経ったのだろうかドアでコトンという音がした。目覚めた裕子がは立ち上がりドアに近づいた。廊下から部屋に差し込まれたのはクルーズ船の新聞だった。手にした裕子は今度はベッドであぐらをかいて読みはじめた。パラパラと目にしていたが一つのコーナーに目が止まった。
 〜ドレスコード〜
 ベッドの横の小さなテーブルには裕の位牌と写真とノート。そして眼鏡、半分に折れる小さな眼鏡だが〜ドレスコード〜の下の文は少々小さかったの眼鏡は大事。こんな風に書いてあった。 
 ドレスコードとは「服装規定」の意味。 場所や時間、シーンに応じた服装の基準・ルールのことで、その場の雰囲気を壊さないため、周りの人の気分を害さないために定められる。
 高級ホテルやレストランなどではドレスコードが決められていることがあり、スーツやドレス、ワンピースなどの服装が適切とされる。
 読みながらまだハッとして段ボールに近づく。
ん!?
 のんびりとベッドであぐらをかくどころじゃない。その前に一人ぼっちと泣いてるどころじゃないんだ。裕子は段ボールを開けて中の洋服をいくつもひっぱりだす。まだ別の段ボールに近づく。そして叫ぶ。
「ない!! じゃあどこにあるの!?」
 一人も部屋の中ならおしゃべりできる。そして相手は自分だけ。とてもカワイイ生き物です。






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17 パパ

2024-11-06 06:01:53 | 世界一周ひとり旅
船内のモーニングルームで窓の外を見つめる裕子。コーヒーを運んでくれた外国人は若いスタッフだった。
「ありがとう」
という裕子にお辞儀して戻って行くスタッフ。
「あなたはどこの国の人?」
「フィリピンです」
「フィリピンではありがとうは?」
「タガログ語でサラマッポです」
 裕子にサラマッポと言ってお辞儀する。お辞儀して戻るスタッフ。ゆっくりと時間が流れていった。
 裕子が海がよく見える場所に行くと賑やかな声が聞こえた。たいていご主人が奥さんを写真に撮っている。その時二人が交わす言葉。だけど一人の人は何も言わない。心で思うだけ。裕子がキョロキョロ眺めるとイスに座っている一人の女性が見えた。裕子が近づくととてもいい笑顔を見せてくれた。裕子が何か言おうかと思った途端、彼女は立ち上がって手を振った。
「主人です」
 裕子が振り向くと男性が近づいて来た。
「主人は船中ウォーキングしてました。これから朝食、その後はジム通い」
「ジムいいですよ」         
近づいてそういうご主人に
「マッチョですか?」
と笑顔になる裕子に
「いやー、毎日ジムに行きますからいらしていただいたらお見せしますよ、マッチョ」
「やぁねぇ、余計なことを言わないの」
と言われて引っ張られて遠ざかっていく。
 去っていく二人の背中を眺める裕子。一人と二人は付き合えない。一人にはやっぱり一人がいい、そう思った裕子が飛び上がった。パパ! 忘れてた!! 
 裕子は家を出掛ける時に大きなバッグに花柄で包んだ裕の位牌を入れていたのにすっかり忘れていた。
「パパ! ごめんなさい」
 ベッドの隣りにあるテーブルに裕の位牌と小さな写真を飾った。それからノートを出して来た。そして靴を履いたままベッドに寝転んで書き始めた。1ページ目に書くのは スズキムタク 桜と梅 至福の夜 フィリピン語でサラマボ マッチョ そして最後に書いたっけ
「一人ぼっち」

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16 至福の夜

2024-11-06 05:57:56 | 世界一周ひとり旅
裕子は一度自分の部屋に戻ったがまた部屋を出た。
 廊下を歩いて一つの部屋の前で止まった。
マを小さく叩いたら何も言わずドアが空いた。 
「お邪魔します」
と入ってゆく裕子。少し経ってから廊下で裕子の声が聞こえた。  
「あっ、そこです。至福の夜〜たまりませんわ」
 廊下の壁の時計は10時30分を指していた。 
 部屋にいる裕子以外の声は聞こえなかったから一人でおしゃべりに夢中になる裕子だった。
「始めは片山さんだったのにいつの間にか裕子さんに変わっていて」
 そう言ってはクスクス笑っていたがまた急に声が変わった。
「あっ そこで〜す あぁ シアワセ」 
と叫んだ。

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15 梅と桜

2024-11-06 05:46:24 | 世界一周ひとり旅

裕子がクルーズダイニングルームの入口に 近づいたらもうスズキムタクは待っていた。二人でメインテーブルに入っていった。スズキムタクはキョロキョロ眺めて

「今日は自由席だそうですね、どこにします」

といった。

「じゃあここに」

と裕子はすぐそばのテーブルにした。

「そうしましょう」

 二人で向き合って座りかかると途端に近づいてくる二人の女性がいた。一人が

「よろしいですか?」

という。突然の言葉なので

「ハイ」

と答えてしまった裕子。言葉には出さなかったけどスズキムタクに「いい?」と目で聞いていた。スズキムタクは愛想よく「どうぞ」と答えた。空いている四人テーブルは他にもあったけどだからって断るほどもなかったからだ。

 食事しながら四人の会話はこんな風だった。近づいてきた二人はどうやら姉妹だそうで上がサクラコ下がウメコ。ウメコの方がよく喋る。見た目はあまり変わらないけれど名前のせいで下の子の方がひがんでいたのか自分を主張してきたのかずっと喋っている。裕子はそんな気がした。桜と梅じゃね。梅は花というより梅干しだ。シワシワでオバァさん。裕子がそう眺めていたら当然ウメコは言い出した。

「ご夫婦で世界一周羨ましいです」

 裕子は「えっ!」と息を止めるようにして

「違うんです。さっきお知り合いになったばかりで」

「妹は余計なことを言う子なんです。すいません」

 やっぱり桜が付いた名前だから余裕を持って生きてるなぁと裕子は思っていた。結局最後のウメコの話は梅干し。

「身体にいいの」

で終わった。 

 メインテーブルを裕子とスズキムタクは出ながら笑っていた。

「笑いが止まりませんでした」

「私は上手に話せない方なんで裕子さんにどう話したらいいか悩んでました」

「私もです。桜と梅のおかげですね」

 と言って別れた。

 メインテーブルでサクラコとウメコはまだコーヒーを飲んでいた。ウメコは

「夫婦じゃなくてよかったわ」

「ウメコ好み」

「それより持ってるかしら? 名前聞いとけばよかった」

「真っ赤な糸がつながってたら、また会えるわよ」

「ホントお姉さんは。楽天家」

 呆れ顔になる。




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