糸乃こまりのストーリー

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5 一千万円!?

2024-09-17 13:37:27 | 世界一周ひとり旅

鞠子は自宅で座ってケイタイを右手で持ちながら、左手で洗濯物をたたんでいる。近づいてきたチワワがたたまれていた靴下を加えようとしていた。

「だめよ。ダメダメ」

 ケイタイの相手の裕子の声がした。

「ダメなの?」

 靴下を取り上げながら鞠子は

「何のこと?」

「旅行のことよ。ねェ、いいでしょう?」

「別に私に聞かなくたって。でも誰といくの?」

「初めての一人旅」

「えーっ」

「それは大丈夫。はじめは一人でも向こうに行けば沢山いるの」

「ああ、団体旅行ね」

「あのねェ、もう少しオシャレな呼び方あるでしょ」 

「はぁ?」

「一千万円もかかるんだから」

 鞠子はギョッとした顔になる。ケイタイの

向こうでピンポーンと鳴った。

 裕子の自宅は二階。裕子は二階の玄関を開けながらケイタイを切った。

 ドアを開けると宅急便屋がお辞儀をした。

「お兄さん、ありがとうねェ」

 何束もの段ボールを宅急便屋が持っている。

「他にもあるんですけど、持ってきていいんですか?」

「お願い」

「お引っ越しですか?」

「昔の私とお別れするの」

「えっ?」

「いやねぇ。離婚じゃないわよ」

 裕子ははしゃいだ。まるで子どものようだった。

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4 銀座四丁目でお亡くなり

2024-09-17 13:16:13 | 世界一周ひとり旅



裕子は銀座を歩いていた。

 文房具屋さんに寄ってから銀座四丁目を目指す。突然銀座四丁目あたりでチャイムの音がした。小学校音? でも通っていた銀座の小学校のチャイムは確か違う。昼のごはんの12時だ。犬は体内時計を持っているけど人間だって同じだわと裕子は思った。特に戌年の鞠子は12時頃になると機嫌が悪くなる。

 「鞠子ちゃんは銀座一丁目駅から歩いて四丁目に向かうのよね」

と裕子は思ってキョロキョロ眺めたら偶然鞠子を反対側に見つけた。犬みたいにお腹すかしている鞠子が小走りになった。

「鞠子ちゃん慌てないで転ばないで」

 叫びながら鞠子のところに走り出した。クラクションの音がした。叫び声。

 一軒家の二階。ガバっと飛び起きる裕子。   暖かい冬の朝昼。

 慌てて電話に飛びつく裕子。受話器を取る鞠子に

「鞠子ちゃん、私、死んじゃったのよ」

「ママ、死んだ人は電話出来ないの」

「だって、銀座であなたを助けるためにひかれたの。雑誌に出るかも」

「その程度の出来事は雑誌に出ないの。忙しいからまたね」

 切られた受話器にため息交じりの裕子。裕の大きな写真に目を移して、

「パパ、もう3年ね」

 裕子が目を閉じれば走馬灯のように蘇る。写真を引っ張り出して、アルバムの中の過去に戻っていく。

「お姑さんはきつかったけど亡くなって。だけどすぐにパパを迎えに来ちゃった。私に取られたからヤキモチ焼いたんだわ」

 ゆっくりアルバムを眺めて行くと写真もカラーから白黒に変わる。ふと目を止める裕子。クルーズ船に乗っている若い頃の裕。

「パパ、船ってステキ?」

「素晴らしいよ、いつか一緒に乗ろう、世界一周」

 裕の写真を抱きしめる裕子。

「私、世界一周する。まだまだ死にたくないもん。しばらくはパパをお母さんに預けとくわ」

 あふれる笑顔 

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