ルクソール駅のバスから出てきた裕子と聡美。二人とも身体を伸ば。裕子は
「ひゃー 四時間ぐらい乗ったのね お尻が痛い痛い」
二人や他の人達の後に降りて来たガイド。
「車窓から見学出来たのはカルナック神殿 ルクソール神殿です 古代のファラオたちが神々のために造り上げた館で象形文字や壁画を見た記憶は決して失われませんように」
「はい!」
と必要以上に大声で返事をしてしまう裕子だった。皆がくすくす笑う。でもガイドは反応してくれる人が嬉しい。
「そうです! これからはいよいよナイル河ほとりのホテルシェラトンでランチですよ 神のお恵みを」
祈りの真似をする裕子。
豪華なホテルシェラトンにペチャペチャと しゃべりながら入っていく皆さま。そしてフェリーボートに乗っていく裕子と聡美。
「ナイル河から西へ 東が生の街で西は死の街なんてねぇ」
と裕子。
「でも昔は死の街は人が住んでいなかったけど今の人は気にせず住むようになったそうよ」
川を眺めている裕子。
そして最大のメインはツタンカーメンの墓。クルーズ船の人たちの集まりの一番後ろから歩いている裕子と聡美。裕子は
「ドキドキだわ」
「ツタンカーメンさまのミイラと会えるのよ でも裕子さんは変な夢を見るから ミイラさんも出てくる出てくる」
「やだー」
その時前の方から声が聞こえる。気になる裕子。
「どうしたのかしら」
「ミイラさんが起き上がったのよ」
「もう」
前の方の人たちから声が聞こえる。 ガイドも右指を立てて
「しーしー」
と小声でささやく。そして言った。
「本日のツタンカーメンは像の下のガラスのケースに入っております 本物はお目にかかれません」
裕子と聡美は顔を見合わせる。そして
「(小声で)お疲れでお休み?」
「がっかりー」
「よかったよかったでしょ」
とまたくすくす笑った。
帰りの途中何台ものバスが並んでいたまま20分以上止まったいる。
裕子はカーディガンをはおる。
「この国では肌を出しちゃいけないのよね」 「何かあったのかしら?」
ガイドがバスを降りたがすぐに戻って来た。
「ここはのんびりした国で一日五回アラーの神様に祈りを捧げます 今は検問所の係りの警官がお祈りの時間だそうでもうしばらくお待ちください」
みんなで呆れて大笑い。
聡美曰く
「この地方の言葉にインシャーラーというのがあるの アラーの神様のままという意味だそうよ 言い換えれば『なるようにしかならない』」
「へぇ 私も何だかわかるわ その気持ち」 うなづく聡美。
動き出したバスで眠りかけている裕子。 聡美が裕子の肩を叩く。
「寝ちゃいそう?」
聡美は唇の前に人差し指を立てて次は窓の外を指さす。裕子が同じ方向を見るとナイル河に沈む夕日が見事だった。
「太陽も月も日本よりずっと大きい」 いってからあわてて、唇の前に人差し指を立てる裕子。ゆっくりと沈んでいく夕日。
