「あの世とこの世とを自由に行き来した」とか「地獄でえんま大王の補佐をしていた」などの伝説が残る平安時代の超人・小野篁。
彼が開いたという、地獄のえんま大王を祀る「千本えんま堂(引接寺)」。
本シリーズでも何度かとりあげたスポットですが、今回はここに伝わる「千本えんま堂大念仏狂言」をとりあげます。
シリーズ前回でも少し触れましたが、この寺を開山した定覚上人が「えんま王の御心によって起された奇跡を伝えるため」に、つまり布教と、京の葬送地に葬られた人々の供養のために始めたものです。
こうした布教の進める中で寺社勢力が興した狂言を「念仏狂言」と言います。
これはら時代が経るにつれて宗教色も次第に薄れ、現在に至っています。
現在京都には、「壬生狂言」「神泉苑狂言」「嵯峨(清涼寺)狂言」、そして「えんま堂狂言」の4つの念仏狂言が残されており、それぞれ登録無形民俗文化財や無形重要文化財に指定されています。
ほとんどの念仏狂言が、囃子に合わせての無言劇なのに対して、この「えんま堂念仏狂言」にはほとんどの演目に台詞があります。
しかも現代人の我々にも平易でわかりやすい言葉ですので、鑑賞もしやすくなっています。
今回は、そんなえんま堂念仏狂言のうち、『雷(かみなり)』という演目の様子を紹介します。
念仏狂言開催時の千本えんま堂入り口の様子。
毎年5月のはじめ頃、何日かに渡って開催されます。
その時期以外にも開催されることもあるようですが、詳細は『えんま堂大念仏狂言保存会』のHPをご覧ください。
境内に設けられた舞台です。
開演の少し前の時間ですが、多くの観客が集まっています。
その後開演しますが、今回は他の演目の様子を省いて、『雷(かみなり)』という演目の様子を紹介します。
雷が苦手な医者が旅をしているところから始まります。
そこへ、本当に雷(雷神)が落ちてきます。
怯える医者。
しかし雷は、落ちた時に腰を痛めて、立てなくなってしまいます。
「やい!そこにいるのは誰じゃ!」
「い、医師にござりまする」
「石がものを言うか!」
こんなやりとりを経て、相手が医者だとわかると、雷は腰を治すように要求します。
雷が苦手な医者は断ろうとしますが、雷は「へそをとるぞ」と脅して、診断と治療をさせます。
そして針治療を始めます。
かなり大きな針を、木槌で患部に打ち込むという治療をしていますが……実際の針治療って、こんなんでしたっけ?(笑)
それでも完治しませんので、さらに針を打ち込みます。
完治して、雷が立ち上がれるようになります。
医者は雷に治療代を請求します。
しかし雷は、突然落ちてきたのでお金を持ち合わせていません。
結局、「次の雷の時までの借りにする」とか言われて、逃げられてしまいます。
こうして「雷」は終わります。
台詞も演技も平易でわかりやすく、現代人の我々で安心して楽しみめます。
なおこの狂言は鑑賞は無料となっているそうですので、気楽に鑑賞できます。
京都に行く機会があれば、一度観ていかれることをおすすめします。
では、今回はここまで。
また次回。
*千本えんま堂狂言保存会のHP
http://www.geocities.jp/e_kyogen/
*千本えんま堂の公式HP
http://yenmado.jp/
*京都妖怪探訪まとめページ
http://moon.ap.teacup.com/komichi/html/kyoutoyokai.htm
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